日本もグローバル化が進んでいますが、外国籍の人が何かをしようとすると手続きが大変なことが多いです。
そんな大変な手続きの一つに外国籍の方の不動産売却があります。
最近では中国や台湾などのアジアの投資家が日本の不動産を投資目的で購入しています。
彼らは値上りしたタイミングで不動産を売却するため、最近では外国籍の人による売却も増えています。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 外国籍ならではの不動産売却における特殊な手続きを知りたい
- 外国籍の人が不動産売却をする際のポイントを知りたい
- 海外に在住したまま不動産を売却するための手続きを知りたい
そこで今回の記事では「外国籍の人の不動産売却」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読めば、外国籍が不動産を売却するうえで必要となる特有の手続きを理解できます。
本記事のポイントまとめ
- 外国籍を持つ人が不動産売却をする場合、住民票と印鑑証明書の入手がポイント
- 一定の条件を満たすことで、不動産売却時の源泉徴収税を行う必要がなくなる
- 外国籍を持つ人が不動産売却するなら信頼できる不動産会社を見つける必要がある
※詳細は「6.信頼できるプロの不動産会社を見つけるのがオススメ」に解説しています。
日本に不動産を持つ外国籍の人は増えている
日本に住む外国人は増加傾向にあり、法務省の発表によると、令和4年6月末現在における在留外国人数は296万1,969人となり、過去最高となりました。
在留外国人以外にも訪日外国人数の数も年々増えており、アジアを中心とした富裕層等が投資対象として都心部のマンションを購入する事例が増えています。
外国籍の方の不動産売却の注意点は「登記」
外国籍の方も日本国内で買物をすることは自由です。
不動産も同様で、外国籍の人が日本の不動産を買ったり売ったりすることは自由にできます。
しかしながら不動産の場合、売買に伴い所有権の登記移転が発生します。
この所有権移転が通常のモノの売買とは異なる部分であり、外国籍の人の不動産売買ならではの問題点が生じます。
以下に個人が不動産を売却する際、登記に必要な書類を示します。
- 権利証または登記識別情報通知書
- 委任状(司法書士が作成するもの)
- 固定資産税評価証明書
- 住民票
- 印鑑証明書
これら書類は、外国籍でなくても必ず必要になります。
ポイントは住民票と印鑑証明書
ここで売主が外国籍の方の場合、「住民票」と「印鑑証明書」の入手がネックとなります。
場合によっては住民票や印鑑証明書の入手に半年以上もかかり、引渡が大幅に遅れる可能性もあります。
売買当事者が外国籍の方がいる場合は、登記必要書類を早めに集めるというのがポイント。
登記にやたらと時間がかかることを防ぐため、登記書類の早めの確認と早めの入手を心がけましょう。
以上、ここまで外国籍の方の不動産売却のポイントについて見てきました。
それでは外国籍の方の住民票及び印鑑証明書の取得方法について見ていきます。
外国籍の方が住民票・印鑑証明書の取得する方法と代替書類
一般的に外国籍の方は、在留資格などにより
- 中長期在留者等
- 中長期在留者等以外
- 海外在住
の3つに分類されます。
①中長期在留者等の住民票・印鑑証明書の取得方法
まず中長期在留者等とはどういう人たちかを見てみます。
本記事の中では、下表の人たちを「中長期在留者等」と略称することにします。
- 中長期在留者:日本に在留資格をもって在留する外国人であって、3ヶ月以下の在留期間が決定された人や短期滞在・外交・公用の在留資格が決定された人等以外の人を指します。
- 特別永住者:「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により定められた資格を有する人を指します。
- 一時庇護許可者:船舶等に乗っている外国人が難民の可能性がある場合などの要件を満たすときに一時庇護のための上陸の許可を受けた人を指します。
- 仮滞在許可者:不法滞在者が難民認定申請を行い、一定の要件を満たすときに仮に我が国に滞在することを許可された人を指します。
- 出生又は国籍喪失による経過滞在者:出生又は日本国籍の喪失により我が国に在留することとなった外国人を指します。
中長期在留者は、観光などの短期滞在者等を除いた、適法に3か月を超えて在留する外国人であって、市区町村区域内に住所を有する人たちです。
中長期在留者等の住民票
中長期在留者等のように合法的に日本に3か月以上滞在できる人たちは、日本人と同じように住民登録ができます。
以前は外国人登録証という身分証明書がありました。
平成25年に住民基本台帳法が改正された以降は住民票を作成できることになっています。
そのため、中長期在留者等の方たちであれば、住居地を届け出た市区町村の窓口へ住民票の申請を行うことで、外国人用の住民票をすぐに取得することが可能です。
中長期在留者等の印鑑証明書
また中長期在留者等のように、在日の外国人であれば、その住居を届け出た市区町村に印鑑を登録することができます。
よって印鑑証明書を登録している外国人であれば、印鑑証明書もすぐに取得することが可能です。
しかしながら、海外の多くの国はサインの文化であるため、外国籍の方は印鑑をあまり使用されません。
そのため実態としては印鑑証明書を登録している外国人は少数派です。
印鑑証明書を登録していない場合の措置については後述します。
②中長期在留者等以外の住民票・印鑑証明書の取得方法
ここでいう中長期在留者等以外の外国人とは、日本に入国している中長期在留者等以外の外国人を指します。
中長期在留者等以外の住民票
中長期在留者等以外の外国人は、そもそも住民票を登録できません。
日本に住所がないことになっているため、本国の住所を証明する書類が住民票に変わる代替書類となります。
具体的な住民票の代替書類としては、「その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書」があります。
住所の宣誓供述書とは、あらかじめ依頼者から本国の住所を聞いたものを宣誓供述書の形式にしておき、それにその国の所属公証人の認証を得たもの
また「在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書」でも住所を証する代替書類として扱えます。
ただし、大使館によって対応が異なるため、あらかじめ大使館領事部に住所の宣誓供述書の発行の可否を確認しておいた方が良いでしょう。
また、その外国人の本国の住民票のようなもの、つまり「官公署で発行する住所を証する書面(住民登録証明書)」も代替書類となります。
ただし、その書類が本当に住所を証明するものであるかの判断するのに時間がかかるため、実際にあまり用いられることはありません。
中長期在留者等以外の印鑑証明書
中長期在留者等以外の外国人は住所登録ができないため、そもそも印鑑証明書も登録できません。
そのため後述する印鑑証明書を登録していない場合の措置に該当します。
③海外在住者の住民票・印鑑証明書の取得方法
海外在住の外国人とは、日本に入国しておらず、日本の不動産を所有している外国人を指します。
海外在住者の住民票
海外在住の外国人は、当たり前ですが国内に住んでいないため、住民票はありません。
そのため、海外に実際に住んでいる住所の証明書類が必要となり、対応としては「中長期在留者等以外の外国人」と同じになります。
海外在住の外国人も「その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書」や「在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書」が住民票に代替する書類となります。
もしくは証明に時間がかかりますが「その国の官公署で発行する住所を証する書面(住民登録証明書)」も住民票の代替書類となります。
海外在住者の印鑑証明書
また印鑑証明書についても登録できないため、印鑑証明書を登録していない場合の措置となります。
印鑑証明書を登録していない場合の2つの代替書類
印鑑証明書を登録していない場合の措置としては、次の2つのいずれかの書類が代替書類となります。
- 当該国の在日大使館または本国の官憲によるサイン証明書
- 登記委任状に当該国の在日大使館の認証を受けた書類
実際には、後者のパターンで事前に司法書士に登記委任状を作成してもらい、売主である外国人が当該国の在日大使館において認証を受けることによって印鑑証明書の代替書類とすることが多いです。
また外国人が来日していない場合には、
- 「司法書士が事前に作成した宣誓供述書を現地公証人に署名の認証をしてもらった書類」
- 「本国の官憲が発行するサイン証明書」
が印鑑証明書の代替書類となります。
住民票・印鑑証明書の取得方法まとめ
記事内で紹介した、中長期在留者等、中長期在留者等以外、海外在住の3つの分類の住民票・印鑑証明書の扱いに関して表でまとめました。
分類 | 住民票 | 印鑑証明書 |
---|---|---|
中長期在留者等 | 住居地を届け出た市区町村の窓口へ住民票の申請が可能 | 住居を届け出た市区町村に印鑑登録が可能 |
中長期在留者等以外 | 本国の住所を証明する書類が住民票に変わる代替書類として使える。「在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書」でも住所を証する代替書類として使える。 | 「司法書士が事前に作成した宣誓供述書を現地公証人に署名の認証をしてもらった書類」 「本国の官憲が発行するサイン証明書」が代替書類として使える |
海外在住者 | 「その国の公証人の認証のある住所に関する宣誓供述書」や「在日の当該大使館領事部で認証された宣誓供述書」が住民票に代替する書類として使える | 「司法書士が事前に作成した宣誓供述書を現地公証人に署名の認証をしてもらった書類」 「本国の官憲が発行するサイン証明書」が代替書類として使える |
次に外国人を持つ人が不動産売却した際の税金の扱いについて見ていきましょう。
海外在住者が不動産売却した際の税金の扱い
海外在住の外国人が不動産売却した際、所得税の申告漏れを防ぐために、不動産の購入者が、所得税の源泉徴収相当額を税務署に支払う義務があります。
下記の条件を満たす場合は、源泉徴収を行う必要はありません。
- 不動産の譲渡対価(売買代金)が1億円以下
- 購入者が個人で、その不動産を「自己または親族の居住用」に供すること
この制度の源泉徴収税(所得税及び復興特別所得税)の税率は、譲渡対価(売買代金)の10.21%相当額です。
上記の条件を満たしていない不動産の購入者は、売買代金の支払いの際、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収し、対価の支払をした翌月10日までに税務署に支払う義務があります。
上記の上記を満たしていない海外在住の外国人は、売買代金から源泉徴収税額10.21%が控除された89.79%相当額が入金され、売却年の翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告書を税務署に提出する必要があります。
確定申告の税額が、源泉徴収税額>税額となる場合にはその差額につき還付が受けられ、源泉徴収税額<税額となる場合にはその差額を納付することになります。
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まとめ
外国籍の人が不動産を売却するときに必要な書類とその注意点について見てきました。
ポイントは登記必要書類の住民票と印鑑証明書の準備です。
外国人の滞在資格や印鑑証明の登録の有無に従い、適切な対応を行いましょう。