戸建てやマンションなど、家売るときの注意点について知りたいと思っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 家売るときは、何に注意すればいいの?
- 家売るときの注意点を、簡潔に説明してほしい
- 家売るとき、買主からの要望に注意することはあるの?
インターネット上には家売却の注意点が何個も出てきますが、本当に意味のある注意点は下記5つです。
家を売る前に知っておきたい5つの注意点
- 売却期間に余裕を持つこと
- アンダーローンであることを確認すること
- 高過ぎない価格設定をすること
- 買主からのインスペクションの申出は受けること
- 購入時の売買契約書は捨てない
そこでこの記事では、「家売るときの注意点」にフォーカスしてお伝えします。
この記事を読むことであなたは、家を売る前に知っておいた方が良い、本当に意味のある5つの注意点について知ることができます。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
注意点1.売却期間に余裕を持つこと
家を売るには、まず売却期間に余裕を持つことが重要。家の売却には、販売期間だけで約3ヶ月の時間を要します。
公益財団法人東日本不動産流通機「首都圏不動産流通市場の動向(2018年) 」によると、首都圏におけるマンションと戸建ての販売期間の平均日数については、以下のようになっています。

売却に要する平均日数
販売期間は、2018年においてはマンションで78.8日、戸建てで95.3日です。販売期間だけで約3ヶ月ということになります。
その後、売買契約から引渡しまでの間は1ヶ月程度かかります。また、販売活動前の準備を0.5ヶ月程度と見込むと、全部で4.5ヶ月ほどの時間がかかることになります。
ただし、これはあくまでも販売期間が3ヶ月で上手く売れた場合の話。上手く売れないと、販売期間は半年とか1年とかかかる場合もあります。
家は焦って早く売ってしまうと、価格が安くなってしまいます。しかしながら、長く売ったとしても高く売れるわけではありません。
普通の価格で売るだけでも、最低でも4.5ヶ月程度の余裕を持っておく必要があります。
安売りを防止するためにも、販売計画は時間の余裕をもって立てましょう。
売却期間については下記記事で詳しく解説しています。
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注意点2.アンダーローンであることを確認すること
家を売る前には、アンダーローンであることを確認することが重要。
アンダーローンとは、ローン残債が売却額を下回っていること
オーバーローンとは、ローン残債が売却額を上回っていること
残っているローンについては、売却時に売却価格から一括返済を行います。
アンダーローンの場合には、売却価格の中から住宅ローン残債を一括返済できますので、特段大きな問題はありません。
一方で、オーバーローンの場合、足りない部分については貯金等を切り崩して返済する必要があります。
返済額の負担が大き過ぎる場合には、無理せず売却しない等の判断も必要です。
アンダーローンであることを確認するには、売却前にしっかりと査定をすることが必要となります。査定については、複数の不動産会社から取ることをオススメします。
査定額は、あくまでも売却予想価格であるため、高い価格も、低い価格もあります。

査定額を比較するのが大切
アンダーローンであるかどうかを判断するには、必ず一番低い査定価格でもしっかり安打ローンになっていることを確認するようにしてください。
一番高い査定価格のみギリギリアンダーローンのようなケースでは、実際に売却してみたらその金額に届かない可能性もあります。
売却すべきかどうかの重要な判断ポイントとなりますので、売却前は必ず査定を取ってアンダーローンであることを確かめましょう。
複数社に査定するのは不動産一括査定を使うのが便利です。詳細は下記記事を確認ください。
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注意点3.高過ぎない価格設定をすること
家の売却では、高過ぎない価格設定をすることが重要。
以下に、公益財団法人東日本不動産流通機「首都圏不動産流通市場の動向(2018年) 」のデータより、首都圏のマンションと戸建てについて築年数別の値引率を筆者が計算したものを示します。

築年数別の中古住宅の値引き率
中古住宅では、値引きが常態化しており、ほぼ当り前の世界です。
値引きしないと売れないということは、裏を返すと売り出し価格の設定が高過ぎるということ。
グラフを見ると、築年数の古い条件の悪い物件は、大幅に値引きしていることが分かります。大幅に値引きしないと売れないということは、売却期間も長いということです。
3ヶ月以内で売却を終わらせるためには、高過ぎる価格設定は避けるべきです。
高く設定してしまうと、結局は大幅に値下げをすることになりますので、高過ぎる価格設定は避けましょう。
適切な売出価格については下記記事で詳しく解説しています。
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注意点4.買主からのインスペクションの申出は受けること
最近の家売却では、場合によっては買主からのインスペクション申出があります。買主からのインスペクションの申出がある場合には、受けるようにしてください。
インスペクションとは、主に柱や基礎、壁、屋根などの構造耐力上主要な部分や、外壁や開口部などの雨水の浸入を防止する部分について、専門家による目視や計測等の調査のこと
インスペクションに合格すれば、その建物は概ね問題ないものと客観的に証明することができます。
インスペクションは、2018年4月より不動産会社が媒介契約をする際、インスペクションに関する説明を行うようになりました。
媒介契約とは、売主や買主が不動産会社と締結する仲介の契約のこと
インスペクションは不動産会社が買主と媒介契約を締結する際も説明するため、買主がインスペクションの実施を希望することがあります。
具体的には、買付証明書を提示した後に、「念のためインスペクションを実施したい」という希望を出してくるパターンです。
インスペクションはアメリカでも実施されていますが、アメリカでは買主からインスペクションを申し出てくることがほとんどになります。
性悪説に立つアメリカでは、買主が自分で建物について調べないと、その品質が信用できないといった文化的な背景もあるようです。
日本でも、建物の品質が証明されてうれしいのは買主。そのため、最近では買主からのインスペクションの申出が増えてきました。
買主からインスペクションの申出があったとき、断る売主がいますが、それは避けるべきです。
買主は、購入後、すぐに自分でインスペクションを行うことができますので、もしその時点で物件に瑕疵(かし)が発見されたら、売却後に売主は瑕疵担保責任を追及される可能性があるためです。
瑕疵とは、雨水の浸入等、売買の目的物が通常の品質を欠くこと
瑕疵担保責任とは、売却後に瑕疵が発見された場合に売主が負う損害賠償や契約解除等の責任のこと
売却できたと思っていたのに、契約解除されてしまったら、白紙になってしまいます。
インスペクションの申出をしてくるような買主は、建物の品質に非常に関心の高い人ですので、そのような人がインスペクションを申し出てきたら応諾すべきです。瑕疵は、売却前にしっかりと洗い出したうえで売却するようにしましょう。
インスペクションについては、下記記事にて詳しく解説しています。
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注意点5.売却しても購入時の売買契約書は捨てない
家を売る際は、売却した家の「購入時」の売買契約書は捨てないでください。
売却時ではなく「購入時」の昔の古い契約書のことです。
家を売ると、税金が発生する可能性があります。
税金が発生する場合には、確定申告を行う必要があります。
税金が発生するかどうかは、譲渡所得と呼ばれる所得の計算結果によって決まります。
譲渡所得とは、以下の計算式で表される所得です。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
※譲渡価額とは売却額
※取得費とは土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額
※譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用
上記の譲渡所得の計算の結果、譲渡所得がプラスであれば税金が発生し、マイナスだと税金は発生しません。
ここでポイントとなるのが「取得費」の計算です。
取得費は、売却した不動産の購入時の価格から計算しますので、購入当時の売買契約書が必要になります。
取得費が不明の場合の対処法
仮に、購入時の価格が分からず、取得費が不明の場合には、概算取得費というものを用います。概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。
例えば4,000万円で売却できたときは、200万円(=4,000万円×5%)が取得費となります。
概算取得費を用いてしまうと、譲渡所得が大きくなってしまうため、その結果、税金も多く発生してしまいます。
税金を安く抑えるためには、購入時の売買契約書から取得費をしっかり計算することが一番の節税対策となります。
よって、売却前には、まず購入当時の売買契約書がきちんと残っているかどうかを確認することが重要です。
また、確定申告は売却の翌年の2月16日~3月15日までの間に行います。そのため、購入時の売買契約書は、売却後も捨ててはいけません。
売却後も確定申告が終わるまでは、購入時の売買契約書は探しておき大切に保管しておいてください。
譲渡所得がマイナスの場合は確定申告は不要
確定申告は、譲渡所得がマイナスの場合には行わなくて大丈夫です。
ただし、譲渡所得がマイナスの人でも、後で税務署から「おたずね」と呼ばれるヒアリング書面が来ることがあります。
税務署から尋ねられたとき、譲渡所得がマイナスであることをしっかり証明するためにも、購入時の売買契約書は売却後2年程度保管しておくことをオススメします。
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まとめ
家を売る前に知っておいた方が良い、本当に意味のある5つの注意点について見てきました。
家売却で本当に注意したい点は、そう多くはありません。
今回紹介した5つの注意点を意識し、売却を始めてみましょう。