「古い家が付いた土地は誰も買ってくれない」
「家は取り壊して更地にしたほうが売れる」
こんな話を聞くと、古い家は壊して売ったほうがいいと判断してしまいます。
ただ、実際には違います。古い家付き土地でも十分に売却することは可能です。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 古い家付きの土地でも売れるんだろうか?
- そのまま売るのか取り壊して売るのかどうすればいいの?
- どうしても売れない場合はどうしたらいい?
そこで当記事では、古い家付きの土地をスムーズに売るための方法について解説しています。
不動産会に相談して出てこない方法も紹介しておりますのでぜひ見てください。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。
資格不動産鑑定士・中小企業鑑定士・宅地建物取引士・不動産コンサルティングマスター・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン資格
1.築20年で建物価格はほぼゼロになる
古家の建物価格は築25年でほぼゼロになります。
下記は国土交通省発表が発表した「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」にある中古戸建住宅の価格査定の例を持ってきました。
濃いオレンジのラインが木造住宅の「建物」の査定額です。

中古戸建住宅の価格査定の例
※出典:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」より
築20年を過ぎると、建物価格は20%未満となりほぼゼロとなります。
築20年超の建物は、基本的に「土地価格のみ」で取引されているです。
古い家が価値を落とす2つの分かれ目
古家には、価値を落とす下記2つの分かれ目があります。
- 築20年
- 耐震基準
まず、築20年超の木造住宅は、買主が住宅ローン控除を利用できません。
住宅ローン控除とは返済期間が10年以上のローンを組んで住宅を購入した際、自分が住むことになった年から一定の期間に渡り、所定の額が所得税から控除される税金特例
住宅ローン控除を利用できないと、買主のメリットがなくなるため、売却しにくくなります。
築20年超の木造住宅で、住宅ローン控除を使えるようにするには「瑕疵担保保険」に加入しなければなりません。
- 瑕疵とは、売買契約の目的物が通常有すべき品質・性能を欠くこと
- 瑕疵担保保険とは、住宅の特定部分の隠れた瑕疵が見つかった場合に生じる補修費用などの経済的な負担を保険金でカバーすることができる保険
瑕疵担保保険を付保するには、
- インスペクションに合格していること
- 新耐震基準を満たしていること
の2つの要件が必要。
インスペクションとは、主に柱や基礎、壁、屋根などの構造耐力上主要な部分や、外壁や開口部などの雨水の浸入を防止する部分について、専門家による目視や計測等の調査のこと
昭和56年6月1日以降の新耐震の建物であれば、インスペクションに合格して瑕疵担保保険を付保。
すると、買主は住宅ローン控除を利用できるため売却しやすくなります。
インスペクションと瑕疵担保保険の費用は合計で10万円程度あれば足ります。
一方で、旧耐震基準の建物は、さらに深刻です。
耐震基準は、新耐震基準と旧耐震基準の2つがあります。
- 新耐震基準:昭和56年6月1日以降の建物
- 旧耐震基準:昭和56年6月1日より前の建物
旧耐震基準の建物は、まず耐震リフォームをして新耐震基準を満たす建物に変えることが必要です。
耐震リフォームには、500万円~600万円かかります。
通常、木造戸建て住宅の取り壊し費用は150万円程度。
旧耐震の建物を無理矢理耐震リフォームするなら、壊してしまった方が安いという判断ができます。


2.古い家付きで売るから更地にして売るかの判断基準
更地にするかどうかは、しっかりと「取り壊さずに売った場合」と「取り壊した売った場合」の2つの価格を検討してから売るようにしてください。
築30年程度であれば取り壊しの必要なし
築30年程度の家であれば、買主が十分利用できますので取り壊す必要はありません。
築30年の家であれば、建物価格はゼロで、土地価格のみで取引されます。
取り壊さなくて良い場合の古家の価格 = 更地価格
築40年を超える家は取り壊し前提になる
築40年を超えるような家であれば、取り壊し前提となってきます。
取り壊し前提の価格は、更地価格から取り壊し費用を控除した価格です。
取り壊した方が良い場合の古家の価格 = 更地 - 取り壊し費用
古家付の査定価格が更地と同額であれば取り壊す必要はありません。
一方で、古家付の査定価格が更地を下回っているようであれば、売主で壊した方がスムーズに売却できます。


複数の不動産会社に査定相談をするのがオススメ
家を取り壊す判断をする前に必ず不動産会社に査定相談をしてください。
中には古家付きの方が高く売れることもあります。
たまたま買主が古家を求める可能性もあります。
ようは買い手がいるか否かで変わってくるのです。
NTTグループで安心運営の「 HOME4U 」や地域密着の不動産会社が多数参加している「 HOME’S売却査定
」などの不動産一括査定を使うと、大手から地域密着まで様々な不動産会社に査定相談ができます。
「 HOME4U 」「 HOME’S売却査定
」は要望欄もあり、「家付きが良いのか更地がいいのかアドバイスください。」と伝えれば、しっかりと対応してもらえます。

HOME'Sの要望
机上査定を選択すれば、簡易的な査定額をメールでもらえます。
また、要望欄に「メールで査定額の提示を希望」と書けば、不動産会社にも伝わります。
思いがけない買主を抱えている可能性もあり、査定額が付く場合も多いです。
ただし、田舎だと1社しか出てこな可能性があります。
「 HOME4U 」「 HOME’S売却査定
」で栃木県で実施したところ、それぞれ1社しか出てきませんでした。

HOME4Uで1社見つかる

HOME'Sで1社見つかる
1社だけのアドバイスだと適切に判断ができません。
もし1社しか出てこないようであれば、「 HOME4U 」「 HOME’S売却査定
」や「 イエウール
」を併用して、複数の不動産会社に相談できるようにしましょう。
一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
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不動産一括査定サイトは怪しくない?利用者のリアル評判とデメリット
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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2.古い家付で売る時に抑えておきたい3つのポイント
古家付で売る前に抑えておきたい3つのポイントを解説します。
- ポイント1.契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)は全部免責する
- ポイント2.空き家の場合は管理しておく
- ポイント3.更地で売った時よりも安くなる場合がある
ポイント1.契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)は全部免責する
まず古い家付きで売る場合、契約不適合責任は全部免責としてください。
2020年4月から民法改正により売主の瑕疵担保責任は契約不適合責任に代わります。
契約不適合責任では、契約内容と違うものを売ると、売主が修繕や代金減額、契約解除、損害賠償請求を負うという責任
古い家では知らず知らずにうちに不具合や不良があるのはよくあることなのじゃ!

例えば、雨漏りがする建物なのに、雨漏りしない前提で売却すると、契約内容とは異なる物件を売却したということになり、売却後、買主から修繕要求等を受けることになります。
古家の場合、どのような問題が潜んでいるか分からないため、契約不適合責任が適用されてしまうと、売主が非常に重い責任を負ってしまいます。
ただし、契約不適合責任は、買主が了解すれば免責することは可能。
古家付だからといって自動で契約不適合責任が全部免責されることはありません。
買主と交渉をして、全部免責を条件として売却するということができます。
筆者としては、古家付で売る場合には、必ず契約不適合責任を全部免責することをオススメしています。
ポイント2.空き家の場合は管理しておく
古家は、売却まで管理しておくことが重要。
特に空き家の場合は放置していることが多いので注意が必要です。
家は放置すると、カビやシロアリ等が繁殖し、家がどんどん劣化。
定期的に空気の入替を行うか、不動産会社に管理を頼むかといった方法があります。
また、他人に「使用貸借(タダで貸すこと)」という弱い権利で貸すという方法もあります。
人が住めば自然と管理が行われるため、家の価値が維持されます。
ポイントは無料で貸すという点。
誰か借りたい人がいたら、管理を兼ねる意味でも売却まで家を使ってもらいましょう。
ポイント3.更地で売った時よりも安くなる場合がある
古家付で売る場合、価格が更地より安くなる場合があります。
誰も利用しないような建物を古家付で売ると、買主は取り壊し前提で購入することになります。
取壊してはじめて更地と同じ資産価値となるため、取り壊し前提の価格は以下のように求められます。
取り壊し前提の古家の価格 = 更地 - 取り壊し費用
取り壊し費用は100万円以上は掛かることが多く、住宅ローンが組めないため、キャッシュを持っている人でないと、取り壊し前提で購入することはできません。
よって、取り壊し前提で購入できる人は非常に少なく、上式の理論的な価格よりも実際はもっと安くなります。
売りにくいうえに、価格も安くなるので、取り壊し前提の場合には売主が自ら取り壊して売った方が良いということです。
4.更地で売る時の2つのポイント
更地で売る時の2つのポイントについて紹介します。
- ポイント1.マイホームなら取り壊してから1年以内売る
- ポイント2.更地にすると固定資産税が高くなる
ポイント1.マイホームなら取り壊してから1年以内売る
マイホームなら取り壊してから1年以内売る(かつ引越してから3年以内)ことがポイントです。
マイホームの売却では、譲渡所得が発生すると税金が生じます。
譲渡所得とは、以下の計算式で表されるものとなります。
譲渡所得 = 譲渡価額(売却額) - 取得費(購入額) - 譲渡費用(掛かった経費)
※取得費とは土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額
※譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用
ここで、古家がマイホームの場合、3,000万円特別控除という特例が利用できます。
3,000万円特別控除を適用したときの譲渡所得の計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 – 3,000円
3,000万円特別控除を利用すると、譲渡所得がゼロになることが多く、税金を払はなくて済みます。
ただし、3,000万円特別控除はマイホームを取り壊した後、いつまでも利用できるわけではありません。
以下のような条件内に売却する必要があります。
取り壊し後に3,000万円特別控除が使える条件
転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取り壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取り壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)
※出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」より

取り壊し後に3,000万円特別控除が使える条件
マイホームを取り壊す際は、3,000万円特別控除の期限を意識して売却するようにしましょう。
3,000万円特別控除については下記記事でさらに詳しく解説しています。
-
3,000万円特別控除とは?他の特例との併用は可能?適用要件と必要書類
個人の方が不動産を売却しやすくするため、国は様々な税政策を実施しています。 個人がマイホームを売却や買換えした時によく使 ...
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ポイント2.更地にすると固定資産税が高くなる
更地で売却すると、売却するまで「土地の固定資産税が高くなる」のが注意点です。
土地は、その上に住宅が建っていると「住宅用地の特例」が適用され固定資産税が安くなっています。
家を取り壊すと、住宅用地の特例が適用されなくなるため、固定資産税が3~4倍程度上がります。
他サイトを見ると、6倍になると間違った情報が書かれていますが、6倍にはなりません。
上がってしまうのは、3~4倍程度。
ただし、建物を取り壊せば、建物に係る固定資産税はなくなります。
そのため、固定資産税については、「増える土地」と「減る建物」の両方を見比べて検討することが必要。
固定資産税は、毎年1月1日時点の状態で判断されます。
取壊すことで固定資産税が高くなるようであれば1月1日時点を過ぎた時点で取り壊し、安くなるようであれば12月31日までに取り壊した方が良いことになります。
無駄な税金を払わないためにも、取り壊しのタイミングには注意をしましょう。
5.どうしても売れない時の4つの対処法


- 対処法1.不動産会社のやる気を上げて売る
- 対処法2.広告の表現方法を「古家付土地」とする
- 対処法3.リフォームして売る
- 対処法4.買取保証を使って売る
対処法1.不動産会社のやる気を上げて売る
古家付き土地は安い物件が多いため、不動産会社のやる気を上げて売ることが必要です。
不動産会社のやる気を上げるには、専任媒介または専属専任媒介契約で依頼することがポイント。
専任媒介・専属専任媒介とは、1社の不動産会社にしか仲介の依頼をできない契約。
依頼を受けた不動産会社は、売却を決めれば確実に仲介手数料を手にすることができますのでやる気を出してくれます。
また、2018年1月1日以降より、400万円以下の低廉な空き家等の取引については、不動産会社は媒介報酬に加え、現地調査等の費用を受領することができるようになりました。
不動産会社は仲介手数料に現地調査等の費用を加えることができ、最大18万円まで受領することが可能。
仲介手数料は取引額に応じて、上限額が以下のように決まります。
取引額 (売買金額) | 速算式(上限額) |
---|---|
200万円以下 | 5% |
200万円超から400万円以下 | 4%+2万円 |
400万円超 | 3%+6万円 |
古家の売却は、総額が400万円以下となることが多く、上記の上限額だと受領可能な仲介手数料の総額はあまりにも低いため、不動産会社の協力が得られないという問題がありました。
そこで、不動産会社が最大18万円まで手数料を受領できるようにしたことで、不動産会社の協力が得やすくなるようになりました。
売値が400万円以下の場合は18万円まで出すと、不動産会社もやる気を出してくれます。
「 HOME4U 」「 HOME’S売却査定
」や「 イエウール
」でまずは複数社に査定依頼をして、そこから1社に絞っていきましょう。
対処法2.広告の表現方法を「古家付土地」とする
「取壊さずに売却した場合の価格」が「更地価格」以上のときは、古家付土地で売ります。
古家付き土地とは広告表現の仕方の1つです。
古家付き土地として売却することで、更地を求めている人にも訴求することができます。
いずれにしても、更地狙いの人にも、建物付き狙いの人にも両方に訴求できるため、購入者層は倍増し、売却しやすくなります。
対処法3.リフォームして売る
古い家はリフォームした方が売りやすくなります。
特に、風呂のリフォームは効果が高いです。
バスを丸ごと交換すると100万円~150万円程度です。
最小限のリフォームで最大の効果を上げたい場合は、バスの交換がオススメになります。
キッチンもデザイン性の高いリフォームであれば、効果があります。
キッチンのリフォームは50万円~100万円程度です。
バスとキッチンを両方リフォームしておけば、古い家でも売却しやすいです。
対処法4.買取保証を使って売る
家などの不動産を売る場合は、通常は不動産会社に仲介を依頼します。
仲介は普通の売却のこと。対して、買取は不動産会社が転売用に下取りすることです。
さらに仲介と買取をミックスさせた売却方法に「買取保証」があります。
買取保証とは、一定期間は仲介での売却をチャレンジし、期間が過ぎても売却できなかった場合は、不動産会社が買い取るというサービス

買取保証の説明図
買取のデメリットは、仲介に比べて売却額が70~80%程度になってしまうこと。
いきなり買取してしまうと、安く売ることになりますが、買取保証なら最初に仲介の売却もチャレンジするため高値の売却も可能。
しかも、最後は必ず買取で買い取ってくれるので、いつまでも売却できないという問題も生じません。
特に急ぎではないけれども、売れない物件をなんとか処分したい人には、買取保証はオススメです。
買取保証については下記記事でさらに詳しく解説しています。
-
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不動産の売却を検討されている方は、「買取保証」という言葉を聞いたこともある方も多いともいます。 買取保証とは、不動産会社 ...
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まとめ
古い家付き土地の売却について解説してきました。
古い家付き土地の売却は、まず家を取り壊すべきかどうかの判断が重要です。
まずは「 HOME4U 」「 HOME’S売却査定
」や「 イエウール
」などの一括査定サイトを利用して
- 取壊さずに売却した場合の価格
- 更地価格
の2つの価格の査定をしてもらい、取り壊すべきかの判断をしてから売却に取り掛かりましょう。
また、家の解体費用については下記記事でさらに詳しく解説しています。
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