マンション売却では、まず査定を行い、価値を把握することから始まります。
マンションの場合、同じマンションの売物件のチラシが良く入っていますので、なんとなく価格を把握している人も多いのではないかと思います。
ただ、マンションには、扉の建付けが悪い、廊下の照明が接触不良になっている等、気になる不具合もあるものです。
これらの不具合は、特に価格に影響しないものもあれば、価格を下げざるを得ないものもあります。
マンションの状態を個別に把握した上で価格を知るためには、不動産会社に実際見てもらう「訪問査定」が必要になります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 訪問査定ってどんなものなのだろうか
- 訪問査定において準備すべきものは何だろうか
- 訪問査定で注意すべき点は何だろうか
そこで今回の記事ではマンション売却における「訪問査定」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは訪問査定に対する理解が深まり、準備すべきことや注意点を知ることができます。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.マンション売却における「査定」の意味
【大前提】査定とは売却予想価格である
マンションにおける査定とは、売却予想価格を出すこと。
マンションの査定額は不動産会社が出しますが、それは不動産会社が買い取る価格ではありません。
マンションの査定額は、あくまでも不動産会社が仲介をして買主を見つけたときに、その買主が購入する価格になります。
査定額は売却予想価格であるため、その予想は不動産会社によっても異なります。
査定額は不動産会社によってバラバラになるものと理解しておく必要があります。
査定額はあくまでも予想価格であるという点が、中古車や中古ピアノ等の買取価格の見積もり査定とは異なる点です。
不動産の売却においても、不動産会社が直接買い取る買取というサービスがあります。
買取は売却額が市場価格の80%程度の価格になりますが、即金・即売が可能です。
すぐにお金が必要という特殊な事情を抱えているような人であれば、買取はオススメです。
買取については、以下の記事で詳しく記載しています。
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「不動産の買取ってどういう仕組み?」 「不動産買取と仲介ってどっちがいいの?」 「買取のデメリットは何があるの?」 不動 ...
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買取は特殊なケースですので、この記事の中ではこれ以上触れません。
以下より、あくまで仲介を前提とした査定について解説します。
では査定はなぜ必要なのでしょうか。そこで次に査定の必要性について見ていきます。
査定の必要性は2つ
査定は以下の2つの理由で必要になります。
- 資金計画を立てるため
- 適正な売却価格を決めるため
マンションの売却では、資金計画が重要になります。
住宅ローン残債が残っている場合には、売却額によって住宅ローン残債が返済できるか確認する必要があります。
もし売却額で返済できないようであれば、貯金を加える必要があります。
また買い替えの場合、売却額の中から次の購入物件のために、どれくらいの頭金を用意できるのか知る必要があります。
このように、マンションの売却においては、ローンの返済や、次の購入物件の頭金に関して資金計画を立てなければなりません。
査定額がいい加減だと、資金計画に狂いを生じさせます。
資金計画を確実なものにするためにも、査定はできるだけ多くの不動産会社から取得した方が安全です。
重要な売出価格を決めるのが査定
さらに、マンションの売却では売出価格を決定します。
マンションの売却においては、売出価格の設定はとても重要です。
高過ぎる値段をつけてしまうと、なかなか売却できませんし、安過ぎる値段を付ければ損をします。
基本的に売れないマンションというものは存在しません。
売れないマンションは、ほとんどの場合、売出価格が高過ぎるということが原因です。
逆に言えば、売出価格を間違わなければ、マンションはきちんと売却できます。
高過ぎる査定額は鵜呑みにせず、適正な査定額で売出価格を決定することが必要です。
売出価格の決定については下記に詳しく記載しています。
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以上、ここまで査定とは何かについて見てきました。
査定には匿名査定と訪問査定があります。
そこで次に匿名査定と訪問査定についてご紹介します。
2.マンションの査定には「机上(簡易・匿名)査定」と「訪問査定」
マンションの査定には、
- 机上計算による匿名・簡易査定
- 実際に不動産会社に中を見てもらった上で査定を受ける訪問査定
の2種類があります。
匿名査定には「HowMA(ハウマ)」や「HOME’Sプライスマップ」「IESHIL(イエシル)」といったサイトがあり、簡単な入力だけでマンションの価格を調べることができます。
相場を知る程度であれば、匿名査定だけで十分です。
訪問査定を受ける前に是非、匿名査定サイトを使ってみることをオススメします。
ただし、匿名査定では扉の建付けが悪い、廊下の照明が接触不良になっている、床に傷がある等の個別の事情については反映できません。
これらの個別の事情は、査定額にマイナスになるものやマイナスにならないものなどもあります。
個別の事情を反映した価格は訪問査定でないと分かりません。
不動産を売却する際は、匿名査定だけでなく、必ず訪問査定を受けて不動産会社に物件を確認してもらうようにしましょう。
以上、ここまで匿名査定と訪問査定について見てきました。
訪問査定を受けることにはメリットがあります。
それは訪問査定によって分かることがあるからです。
そこで次に訪問査定でわかることについてご紹介します。
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3.訪問査定でわかることは「修繕すべきかどうか」
訪問査定で分かることは、損傷個所があった場合、修繕すべきか、もしくは修繕しなくても良いかが分かるという点です。
例えば床の傷一つとっても、自分で判断するのも迷う人は多いです。
「日焼けによる色落ち」や「テレビ台や冷蔵庫、たんす等の重量家具の設置跡、床の凹み」については、修繕すべきなのでしょうか。
一方で、「深い傷がある」「大きな穴が開いている」「つまずくほどの段差がある」「広く腐食している」は修繕しなくても良いのでしょうか。
もしくは、これらの中間のような損傷はどう対応すべきなのでしょうか。
このような床の傷一つとっても、修繕すべきかどうかは迷います。
マンションは修繕せずに売ることもよくある
マンションの売却では、修繕せずに売却するということは良くあります。
買主に損傷個所を容認させて売却するという方法です。
買主が損傷を容認してくれるようなレベルであれば、わざわざお金をかけて修繕する必要はありません。
修繕すべきかどうか分からない場合には、まずは査定を取って不動産会社の判断を仰いだ方が無駄にはならなくて済みます。
現状の状態で、とりあえず査定を受けることをオススメします。
査定を受けた際、不動産会社に気になる箇所を修繕すべきかどうか確認するようにしましょう。
また、修繕すべきかどうかについても、不動産会社によって判断が分かれる場合があります。
そのため、やはり訪問査定は複数の会社から取得した方が良いです。
複数の会社に訪問査定するには、一括査定が便利です。
修繕すべきかどうかは、最終的に多数決で決めるのが良いでしょう。
以上、ここまで訪問査定でわかることについて見てきました。
では、訪問査定を受ける前にはどのような準備をしておけばいいのでしょうか。
そこで次に訪問査定の準備についてご紹介します。
4.訪問査定の準備することは不具合・損傷個所をまとめておく
訪問査定においては、ハウスクリーニングやリフォーム、修繕等は一切必要ありません。
訪問査定に必要な準備としては、不具合・損傷個所をまとめておくという点です。
実際、売却においても売主しか知らない不具合等について、「告知書」に記載して買主へ引き継ぐことになります。
告知書とは不具合箇所を伝えるための書面

告知書(サンプル)
不動産会社からは告知書への記載を求められます。
不具合箇所についてまとめておくようにして下さい。
また不具合箇所をまとめたら、訪問査定を受けた際、不具合箇所を修繕すべきかどうかについても確認を行います。
原則として、窓ガラスが割れている、お湯が出ない等々の重大な損傷については、修繕した方が良いという意見になるはずです。
一方で、床に擦り傷がある、壁紙のクロスが黒ずんでいる等の軽微な損傷については、修繕不要となることが多いです。
いずれにしても、実際に物件を見てもらい判断を仰ぐのが良いでしょう。
不具合箇所等については、しっかりとまとめておくようにして下さい。
以上、ここまで訪問査定の準備について見てきました。
次に訪問査定の流れについて見ていきましょう。
5.訪問査定の流れと査定時間
マンションでの訪問査定の流れは主に以下になります。
- 不動産会社に査定依頼
- 訪問査定の日程調整
- 訪問査定の実施
- 査定結果の連絡
訪問査定の査定結果は、だいたい5-7日前後で教えてもらうことが多いです。
マンション売却する際のスケジュールについては下記記事で詳しく解説しています。
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次にマンションを訪問査定した際のチェックポイントについて見ていきましょう。
マンションを訪問査定した際のチェックポイント
不動産会社がマンション査定で見ているポイントは以下の通りです。
- マンション敷地の立地
- 建物の築年数
- 施工の質と元施工会社
- 建物の規模および階数
- 耐震性
- 階数および位置
- 日照、眺望及び景観の良否
- 室内の仕上げ及び維持管理の状態
- 専有面積及び間取りの状態
- 設備および建具等の損傷の状態
- リフォームの有無
- 管理費等の滞納の有無および修繕積立金の額
- 駐車場
それぞれのチェックポイントの詳細は下記の記事で詳しく解説しています。
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では、訪問査定にはどのような注意点があるのでしょうか。
そこで次に訪問査定の注意点について見ていきます。
6.訪問査定の注意点は「営業活動」ということ
訪問査定については、1つ注意点があります。
査定と言うのは、不動産会社にとって営業の一環であるという点です。
不動産会社は、純粋に価格を査定したいから来るのではなく、査定の後、自社に仲介を依頼してもらいたいから来るのです。
もし、あなたが不動産会社の人で、査定によって仲介の営業をするとしたら、どうするでしょうか?
本当に売却できる価格よりも高い価格を査定して、「うちの会社だったらこんなに高く売却できますよ」という人も出てくると思います。
訪問査定では、実際に高過ぎる査定額を提示してくる会社というのが存在します。
営業的なリップサービスも含めた価格を出し、「ぜひ当社だけに仲介を依頼してください!」という流れになるのです。
高過ぎる査定額を資金計画や売出価格に反映されるのはリスクがあります。

査定額が高すぎる不動産会社は危険
複数の不動産会社から査定を取った場合には、必ず一番低い査定額に注目するようにして下さい。
特に資金計画については、低めの価格で見ておかないと、後から大きな出費を伴う等の痛手をこうむります。
訪問査定による査定額は、営業要素も含むという点を十分認識しておくようにして下さい。
査定を行う不動産会社の狙いについての詳細は下記記事で詳しく解説しています。
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以上、ここまで訪問査定の注意点について見てきました。
複数の不動産会社に訪問査定を受けるには、一括査定サイトの利用が便利です。
そこで次に不動産一括査定サイトについてご紹介します。
7.一括査定サイトを使って複数の訪問査定を実施
売却予想額は不動産会社によってバラバラに査定されます。
また修繕箇所の判断についても、不動産会社によって意見が分かれます。
そのため、訪問査定は絶対に複数の不動産会社から取得すべきです。
複数の不動産会社から訪問査定を受けるには、一括査定サイトの利用が便利です。
一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ
一括査定サイトは、簡単な入力だけで、無料で複数の不動産会社から査定を受けることができます。
わざわざこちらから複数の不動産会社に打診する必要もなく、1回の作業だけで複数の不動産会社に査定を依頼できるため、とても便利です。
どのサイトも概ね最大6社までの査定を受けることができます。
一括査定サイトで査定の依頼を行うと、すぐに不動産会社から訪問の日時を調整する連絡が来ます。
訪問日が決まったら、早速、訪問査定を受けてみましょう。
一般媒介契約で複数社と締結する
また、訪問査定を受けたら、全ての不動産会社に売却の仲介を依頼することも可能です。
複数の不動産会社に同時に仲介の依頼をすることを「一般媒介契約」と呼びます。

専任媒介と一般媒介の違い
ちなみに不動産会社へ支払う仲介手数料は成功報酬のため、買主を決めてくれた不動産会社のみに支払うことになります。
何社に依頼したとしても、かかる手数料は同じであるため、一般媒介を使わない手はありません。
例えば、6社に売却を依頼したら、6倍のパワーで売却活動が行われることになります。
1社に依頼するよりも、早く高く売れる確率が格段に高まります。
一括査定サイトを使えば、簡単に複数の不動産会社から査定を取れるだけではなく、一般媒介で依頼できる複数の不動産会社も確保できるというメリットがあります。
訪問査定を受けるのであれば、ぜひ一括査定サイトを利用するのが良いでしょう。
一括査定サイトのオススメは 「すまいValue」「HOME4U」
不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。
その中でも
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「 SRE不動産(※旧ソニー不動産)
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
の4つを特にオススメしています。
筆者も不動産一括査定(「 すまいValue 」「 HOME4U
」「 イエウール
」)を利用しました。
下記は「 すまいValue 」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。
とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手
下記表が「不動産売買の仲介件数が多い不動産会社」が「どこの不動産一括査定に参加しているのか」を調査した結果です。


不動産一括査定×不動産会社のマッチング表


不動産売買は超大手に偏っている
「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」が超大手と言われる不動産会社です。
超大手不動産会社3社で不動産仲介の約30%のシェアを持っています。つまり、不動産売買した人の中で3人に1人は、「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」のどこかに仲介を依頼していることになります。
それだけ日本の不動産売買は、超大手不動産会社に偏っているということ。
超大手不動産会社は販売活動に強く、豊富な買主を持っており、売りやすいとも言えます。
そしてこの3社に唯一依頼できるのが「 すまいValue 」です。なので「すまいValue」は外せません。
超大手不動産会社だけではなく大手・中堅・地域密着の会社とも比較する
ただ、超大手だけで満足してはダメ。不動産業界は特殊な縄張りなどもあり、A地域はX不動産が強い、B地域はY不動産が強いということが存在します。
また、超大手になるほど両手仲介の比率が高まります。
両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと。買主と売主から手数料をもらえるため、利益相反の関係になる。アメリカは両手仲介は禁止されています。
売却を成功するためにも超大手不動産会社と併せて大手・中堅や地域密着の不動産会社も比較することをオススメします。
その場合は下記のような使い分けがいいでしょう。
不動産一括査定の賢い使い方
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。


一括査定 | 机上査定 | 備考欄 |
---|---|---|
すまいValue | 〇 | 〇 |
HOME4U | 〇 | 〇 |
イエウール | 〇 | |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | 〇 | 〇 |
まとめ
マンション売却で行う訪問査定の準備と注意点について見てきました。
訪問査定は複数の不動産会社から受けるべきです。
一括査定サイトを上手く利用しながら、訪問査定を受けることをオススメします。
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不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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