マイホームを購入すると、周囲から「おめでとうございます」と祝福を受けます。
このつかの間の幸せは、できるだけ長く続いて欲しいもの。
しかしながら、人によっては買ったばかりの新築や築浅の家を、早くも手放さなければならない事態が発生することがあります。
- 長期の海外転勤が決まってしまった
- 住宅ローンの支払が予想以上にきつかった
- 会社が倒産してローンを支払えなくなった
などの問題が発生し、運悪く新築や築浅の家をすぐに手放すことになる方もいます。
このような事情をお持ちの方は、なるべく損せず、なるべく高く家を売却したいと考えている方も多いことでしょう。
そこで今回の記事では「買ったばかりの新築や築浅の家売却」の注意点と高く売るポイントをお伝えします。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.新築プレミアム価格になるのはいつまで?
まず最初に新築の定義について見ていきましょう。
公正競争規約の中では、新築は次のように定められています。
新築とは、建築後1年未満であって、居住のように供されたことがないもの
別の言い方で「築浅」とも言います。
もう少し具体的に言います。
- 買ったばかりの新築であっても、あなたが一瞬でも住んでしまえば、その家は新築ではない
- 買ってから一度も住んでいなくても、建築後1年以上経ってしまえば新築ではない
そのため、買ってからほとんど住んでいないのにも関わらず、新築の要件から外れると新築とは言えず、新築プレミアムは消えてしまいます。
新築プレミアムとは、新築だと高く売れることをいう。物件価格を10~15%程度高くしています。
つまり、新築間もない物件でも、一度でも住んでしまうと、価格が予想以上に下落してしまうはよくあります。
新築は高く売れる
日本人は世界的に見ても新築が大好きです。
今でこそ中古住宅が徐々に流通するようになりましたが、それでも新築にこだわる人たちは圧倒的に多いのも事実。
そのため、新築プレミアム(新築だと物件が高く売れること)と言われています。
新築プレミアムというものがあるため、新築でない物件でも「新築です!!」と謳えれば、物件を高く売ることができます。
しかしながら、そういうインチキはしてはいけないということが、不動産の公正競争規約の中で定められています。
建築確認を受けないまま新築分譲マンション等の取引に関する広告表示を行っているものが見受けられるが、これは規約第5条(広告表示の開始時期の制限)の規定に違反するものである。
※公益財団法人 首都圏不動産公正取引協議会「不動産の表示に関する公正競争規約実施細則」より
かみ砕くと、「新築でないマンションを不動産会社が新築と謳って広告宣伝を行うと、景品表示法に違反し罰則を受ける」と書いてあります。
この規定を知らない不動産会社は、ほぼいないため、無理やり新築として売ってくれということはできません。
以上、ここまで新築と売却の関係について見てきました。
それでは次に売却の注意点について見ていきましょう。
2.新築や築浅の家を売却するときの5つの注意点
「買ったばかりの家」を売却しようとすると、喜ぶ人たちがいます。それは不動産会社です。
真新しい新築物件は、問題もほとんど無く、楽に売却することができます。
そんな新築物件を売る際の注意点があります。
- 注意点1:ローン返済が可能かどうかを確認する
- 注意点2:適切な売却理由を伝える
- 注意点3:一括査定サイトで価格を十分検証する
- 注意点4:売却に掛かる費用を知っておく
- 注意点5:設備を撤去し過ぎない
それぞれの注意点を見ていきましょう。
注意点1.ローン返済が可能かどうかを確認する
新築プレミアムを失った物件(築浅物件)は、購入時よりも価格が10~15%程度下がります。
築浅物件を売却する際、住宅ローン残債が売却価格を上回るオーバーローンが生じる可能性があるので注意が必要。
住宅ローンは、元利均等返済という方式で返済することが通常です。
元利均等返済とは、元金と利息の合計が毎月一定額となる返済方法
元利均等返済では、返済当初は利息ばかりを返済することになり、住宅ローンの元金がなかなか下がりません。
よって、住宅ローン残債は上に凸のカーブを描いて減少することになります。
一方で、住宅の価格は、新築プレミアムを無くすと大きく値下がりし、その後、徐々に下がります。
住宅には土地価格がありますので、完全にゼロになることはなく、ある程度のところで下げ止まるのが普通です。

住宅ローンのフルローンと頭金を入れた状態での住宅ローンの減り方の差
そのため、フルローンに近い状態で購入した人は、築浅で売却しようとするとオーバーローンとなる可能性が高いです。
それに対して、2割近くの頭金を入れている人であれば、築浅で売却しても住宅ローン残債を返済できる可能性が高くなります。
オーバーローンの場合は、貯金等を加えて住宅ローンを返済する必要性が出てきます。
築浅物件を売却する人は、まずは住宅ローン残債を確認し、査定も取って、住宅ローンを返済できるかどうかを確認することから始めるようにしてください。
オーバーローンでの売却については下記でさらに詳しく解説しています。
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住宅ローンが残っている家を売る時に確認する3つのポイントと6つの売却方法
転勤により、やむなく持ち家から引っ越さなければいけなくなった時など、住宅ローンが残った状態の家を売却しなければいけない場 ...
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注意点2.適切な売却理由を伝える
新築物件は売却されるケースが多いので、買主が「なぜ売るのか」を知りたがることが多いです。
買主の知りたいことは、
- 「物件に問題があるのか?」
- 「近所に変な住民がいるのか?」
等の内容です。
例えば、売却の理由が「予想以上に通勤が大変だった」「住宅ローンの返済が自分にとって予想以上に厳しかった」等の理由であれば問題ありません。
物件や近隣住民に問題があったのではなく、「自らのチョイスが間違っていた」等の理由であれば、買主には特に関係ないことなので、あまり問題視されることはありません。
どんな物件にも多少の難はあります。
「西日がきつかった」「駐車場が使いにくかった」等の問題があっても、主たる理由が「自らの選択の誤り」にあれば、それを理由として伝えるのが適切な回答といえます。
家の売却理由の伝え方については下記記事で詳しく解説しています。
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家の売却理由はどこまで伝える?内覧対応で伝えるべき本音と建前
家やマンションは一度購入してしまうと、なかなかその環境を変えるわけにはいきません。 そのため、買主はとても慎重になります ...
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注意点3.不動産一括査定サイトで価格を十分検証すること
築浅物件は、不動産一括査定サイトを利用し、複数の不動産会社に売却価格の査定を依頼することが重要です。
その理由としては、築浅物件は査定する会社によって査定価格が大きく異なることがあるため。
例えば、築20年程度の中古マンションは、過去に同じマンション内の他の物件が何戸も売買されているため、およその相場が形成されており、査定価格にほとんど差が付くことはありません。
一方で、築浅のマンションだと、そのマンションの初の取引事例となることもあり、前例がないことから不動産会社もいくらで売れるか正直分からないからです。
よって、前例のない築浅物件の売却では、査定する不動産会社によって大きく金額の差が付きます。
高過ぎるとなかなか売れない可能性がありますので、複数の査定の中から高過ぎない価格を選び出し、売り出し価格を設定するようにしてください。

査定額が高すぎる不動産会社は危険
一括査定サイトのオススメは 「すまいValue」「HOME4U」
不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。
その中でも
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「 SRE不動産(※旧ソニー不動産)
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
の4つを特にオススメしています。
筆者も不動産一括査定(「 すまいValue 」「 HOME4U
」「 イエウール
」)を利用しました。
下記は「 すまいValue 」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。
とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手
下記表が「不動産売買の仲介件数が多い不動産会社」が「どこの不動産一括査定に参加しているのか」を調査した結果です。


不動産一括査定×不動産会社のマッチング表


不動産売買は超大手に偏っている
「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」が超大手と言われる不動産会社です。
超大手不動産会社3社で不動産仲介の約30%のシェアを持っています。つまり、不動産売買した人の中で3人に1人は、「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」のどこかに仲介を依頼していることになります。
それだけ日本の不動産売買は、超大手不動産会社に偏っているということ。
超大手不動産会社は販売活動に強く、豊富な買主を持っており、売りやすいとも言えます。
そしてこの3社に唯一依頼できるのが「 すまいValue 」です。なので「すまいValue」は外せません。
超大手不動産会社だけではなく大手・中堅・地域密着の会社とも比較する
ただ、超大手だけで満足してはダメ。不動産業界は特殊な縄張りなどもあり、A地域はX不動産が強い、B地域はY不動産が強いということが存在します。
また、超大手になるほど両手仲介の比率が高まります。
両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと。買主と売主から手数料をもらえるため、利益相反の関係になる。アメリカは両手仲介は禁止されています。
売却を成功するためにも超大手不動産会社と併せて大手・中堅や地域密着の不動産会社も比較することをオススメします。
その場合は下記のような使い分けがいいでしょう。
不動産一括査定の賢い使い方
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。


一括査定 | 机上査定 | 備考欄 |
---|---|---|
すまいValue | 〇 | 〇 |
HOME4U | 〇 | 〇 |
イエウール | 〇 | |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | 〇 | 〇 |
注意点4.売却に掛かる費用を知っておく
住宅の売却では、次のような諸費用がかかります。
主な項目 | 内容 | 説明 | 支払いの内訳 | 支払い時期 |
---|---|---|---|---|
仲介 | 不動産仲介手数料 | 媒介契約を結んだ仲介業者の成功報酬として支払う仲介手数料 | 200万円以下の金額:売買価格×5%×消費税 200万円~400万円まで:売買価格×4%+2万×消費税 400万円~:売買価格×3%+6万×消費税 | ・売買契約時に50% ・残金時に50% |
契約時 | 印紙税 | 売買契約書に必要な収入印紙代 | ※1軽減特例適用の場合 100万円超500万円以下は1,000円 500万円超1,000万円以下は5,000円 1,000万円超5,000万円以下は1万円 5,000万円超1億円以下は3万円 | 売買契約時に |
抵当権抹消 | 抵当権抹消費用 | 金融機関に設定されている抵当権を抹消するために必要な手続きに関する費用 | 司法書士報酬:一般的には5,000円~1万円前後 登録免許税:不動産の筆数(個数)×1,000円 | 残金時清算までに |
ザックリにはなりますが、売却費用は、売却価格の3.5%程度かかるのが一般的です。
尚、築浅物件の売却では、売却価格が購入価格よりも大きく下落することが一般的であるため、税金は発生しないことの方が多いです。
仮に税金が発生しそうな場合であっても、3,000万円特別控除と呼ばれる特例を利用すると税金は発生しないことがほとんどとなります。
家を売却したときの費用詳細は下記記事で詳しく解説しています
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不動産売却に掛かる費用・手数料一覧と内訳・支払い時期を分かりやすく解説
これは決して大げさではなく、ローンの残債がある物件でも、空き家の売却でも、買換えによる不動産売却であっても必ずさまざまな ...
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また、3,000万円の特別控除については下記記事で詳しく解説しています
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3,000万円特別控除とは?相続空き家の売却は適用される?適用要件と必要書類
個人の方が不動産を売却しやすくするため、国は様々な税政策を実施しています。 個人がマイホームを売却や買換えした時によく使 ...
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注意点5.設備を撤去し過ぎない
築浅の物件では、エアコン等の設備が最新で真新しいものが多いです。
中古住宅の売却では、本来、エアコン等は外して売却して構いません。
ただし、築浅物件の場合、買主は最新設備が残っていることを期待することが多いので、なるべく撤去しない方が無難です。
唯一、外しても良いと思われるのはウォシュレットです。
ウォシュレットは前に住民が使っていたものを利用することを嫌がる人もいます。
どうしても引っ越し先に持っていきたい場合には、外すという判断もあり得ます。
ただし、引越先で新しいウォシュレットを購入する予定の人であれば、無理に外すこともありません。
築浅物件では、ウォシュレットですら残っていることを好む人がいますので、「どうしても持っていきたい」等の強い理由がない限り、残しておくのが良いでしょう。
まとめ
買ったばかりの家を売るときの注意点を見てきました。
新築プレミアムを失った家は複数の不動産会社に査定を依頼し、適切な売り出し価格をつけて売却を始めるようにしてください。
不動産一括査定については下記記事でさらに詳しく解説しています。
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