離婚では、「任意売却」によって不動産売却が行われることがあります。
離婚時の売却で任意売却が用いられるケースは、主に住宅ローン残債が売却額を上回ってしまうオーバーローンの状態のとき。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 離婚の不動産売却で任意売却することが多いのはどうして?
- 任意売却のメリットとデメリットにはどんなものがあるの?
- 任意売却をする場合、離婚の前と後のどちらが良いの?
そこで今回の記事では不動産の任意売却の中でも、「離婚と任意売却」をテーマに解説していきます。
この記事を読むことで、あなたは任意売却と離婚について知ることができます。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士

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1.離婚で任意売却が選択される理由
マイホームは、夫と妻の収入を合算した世帯収入を前提に購入する場合、夫婦が「連帯債務」または「連帯保証」をすることで住宅ローンを組むことが通常です。
連帯債務とは、住宅を夫婦共有で購入し、それぞれが債務者となって住宅ローンを返済する方法
連帯保証とは、例えば夫が主たる債務者となり、妻が連帯保証人になって住宅ローンを返済する方法
連帯債務や連帯保証は、「お金の借り方」であるため、婚姻関係とは全く別物。
そのため、離婚をしても夫婦間の連帯債務や連帯保証は解消されません。
連帯債務や連帯保証の関係を解消するには、売却して住宅ローン残債を完済することが必要です。
ところが、いざ売却しようとしても、オーバーローンで売却できないことがあります。
オーバーローンとは、住宅ローン残債が売却額を上回ること
アンダーローンとは住宅ローン残債が売却額を下回ること

任意売却と通常売却の違い
オーバーローンでは、売却で返済しきれない残債も返さなければならないのが原則です。
離婚の際、アンダーローンの状態であれば、普通の売却で住宅ローンが返済できますので、普通の売却を選択します。
オーバーローンの場合でも、残債がわずかであり、残債をキャッシュで返済できるようであれば、普通の売却でも構いません。
ところが、オーバーローンでは、残債が返済しきれないことがあります。
残債が返済しきれなければ、売却できないことになりますので、どうにもならない状況となってしまいます。
オーバーローン時でも売却できる任意売却
そこで登場するのが「任意売却」です。
任意売却では、債権者と話し合って売却後に残る残債を圧縮することが可能。
残債を返せる範囲で調整することができ、売却して連帯債務や連帯保証の関係も解消することができます。
離婚では、オーバーローンのときは任意売却を利用して売却することが多いのです。
任意売却を利用するかどうかは、まずは不動会会社に査定を取り、アンダーローンかオーバーローンかを見極めてから選択するようにしてください。
不動産会社からの査定は、1社だけではなく複数社の査定を取り、現実的な売却額を見極めるようにしてください。
複数社の査定は、
「 すまいValue 」「 HOME4U
」
などの不動産一括査定が便利です。
不動産一括査定の詳細は下記記事で詳しく解説しています。
-
不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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以上、ここまで離婚で任意売却が選択される理由について見てきました。
では、任意売却は離婚前と後であればどちらがいいのでしょうか?
2.任意売却なら離婚前がオススメである理由
任意売却を行うのであれば、離婚前がオススメです。
まず、原則として普通の売却なら離婚後に行うことが鉄則。
普通の売却は、アンダーローンのときに行いますが、アンダーローンでは得られた売却益を財産分与の対象とすることができます。
売却益の配分を離婚前に行ってしまうと贈与に該当してしまいます。
元々、夫婦が50%ずつの共有で持っている場合は、そもそも売却益も50%ずつ手にすることができます。
財産分与のような状態となるため、普通の売却は離婚前に行っても構いません。
しかしながら、夫が100%持っているようなケースでは、離婚前に売却益を妻に分け与えてしまうと贈与税が生じますので、離婚後に行ってください。
一方で、任意売却するようなケースは、オーバーローンのときが大半です。
オーバーローンでは財産分与できる売却益が生じないため、離婚後に行う必要性が低くなります。
むしろ、離婚前であれば、夫婦で緊密に連絡を取り合うことができるため、任意売却の手続きを進めやすくなります。
任意売却は「夫婦で連絡が取りやすく実行しやすい」という理由から、離婚前に行われることがほとんど。
もちろん、場合によっては、離婚後に行っても問題ありません。
離婚前に任意売却すれば、2人とも離婚前に住居を失うことになるというデメリットもあります。
任意売却は、離婚の前でも後でも構わないので、自分たちのやりやすい方で進めるようにしてください。
以上が離婚と任意売却に関することです。
ここからは、任意売却について深堀していきます。
3.任意売却の5つのメリットと2つのデメリット
一見良さそうに見える任意売却ですが、いくつかデメリットがあります。
まず最初にメリットとデメリットをまとめておきます。
- メリット1.残債を圧縮できる
- メリット2.無理のない返済計画が組める
- メリット3.普通の売却額で売却できる
- メリット4.売却時期も調整できる
- メリット5.売却後も住み続けることができる
- デメリット1.ブラックリストに載る
- デメリット2.債権者との交渉が必要となる
まずは気になるデメリットから見ていきましょう。
デメリット1.ブラックリストに載る
任意売却を利用する最大のデメリットは、ブラックリストに載るという点。
ブラックリストとは俗称ですが、信用情報機関の「事故情報」名簿のことです。
信用情報機関には、銀行系の「全国個人信用情報センター」と信販・クレジットカード系の「株式会社シー・アイ・シー」、消費者金融系の「株式会社日本信用情報機構」の3つがあります。
信用情報機関は、ネットワークで情報共有されています。
ブラックリストに名前が記載されてしまうと、5~7年間は新たにクレジットカードを作ることや、金融機関から融資を受けることができなくなります。
例えば、離婚後、すぐに新たなパートナーと住宅ローンを組んで家を購入することはできなくなるということ。
よって、安易に任意売却を利用してはいけません。
アンダーローンであれば必ず普通の売却を行い、オーバーローンでも残債をなんとか返済できそうであれば、普通の売却で処理することをオススメします。
親族に一時的にお金を借りて普通の売却で乗り切るのも一つ。
任意売却を利用すると、滞納者扱いになりますので、任意売却はくれぐれも慎重に選択するようにしてください。
デメリット2.債権者との交渉が必要となる
任意売却は、債権者との交渉が必要となるという点もデメリットです。
債権者からすると、任意売却となると債務が圧縮され、損することになります。
そのため、任意売却は勝手にできず、事前に債権者との合意が必要です。
通常は、任意売却専門の不動産会社に依頼し、債権者との交渉も任せます。
債権者の了解を得ながら進めていかなければならない点がデメリットとなります。
以上がデメリットです。
ここから任意売却のメリットを見ていきます。
メリット1.ローン残債を圧縮できる
任意売却の最大のメリットは、債権者との話し合いによってローン残債を圧縮できるという点。
銀行から任意売却の了承を得られると、債権者(お金を貸す人)の権利は銀行からサービサー(保証会社)に移ります。
任意売却では、サービサーと協議し、残債を圧縮することが可能です。
任意売却で残ってしまった残債を全額返済しなくても良いという点が大きなメリットといえます。
メリット2.無理のない返済計画が組める
任意売却では、サービサーと話合い、残債の返済計画も無理のない範囲で決めることができます。
例えばオーバーローンで残ってしまった残債が300万円あったとします。
まず、それを交渉によって100万円くらいに圧縮することもできます。
100万円を一気に返すのではなく、月々3万円の返済にしてもらうなど、返済方法も協議して決めることができるのがメリットです。
メリット3.普通の売却額で売却できる
離婚で行う任意売却は、売却自体は普通の売却と同じです。
そのため、通常の価格で売却し、残債についてはできるだけ最小化することが可能。
もし、任意売却ができないと、競売になります。
競売とは、住宅ローンが払えなくなった場合に、抵当権のついている不動産を売却することによりローン残債を返済する「法的手段」
競売になると、売却価格が安くなる傾向にあります。
任意売却と競売の違いは、下記記事で詳しく解説しています。
-
競売と任意売却の違いは?メリット・デメリットとオススメな人
住宅ローンが返せなくなると、競売か任意売却かを選択してローン残債を一括返済することになります。 競売と任意売却には、それ ...
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メリット4.売却時期も調整できる
任意売却では債権者との話し合いによって全てを決めることができますので、売却時期も調整できるというメリットがあります。
「離婚の時期がいつなので、いつ頃売却予定」ということも、あらかじめ債権者と決めておくことができます。
強制的に「いつまでに売却」ということにはならないので、自分たちのペースで離婚を進められるという点がメリットです。
メリット5.売却後も住み続けることができる
任意売却では、買受人(購入者のこと)を指定できるので、離婚後も住み続けることが可能です。
例えば、親族に購入してもらい、親族に家賃を払うようにすれば、そのまま住むことができます。
債権者からすると、住宅ローンが返ってくればそれで良いので、買受人が誰であっても構わないのです。
以上、ここまで任意売却のメリットとデメリットについて見てきました。
では任意売却はどのように進めて行けば良いのでしょうか。
そこで次に任意売却の流れについて見ていきます。
4.任意売却の流れ8ステップ
任意売却の流れは以下の通りです。

任意売却の流れ
それぞれ見ていきましょう。
step
1価格査定
最初に価格査定を行います。住宅ローン残債については、正確な数字を把握するようにしてください。
価格査定によって、オーバーローンかアンダーローンかを判断します。
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2任意売却すべきかの判断
査定の結果、任意売却すべきか、普通の売却にすべきかを決めます。
ブラックリストへの掲載を避けるため、アンダーローンであれば必ず普通の売却を選択するようにしてください。
オーバーローンでも、貯金を切り崩す、親族からお金を借りる等の方法を検討し、普通の売却の可能性を探ります。
普通の売却がどうしても無理な場合は、最終手段として任意売却を選択します。
step
3専門の不動産会社に相談
任意売却を選択したら、任意売却専門の不動産会社に相談するようにしてください。
任意売却専門の不動産会社は、債権者との交渉をしてくれるという点で、普通の不動産会社とは異なります。
債務をどれだけ圧縮してくれるか等も関わりますので、必ず実績のある任意売却業者を選ぶようにしましょう。
基本的には銀行から任意売却業者を紹介してもらえます。
もし紹介がされないようであれば、下記のような業者が実績がありオススメです。
任意売却のオススメ業者については下記記事で詳しく解説しています。
-
【不動産鑑定士が選んだ】任意売却専門の業者・会社の選び方とランキング2021年
住宅ローンを返済できなくなったとき、任意売却を選択する場合があります。 任意売却では詐欺も多く、信頼できる業者を探すこと ...
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4債権者との調整・合意
任意売却で重要なのが、債権者との合意です。
債権者の合意は、任意売却業者と打合せしながら決めていきます。
また、もし住宅ローン以外のカードローンを抱えている場合など、他の債権者との調整も必要となってきます。
債権者が複数いる場合には、任意売却の難易度が上がるということを認識しておいてください。
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5販売開始
債権者の合意が得られたら、売却の開始です。
高く売るためにも、債権者との間で売却の期限はなるべく長めに調整しておくことをオススメします。
通常、住宅の売却では販売期間に最低でも3~4ヶ月程度かかりますので、それを目安に設定するようにしてください。
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6買受人決定
任意売却では、売却が決まることを買受人決定といいます。
買受人は誰でも構いませんが、引き続き住み続けたい場合は、親族やリースバック業者が買受人となります。
リースバックとは、「セールスアンドリースバック」の略称で、今の家を第三者に売却し、その第三者と賃貸借契約を結び、家を借りること
任意売却後も住み続けたい場合には、リースバックを前提に買受人を探すようにしましょう。
後ほどリースバックについては詳しく解説します。
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7売買代金の承諾・配分調整
任意売却は、債権者のために行う売却であるため、売却額について債権者の承諾を得る必要があります。
あまりにも安い金額だと、債権者が認めてくれませんので、相応の価格で売却することが必要です。
例えば、住み続けたいからといって、親族に激安で購入してもらうことはできません。
債権者が納得できる金額でないと、認めてもらえませんので、売却額にも制限があることを知っておいてください。
また、債権者が複数人いる場合には、売却額の配分調整が必要となります。
いわゆるハンコ代と呼ばれるものですが、他の債権者へはハンコ代をいくらにするかの調整も必要です。
任売却のハンコ代については下記記事で詳しく解説しています。
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知らなきゃとても恐ろしい!任意売却のハンコ代について徹底解説
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8契約締結・引渡
債権者の承諾を得ることができたら、売買契約の締結及び引渡です。
普通の売却では、売買契約と引渡は1ヶ月ほどの期間を開け、別日で行うことが通常。
一方、任意売却では売買契約の締結と引渡は同日に行います。
普通の売却では、売主は売買契約時に手付金を受領し、引渡時に残金を受領します。
しかしながら、任意売却は借金返済を目的とした債権者のための売却なので、売主に手付金を持ち逃げされてしまうと債権者が困ります。
売買代金の全額が確実に債権者に届くようにするためにも、任意売却では売買契約と引渡を同日で行っているのです。
以上、ここまで任意売却の流れについて見てきました。
では、先ほど説明に出てきた任意売却後に住み続けるにはどのようにしたら良いのでしょうか。
そこで次に任意売却後に住み続ける方法について紹介します。
5.任意売却後に住み続ける2つの方法
任意売却しても住み続けたいという方もいらっしゃいます。
下記2つの方法があります。
- 親族への売却⇒買い戻し
- リースバック
それぞれ見ていきましょう。
方法①親族への売却⇒買い戻し
任意売却後に住み続けるには、親族へ売却するという方法があります。
良くあるケースとしては、妻の親に購入してもらい、引き続き、妻と子供が住み続けるケース。
妻の実家に財力があり、債権者を納得させられる金額が提示できれば買受人を親族に指定することができます。
親が買受人になってくれれば、家賃も低く設定することが可能。
住み続けたい場合には、まずは親族に相談して見ることをオススメします。
方法②リースバック
繰り返しになりますが、リースバックとは、今の家を第三者に売却し、その第三者と賃貸借契約を結び、家に住み続ける方法。
リースバックは「ハウスドゥ」のような不動産会社がサービスとして提供しています。
親族が購入してくれない場合には、リースバックを行っている不動産会社に相談して見るのも一つ。
ただし、買受人が第三者になる場合、賃料も高くなってしまうというデメリットがあります。
賃料を安くすると、買受人が購入できる金額が小さくなり、その結果、債権者を納得させることができず、任意売却が成立しない可能性が出てきます。
リースバックを行っている不動産会社は少ないですが、「ハウスドゥ」が積極的にサービス展開していますので、一度、相談してみてください。
ハウスドゥについては、下記記事で詳しく解説しています。
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ぜひご参照ください。
以上、ここまで任意売却後に住み続ける方法について解説してきました。
では、任意売却後の残債の返済はどのようになるのでしょうか。
最後にローン残債の支払方法について解説します。
6.ローン残債は圧縮して毎月払いする
任意売却では、ローン残債は交渉して圧縮できることがメリットでした。
まずは、残債について圧縮の交渉を行うようにしてください。圧縮後の残債は、一括返済も可能。
一括返済できるくらい圧縮できれば、一度に全額返す形で構いません。
もし、一括返済できないようであれば、毎月払いにします。
財産分与では、負債のようなマイナス資産も50%ずつ分け合うのが通常ですので、返済も夫婦で応分負担することになります。
支払方法については、夫婦で協議して決めるようにしてください。
毎月の返済額は、住宅ローンの返済額よりも下げることもできます。
債権者と話合い、無理のない返済金額で返済計画を立ててください。

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まとめ
離婚と任意売却について見てきました。
離婚時の任意売却はオーバーローンのときに利用します。
アンダーローンなのに任意売却を選択すると、無駄にブラックリストに載ってしまいますので、絶対に避けるようにしてください。
まずは不動産会社から通常の査定を取り、オーバーローンかアンダーローンかを確認することから始めましょう。