住宅ローンが返せなくなると、競売か任意売却かを選択してローン残債を一括返済することになります。
競売と任意売却には、それぞれメリットとデメリットがあり、向いている人と向いていない人も分かれます。
本来であれば競売の方が向いているのに任意売却を選択することで、苦労ばかりすることもあります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 不動産会社から任意売却を強く勧められているが、少し不安だ
- 債権者が多く、調整が難しい場合でも任意売却が良いのか知りたい
- 任意売却と競売の違いかいま一つ分からない
結論からすると、競売か任意売却を選択するには、その「違い」をしっかりと知ることが重要です。
そこで今回の記事では競売と「違い」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは競売と任意売却の違いを理解し、自分がどちらを選択すべきか判断できるようになります。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.競売と任意売却の違い
競売とは「ローン残債を返済する法的手段」の売却方法
最初に競売についてご紹介します。
競売とは、住宅ローンが払えなくなった場合に、抵当権のついている不動産を売却することによりローン残債を返済する「法的手段」
抵当権とは、住宅ローンを借りる際、土地と建物を担保に入れること
抵当権の話をすると、同じ人を色々な呼び名で呼ぶことになりますので、以下に整理します。
区分 | 貸す・借りる | 債権債務 | 抵当権 |
---|---|---|---|
銀行 | お金を貸す人 | 債権者 | 抵当権者 |
土地建物所有者 | お金を借りる人 | 債務者 | 抵当権設定者 |
お金を貸す銀行は、お金を回収する権利を持っている債権者であり、抵当権を実行できる抵当権者とも言います。
抵当権者は、債務者がお金を返せなくなった場合、抵当権を実行する権利を持っています。
抵当権を実行することを競売と呼ぶ
抵当権の実行を「競売」と呼びます。
競売は裁判所が債務者の不動産を入札にかけ、売却します。
これは抵当権者に認められた正式な権利です。
競売は抵当権という法的権利に基づく債権の回収方法です。
抵当権者は裁判所に競売の申立てを行うことで、競売が行われます。
競売は、国家権力(裁判所)が行う売却であり、ルールが厳格で、なおかつ、強硬手段になります。
手続きも厳格で時間がかかり、競売の申立てから競売の実行まで半年以上もかかります。
また債権者、債務者ともに競売のルールに従うしかなく、話し合いの余地がないというのが競売の特徴です。
それでは次に任意売却について見ていきます。
任意売却とは「競売によらない債権回収方法」
任意売却は、競売によらない債権回収方法
抵当権のついている不動産を売却することによってローン残債を返済するという点は同じです。
競売は、かつて、「占有屋」と呼ばれる競売を妨害する人たちが居たため、かつて、本来の債権回収の機能が全く果たされなかった時期が長く続いていました。
そのため、競売になると売却額が著しく低くなるめ、債務者に任意で不動産を売却してもらい、ローン残債を返済してもらうという方法が浸透しました。
それが「任意売却」です。
現在は、平成15年に民法が改正されたことから、「占有屋」は存在しなくなりました。
そのため競売も債権回収の手段として十分に機能するようになっています。
競売だから任意売却より安いということはなくなってきている
今では競売がきちんと本来の債権回収の機能を果たしていることから、売却価格が「競売の方が安く任意売却の方が高い」という時代ではなくなっています。
この点は多くの方が未だに誤解されています。
今は「競売だから安い」ということはありません。
今でも、結果的に競売の方が安くなったということはあり得ますが、競売だから「絶対に安い」ということではないことに注意しておく必要があります。
任意売却は法的な手段ではないため、そもそも「ルールが無い」という点が最大の特徴です。
債権者と債務者が合意をすれば、売却価格や買受人も自由に設定できます。
また売却額を債権者と債務者との間でどのように配分するかも決めることができます。
任意売却の特徴を一言で言うならば、「何でも自由」であるという点です。
それでは次に2つの最も大きな違いについて見ていきます。
競売と任意売却の大きな違いは自由度
かつて、競売と任意売却には、「売却価格」に明確な違いがありました。
平成15年の民法改正以前は、明らかに競売の方が安く、明らかに任意売却の方が高いという時代がありました。
ところが、今では価格には違いがありません。
競売は裁判所が運営する不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)で売却価格の情報公開が進んでいます。
BITの売却結果を見ていくと、競売の売却価格は思いのほか高いということが良く分かります。
市場価格とそん色のない価格で売却されている事例も多いです。
一方で、任意売却では売却価格の情報公開が行われていないため、高いのか安いのか分かりません。
任意売却は通常売却の80%程度の価格
任意売却では、売却価格は一般的に市場価格の80%程度と言われています。
任意売却の価格水準が昔のままだとすると、売却価格が上昇してきた競売の状況を鑑みれば、今では競売と任売客の価格が逆転している可能性は十分にあり得ます。
では、売却価格に明確な違いが無いとすると、両者の最大の違いは「自由度」であると言えます。
- 競売:法的な手続きであるため、期間や売却方法、売却額の配分等、全く融通が利かない
- 任意売却:全てが話合で決めることができるため、とても自由である
「自由」というのは素晴らしい響きのような気もしますが、逆に言えば、全て自分たちで決めなければいけないという煩わしさもあります。
債務者の状況によっては「自由だからありがたい」人もいれば、「自由過ぎて困る」という人もいます。
「自由」は必ずしも全ての人にメリットになるわけではありません。
そのため、競売か任意売却は、債務者自身の状況によって選択する必要があるのです。
任意売却する前にまずは通常売却を検討するべき
まずは任意売却や競売にする前に、通常の不動産売却で高く売ることを考えるべき。
不動産を高く売るなら、まずあなたの不動産を得意としている不動産会社を見つけることが大事になってきます。
なので、必ず複数の不動産会社に査定依頼をして相談をしてみましょう。
そんな時に便利になるのが不動産一括査定。
一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ
まずは「 すまいValue 」を使って、超大手不動産会社複数社に相談をしてみましょう。
また、NTTグループが運営する「 HOME4U 」を使って、中堅、地域密着の不動産会社に相談をしてみましょう。
複数社に相談しても通常売却ができないなら任意売却を検討する
ここまでやってみて、やっぱり通常の不動産売却では不可能と言われたら任意売却を検討すること。
任意売却は自主的に行うものであり、競売のようなルールはありません。
全てを話し合いで決めることができるという点が、任意売却の最大の特徴になります。
ここまで任売却と競売の違いについて見てきました。
違いも大切ですが、両者に共通する部分も知っておく必要があります。
そのため次に競売と任意売却の共通点について見ていきます。
2.競売と任意売却の2つの共通点
競売も任意売却も債権回収の1つの手段ですが、どちらを選んでも以下の2つは共通です。
- ブラックリストに名前が載る。
- 売却後に残った残債は返済する必要がある。
まず、競売も任意売却もブラックリストに載ります。
任意売却を選択したらブラックリストに載らないということはありません。
競売も任意売却も、住宅ローンの一括返済を求められたときに行う売却です。
住宅ローンの一括返済を求められる人というのは、既に3ヶ月以上住宅ローンの返済を滞納している人たちです。
実は、ブラックリストはこの住宅ローンの滞納時点で名前が掲載されてしまいます。
既にブラックリストに載っている人たちが任意売却や競売を行っているということになります。
競売や任意売却をしたからブラックリストに載るのではなく、住宅ローンを3ヶ月以上滞納したことで、ブラックリストに既に載っているのです。
また売却によってローン残債が完済しきれなかった場合、その残債は競売も任意売却も返済しなければなりません。
任意売却だとローン残債は返済しなくても良いと思っている人がいますが、それは違います。
競売でも任意売却でもローン残債は払います。実は競売では夜逃げが多くあります。
夜逃げされてしまうと、債権者は競売後、債務者と連絡が取れません。
こうなると、売却後のローン残債も回収できないというケースもあります。
債権者からすると、任意売却の方が、売却後のローン残債もしっかり回収できる確率が高いというのが実態です。
債権者にとっても、売却後の残債回収は、任意売却の方はやりやすいというメリットがあります。
任売却後の残債やその金利については下記記事で詳しく解説しています。
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以上、ここまで競売と任意売却の共通点ついて見てきました。
それでは次にそれぞれのメリットとデメリット・向いている人について見ていきます。
3.競売のメリットとデメリット・向いている人
競売の3つのメリット
競売のメリットは以下の3点です。
メリット1.債務者は何もしなくて良い
手続きは全て債権者で行うため、債務者は何もする必要がありません。
費用も競売による売却額の中から債権者が支払います。
メリット2.ルールが厳格である
売却額の各債権者への配分もルールが決まっており、揉めることはありません。
複数の債権者がいる人で調整が困難な場合は競売の方が向いています。
メリット3.時間がかかるため、今の家に住める時間が少し長い
自己破産をする人は売却後の残債も払う必要がなくなるため、少しでも長く住める競売の方がメリットはあります。
競売の3つのデメリット
競売のデメリットは以下の3点です。
デメリット1.入札での売却になり買受人を指定できない
購入者が誰になるか分からないため、売却後も今の家に住み続けたい人にとってはデメリットです。
デメリット2.情報がインターネット上に公開される
不動産競売物件情報サイトで所在や建物内部写真等も全て公開されるため、他人に知られてしまうというデメリットがあります。
夜逃げしても無理矢理中に入って写真を撮ります。
デメリット3.残債の取立も厳格である
事前に競売後の残債の返済方法を債権者と決めておくことができないため、競売後、残債に対してキツイ取立に見舞われる可能性があります。
競売が向いている人
競売は以下のような人が向いています。
自己破産を予定している人
自己破産をする人は、売却後の残債を気にする必要がないため、調整が煩雑な任に売却をわざわざ選ぶ理由がありません。
少しでも今の家に長く住める競売の方が、生活が立て直せる可能性があります。
ただし、自己破産をしても連帯保証人がいる場合は、連帯保証人には残債の取立が移ります。
そのため、自己破産をする場合は、連帯保証人に必ず同意を取っておく必要があります。
債権者が多い人
銀行以外に、消費者金融等からも借入を行っている人は、任意売却を行うと調整が難航します。
競売であれば、売却額の配分ルールが決まっており、話し合いや調整で苦労することはありません。
4.任意売却のメリットとデメリット・向いている人
任意売却のメリット
任意売却のメリットは以下の3つです。
メリット1.買受人を指定できる
買受人を指定できるのは任意売却の最大のデメリットです。
一括返済後も今の家に住み続けたい人にとっては、任意売却は大きなメリットになります。
メリット2.引越代をもらえる可能性がある
任意売却では売却額の配分も債権者と話し合いで決めることができます。
つまり、調整することで引越代程度を手元に残すことができます。
メリット3.売却後の残債の返済方法も話し合いで決めることができる
売却を実行する以前から、売却後に残る残債の返済方法についても決めておくことができます。
金融機関に窮状を訴えておくことで、緩い返済計画にすることが可能です。
任意売却後の残債の返済方法については下記に記載していますのでぜひご参照ください。
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任意売却のデメリット
任意売却のデメリットは以下の3つです。
デメリット1.債権者との話合や配分の調整が必要になる
債権者の中に、消費者金融などの声の大きい債権者がいると、売却額の配分等の調整に難航します。
ローン残債を返済しきれないときは、ハンコ代を要求されます。
任売却のハンコ代については下記記事で詳しく解説しています。
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デメリット2.悪徳業者による詐欺も存在する
任意売却では悪徳業者も登場してくるため、引っかかってしまうと、さらに損失が拡大してしまいます。
詐欺に会わないためにも、業者は債権者に紹介してもらうようにしてください。
任意売却の詐欺については、下記に記載しています。
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5.まとめ
競売と任意売却の違いと競売に向いている人・任売に向いている人を解説してきました。
競売も任意売却も、債務者の状態によって向き不向きが分かれます。
どちらが良いかを冷静に見極めてから判断するようにしましょう。