「離婚で夫婦共有の不動産を売却する」
「相続財産を遺産分割する前に共有の状態で売却する」
など、共有持分の不動産を売却したいと思われている方は結構いらっしゃいます。
初めて共有持分を売りたい方は、どのような手順で共有持分を売却できるのか分からない方も多いことでしょう。
しかも人間というものは、いざ高額な金額を目にすると目の色が変わる人が出てきます。
なので、決めることはキッチリ決めないと、あとあと揉めることになります。
実際に筆者は長年と不動産売却のコンサルティングをしてきましたが、共有の不動産売却で揉めて、絶縁になった夫婦を何人も見てきました。
そこで今回の記事では、不動産売却における「共有持分」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたが「共有持分」の売却が理解でき、実行に移せることをお約束します。ぜひ最後までご覧ください。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.まずは不動産が「共有持分」か「区分所有」なのかを確認する
一つの不動産を複数人で所有する方法には、建物では大きく「共有持分」と「区分所有」の2種類があります。
まずあなたの不動産がどちらになっているのかを確認しましょう。
区分共有とは「構造上独立した部分を多数が所有している」
まず最初に区分共有について説明します。※土地については区分所有という表現はせず、「分有」という表現をします。
区分所有の最も典型的な例がマンションです。
大きなマンションは、多数の方が所有者ですが、それぞれ壁や屋根などで構造上独立した部分を所有しています。
例えば101号室はAさんの所有、102号室はBさん所有という形で、場所や空間で所有者が分かれている状態になります。
共有持分とは「1つの不動産を複数人が所有している状態」
一方、共有は1つの不動産を複数人の共有持分割合で、所有している状態です。
例えばAさんとBさんで50%ずつ不動産を所有しているとします。
その不動産は、扉や床など、どこの部分もAさんとBさんの50%ずつの割合で所有していることになり、場所や空間で所有者を分けることができません。
共有の典型的な例は、夫婦共有で購入した住宅、遺産分割協議前の相続財産などがあります。
また、戸建開発業者が分譲した戸建住宅などは、前面の私道が共有状態になっているケースが多いです。
夫婦でマンションを共有で購入した場合には、区分所有を共有で購入している形となります。
共有持分と区分共有の違いは「変更と処分」
「共有持分」と「区分所有」の最も大きな違いは、変更と処分にあります。
変更とは形状や性質を変えることであり、具体的にはリフォームやリノベーションなどが該当します。
また処分とは不動産売却のことを指します。
共有は、どこを取り出しても共有者全員の持ち分割合で所有しています。
そのため変更や処分を行う際には、その他の共有者の同意を得る必要があります。
一方で、区分所有の場合は所有部分が完全に区画されているため、変更や処分で他の区分所有者の同意を得る必要はありません。
マンションの101号室をAさんが売却しようとする時に、102号室のBさんの同意を得る必要はないのです。
以上、ここまで共有持分と区分の違いについて見てきました。
それでは次に共有持分を売却する時の注意点について見ていきましょう。
2.共有持分を売却する時の3つの注意点
共有のまま不動産を売却するケースは、相続時が多いです。
典型的な例が、子供が娘たちだけで、全員既に嫁に出ており、親の財産が実家の家だけというパターンです。
娘たちは嫁ぎ先で生活基盤があるため、実家の土地建物は2人とも不要であり、むしろ現金だけが欲しいというようなケースです。
相続と言うと資産家だけの問題であって、一般人には関係の無いような話と思うような人がいますが、実は違います。
親の財産が1円でもあれば、誰しもそれを相続する立場にあります。
特に現金の様に簡単に分割できる資産が無く、保有資産が不動産だけとなると、相続時にそれを如何にして分割するかという問題が発生します。
資産は家だけという典型的なサラリーマン家庭ほど、相続後に不動産を売却する局面に遭遇するのです。
では、そんな共有持分の不動産を売却するときの注意点は下記3つです。
- 共有者全員の合意が必要
- 窓口を決める必要がある
- 売却ラインを決める
注意点①共有社全員の同意が必要
共有持分の不動産を売却する場合、まずは共有者の全員の同意が必要となります。
姉妹で相続した場合には、姉妹全員の同意があることが前提です。
共有者全員の同意は最も重要な部分ですので、ここはしっかりと意思を固めてください。
たとえ自分の共有持分だけを第三者に売却するとしても、他の共有者の同意は必要となります。
自分の分だけ勝手に売却できないということを十分に認識しましょう。
注意点②窓口を誰が行うのか決める
2つ目としては、共有物件を売却する場合、対応窓口を誰が行うかを決めます。
通常は、最も共有持ち分割合の大きいメジャーシェアの人が対応窓口を行います。
しかしながら、夫婦や相続人などで共有する場合は、全員の持ち分割合が等しいケースが多いです。夫婦間や相続人間で、誰が窓口として適切かを話し合いで決めておきます。
窓口とは、不動産会社対応、買主対応、銀行対応、司法書士対応などがあります。
注意点③売却ラインを決める
3つ目としては、いくらなら売るかという売却ラインを決めておくことです。
ここの目線が共通認識されていないと、後々揉めるケースになります。
「姉が勝手に安い価格で売った」「もっと高く売れたはずだ」などの言い分が発生し、売却した後も相続人間で揉める火種を残してしまいます。
被相続人である親は、残された子供たちが揉めることを望んでいません。
「我が家の子供たちは中が良いから大丈夫だろう」という想いで亡くなられる方が多いです。
残された子供たちがお金で争うことが無いように、売却ラインは十分に共通認識を持っておきましょう。
以上、ここまで共有持分を売却する時の注意点について見てきました。
実際に決めることは決めておかないといけません。
筆者は、この仕事を長年する中で絶縁の仲になる家庭をいくつも見てきました。
それでは次に共有持分の査定ポイントについて見ていきましょう。
3.共有持分の査定ポイント
不動産の共有持分ですが、「共有持分だけ」を売却しようとすると、その価値は著しく下がります。
理由としては、共有持分は変更や処分に共有者の同意を必要とするため、普通の不動産より流動性が著しく下がるからです。
例えば全体として100の価値がある不動産を50%ずつ共有持分で持っているとします。
それぞれの共有持分が50の価値で査定されるかというと、そうはなりません。
各持分単体では、流動性が低くなるため、50%の持ち分は、40くらいで査定されることになります。
共有物全体で査定を行う
そのため、共有不動産の場合は、同時売却を前提に共有物全体での査定を行います。
共有持分の売却には、共有者全員の売却ラインのコンセンサスを取る必要があります。
そのためには出来るだけ多くの不動産会社から査定を取ることが、共有者全員の納得感は得やすいです。
共有不動産の査定は、
「 すまいValue 」「 HOME4U
」
などの一括査定サイトを利用するのが良いでしょう。
一括査定サイトでは、一度に6社程度の不動産会社から査定額を取得することが可能です。

査定額を比較するのが大切
ネットでの依頼が可能ですので、相続財産のような遠隔地の不動産を売却するのに適しています。
嫁に出た姉妹であれば、地元の不動産会社を全く知らないことも少なくありません。
わざわざ実家に戻って不動産会社を探して歩き回るよりは、一括査定で一度に効率よく査定額を集めた方が良いでしょう。
一括査定のオススメは 「すまいValue」「HOME4U」
不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。
その中でも
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「 SRE不動産(※旧ソニー不動産)
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
の4つを特にオススメしています。
筆者も不動産一括査定(「 すまいValue 」「 HOME4U
」「 イエウール
」)を利用しました。
下記は「 すまいValue 」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。
とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手


不動産一括査定の賢い使い方
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。


一括査定 | 机上査定 | 備考欄 |
---|---|---|
すまいValue | 〇 | 〇 |
HOME4U | 〇 | 〇 |
イエウール | 〇 | |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | 〇 | 〇 |
一括査定利用時の注意点
ここで1点注意点です。一括査定サイトでは、あくまでも各社の売却予想額が査定されます。
当然ながら、高い価格や安い価格の査定額がバラバラに出てきます。
共有持分の不動産を売却する場合、特に一番安い価格に注目してください。
共有者の間では一番安い査定額を共通の売却ラインと定めておくことが賢明です。
それ以上に高く売れれば、「良かったね」という話になり、皆で仲良く終わることができます。
逆に一番高い査定額を売却ラインと定めてしまうと、「なんで安く売ったんだ!」という揉めごとの火種になりかねません。
売却ラインは保守的に定めておきましょう。
一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
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不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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ここまで共有持分の査定ポイントについて見てきました。
最後に共有名義の不動産を売却した時のお得な情報をお伝えします。
4.共有者がそれぞれ適用できる3,000万円の特別控除
不動産を売却した時に掛かる税金が掛かります。
税金が掛かるのは売却額ではなく課税譲渡所得になります。
課税譲渡所得の計算は以下の式になります。
課税譲渡所得 = 譲渡価額(売却額) - 取得費(購入額) - 譲渡費用(掛かった費用)
譲渡費用は仲介手数料などです。
マイホームを売却した時は特例がある
マイホームを売却した場合、3,000万円の特別控除を適用することが可能です。
3,000万円の特別控除とは不動産を売却した時の所得税の発生を抑えるための税制となります。
すると課税譲渡所得の計算式は下記のようになります。
課税譲渡所得 = 譲渡価額(売却額) - 取得費(購入額) - 譲渡費用(掛かった費用)- 3,000万円
こうなると、課税譲渡所得がプラスになる可能性が限りなく低くなるため、税金が掛からなくなります。
今回の題材にしている共有不動産の場合は、共有者全員がそれぞれ3,000万円の特別控除を適用することができます。
つまりマイホームを複数人の共有者で売却した場合は、それぞれ課税譲渡所得がプラスになることは滅多にありません。
共有名義のままで売却すると、ほとんどの方は所得税を支払わなくて済むことになります。
3,000万円の特別控除については下記に詳しく記載しています。
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3,000万円特別控除とは?相続空き家の売却は適用される?適用要件と必要書類
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5.まとめ
共有持分の不動産を売却する時の注意点とお得な特別控除について見てきました。
共有持分の売却ポイントは共有者全員の売却ラインのコンセンサスを得ることにあります。