火災保険には半焼という概念がありません。
見た目上、半分焼けた状態であっても、修理、再建築、再取得のための金額が保険金額を上回っている場合には、保険金が全額支払われることになります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 家は全焼しないと火災保険は支払われないのだろうか
- 半焼しかしていないが、保険金は支払われるだろうか
- そもそも補償額はどのように決まっているのだろうか
そこで今回の記事では「火災保険の半焼」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは家が半焼になった場合の火災保険の扱いについて理解できるようになります。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.火災保険金が全額支払われるケースとは
火災保険が全額支払われるケースは、全焼または全損、全壊の状態となったときとされています。
しかしながら、火災保険で言うところこの全焼(全損、全壊)は、いわゆる完全に全部焼け焦げた状態を指すものではありません。
保険会社によって多少の違いはありますが、全焼扱いとして保険金が全額払われるケースは、以下のいずれかに当てはまる場合を指します。
保険金が全額支払われるケース
- 全焼した場合
- 修理、再建築、再取得のための金額が保険金額を上回った場合
- 延面積の80%以上が損失または流失した場合
- 損害額が再取得額(保険金額)の80%以上になった場合
以上、ここまで保険金が全額支払われるケースを見てきました。
では、半焼しかしなかった場合、保険はどうなるのでしょうか。
そこで次に半焼の場合の保険について解説します。
2.半焼の場合は火災保険は下りるのか
保険金が全額支払われるケースは物理的な全焼を指すわけではないため、柱一本が残っていれば保険金がおりないということではありません。
半焼であっても損害額が再取得額(保険金額)の80%を以上となるような場合には、「経済的全損」という扱いとなり、保険金額が全額おりることになります。
一般的には、半焼であっても建物が「使い物にならない状態」となれば全焼として扱われることになります。
もし、経済的全損に満たないような場合には、その損害の状況に応じた割合で保険金額が支払われることになります。
半焼の場合、まずは下記「保険金が全額支払われるケース」に該当するかどうかがポイントです。
保険金が全額支払われるケース
- 全焼した場合
- 修理、再建築、再取得のための金額が保険金額を上回った場合
- 延面積の80%以上が損失または流失した場合
- 損害額が再取得額(保険金額)の80%以上になった場合
「保険金が全額支払われるケース」に該当しない場合には、損害の状況に応じて保険金が支払われます。
半焼となった場合には、保険会社に連絡し、現状を確認してもらうようにしましょう。
以上、ここまで半焼の場合の保険の扱いについて見てきました。
半焼で保険が下りるかどうかが疑問に持たれる理由の一つに、一般用語や地震保険の認定基準における言葉の定義との違いがあります。
そこで次に誤解されやすい一般用語や地震保険の認定基準についてご紹介します。
3.誤解されやすい一般用語や地震保険の認定基準
一般用語としての半焼
冒頭に申し上げた通り、火災保険には半焼という概念はありません。
火災保険で定義されているのは、あくまでも全焼のみであり、半焼や一部損というものの定義はないということがポイントです。
但し、世間一般に半焼という言葉は存在します。
そのため、「半焼の場合、火災保険はどうなるの?」と疑問を抱くのはある意味当然です。
世間一般用語として、まず消防庁は火災のことを以下のように定義しています。
【火災の定義】
「火災」とは、人の意図に反して発生し若しくは拡大し、又は放火により発生して、消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。
さらに、全焼や半焼などについても、消防庁では以下のような定義がきちんと行われています。
焼損の程度 | 定義 |
---|---|
全焼 | 建物の焼き損害額が火災前の評価額の70 パーセント以上のもの又はこれ未満であっても 残存部分に補修を加えて再使用できないものをいう。 |
半焼 | 建物の焼き損害額が火災前の評価額の20 パーセント以上のもので全焼に該当しないものをいう。 |
部分焼 | 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の20 パーセント未満のものでぼやに該当しないものをいう。 |
ぼや | 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10 パーセント未満であり焼損床面積が1平方メートル未満のもの、 建物の焼き損害額が火災前の建物の評価額の10 パーセント未満であり焼損表面積が1平方メートル未満のもの、 又は収容物のみ焼損したものをいう。 |
このように、火災保険では半焼という言葉が無くても、世間一般では半焼にきちんとした定義もあります。
しかしながら、火災保険においては、上記の半焼という定義は全く関係ありません。
火災保険では物理的な燃え方ではなく、あくまでも「保険金が全額支払われるケース」に該当するかどうかという点が問題となります。
地震保険の認定基準
火災保険の半焼で、話をさらにややこしくしているものがあります。
それは地震保険で言うところの「半損」という言葉です。
地震保険は火災保険に加入しないと入ることのできない保険であるため、火災保険と同様に考えられがちですが、地震保険の半損と火災保険の半焼は全く関係ありません。
地震保険には損害の程度に応じて、認定基準が定められています。
地震保険の認定基準は以下の通りです。
損害の程度 | 主要構造部 | 滅失又は流失した床面積 | 床上浸水 |
---|---|---|---|
全損 | 建物の時価の50%以上 | 建物の延床面積の70%以上 | ― |
半損 | 建物の時価の20%以上50%未満 | 建物の延床面積の20%以上70%未満 | ― |
一部損 | 建物の時価の3%以上20%未満 | ― | 建物が床上浸水または地盤面より45cmを超える浸水を受け損害が生じた場合で、 当該建物が全損・半損・一部損に至らないとき |
このように地震保険には半損という定義があります。
上記の定義を良く見ると、そもそも全損の定義が火災保険で言う全焼の定義とは異なります。
火災保険では半焼という定義はなく、地震保険の半損とも全く関係がないということがポイント。
以上、ここまで誤解されやすい一般用語や地震保険の認定基準について見てきました。
では、全焼扱いとなった場合の保険金の補償額はどのように決まっているのでしょうか。
そこで次に補償額の決り方について解説します。
4.火災保険の補償額の決まり方
火災保険でおりる保険金、つまり補償額は建物の評価額によって決まります。
建物の評価額には、再調達価額(新価額)と時価の2種類があります。
再調達価額(新価額)と時価の定義はそれぞれ以下の通りです。
評価額 | 定義 |
---|---|
再調達価額 (新価額) | 保険の対象である建物や家財を、修理や再築・再取得するために必要な額を基準にした評価額 |
時価 | 再調達価額から、年月の経過や使用に取る消耗分(減価分)を差し引いた額を基準にした評価額 |
再調達価額は、損害保険金だけで十分な復旧が可能となります。
一方で、時価は損害が生じた時点における価額であり、損害保険金だけでは新築の建物を再取得することができません。
よって、火災保険の契約は再調達価額で評価を行う方が断然お得です。
現在の火災保険は、ほとんどが再調達価額で評価することになっています。
万が一の際に十分な補償が受けられるよう評価額いっぱいで補償額を設定することが重要になります。
建物の評価額は、原則、新築時の建築費となりますが、中古住宅等で建築費が分からない場合もあります。
建物の評価額は、建物の状況に応じて以下のように決まります。
建物の状況 | 評価額 |
---|---|
新築で建物の建築費が分かるとき | 評価額は建物の建築費になります。 |
中古住宅で建築費が分かっているとき | 新築時の請負工事金額に、経過年数に応じた物価変動指数(建築費の倍率)をかけて算出します。 倍率は保険会社や建物の構造によって異なります。 |
新築中古に限らず建築費が分からない場合 | 保険会社が定めた1㎡あたりの建築単価を使った「新築費単価法(概観法)※」で計算します。 |
新築費単価法(概観法)とは、例えばマンションの新築費単価が15万円/㎡であった場合、70㎡のマンションの評価額は以下のようになります。
新築費単価法(概観法)と用いたマンションの評価額
評価額 = 1㎡あたりの新築費単価 × 延床面積 = 15万円/㎡ × 70㎡ = 1,050万円
マンションの場合には、専有部分の新築工事費が分からないため、新築費単価法(概観法)によって補償額を決めることが通常です。
以上、ここまで補償額の決り方について見てきました。
火災保険は全額支払われれば、入り直しになります。
そこで最後に全損扱いとなったら入り直しについて解説します。
5.全損扱いとなったら火災保険の入り直しを
半焼であっても、損害保険金の支払いが1回の事故で保険金額の80%を超えた場合には、保険契約は終了します。
80%を超えない限り保険金の支払いが何回あっても保険金額が減額されたり、保険料を追徴されたりすることなく、契約は満期まで続きます。
全損扱いとなれば、保険契約は終了するため、あらたに火災保険に加入し直すことになります。
新たな保険に加入する際は、無駄や不足が発生している部分を見直し、適切な保険に加入する必要があります。
例えば、火災保険では家財に関しても保険に加入することができます。
家財は家族構成によって評価額が変わります。
過去に家財も火災保険に加入していた場合には、当時と家族構成が変わっている可能性があるため、再度、今の家族構成に基づき適切な保険金を設定し直す必要があります。
参考までに家族構成と家財の評価額について、以下に示します。
世帯主年齢 | 夫婦のみ (万円) | 夫婦+子供1人 (万円) | 夫婦+子供2人 (万円) | 夫婦+子供3人 (万円) | 独身・単身 (万円) |
---|---|---|---|---|---|
25歳前後 | 530 | 610 | 690 | 770 | 290 |
30歳前後 | 720 | 810 | 890 | 970 | |
35歳前後 | 1,030 | 1,110 | 1,190 | 1,270 | |
40歳前後 | 1,250 | 1,340 | 1,420 | 1,500 | |
45歳前後 | 1,430 | 1,510 | 1,590 | 1,670 | |
50歳前後 | 1,510 | 1,590 | 1,670 | 1,750 |
時の経過に伴い、火災保険には無駄や不足が発生していることがあるため、これを機に適切な火災保険に加入し直すようにしましょう。
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6.まとめ
家が半焼してしまったときに火災保険は下りるのかどうか徹底解説してきました。
火災保険は、半焼であっても全焼の要件を満たしていれば全額支払われることになります。
一部の焼失であれば、それに応じた割合で支払われることになります。
全焼の要件をよく理解し、保険会社に問合せをするようにしましょう。