不動産投資をする上で、法人化した方が良いという話はだいぶ浸透してきました。
しかしながら、法人化にはデメリットもあるため、安易な法人化には注意が必要です。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 不動産投資のときは法人化すると良いって聞いたけど、どんなメリットがあるの?
- 法人化するには何に気を付けたらいいの?
- 法人化のデメリットはどのようなものがあるの?
そこでこの記事では、「法人による不動産投資」にフォーカスしてお伝えします。
この記事を読むことであなたは、法人化して不動産投資をする上での注意点について知ることができます。
法人による不動産投資とは
法人による不動産投資とは、新たな私的な会社を作り、その会社が不動産の所有者となって投資を行う不動産投資
法人による不動産投資は昔からできましたが、近年は、法人税の税率が個人の所得税率より下回ってきたため、法人による不動産投資が注目されるようになってきました。
全く目新しいものとうわけではなく、富裕層にとっては税率が逆転したことにより、法人による不動産投資のメリットが顕在化し、ブームとなっているという流れです。
また、ここでいう法人とは他の事業を行っている一般事業法人のことではありません。
富裕層の人の中には、会社経営者の人も多いですが、今の会社で不動産投資を行うのとは話が違います。
一般事業法人だと、通常、不動産購入の借入は設備資金扱いとなり融資期間が最長でも20年というのが通常です。
不動産投資で20年しか借りることができないと、毎月の返済額が大きくなり、逆に個人よりも不利となってしまいます。
一方で、他に事業を行っておらず、不動産投資のためだけに設立した限りなく個人に近い法人であれば、30年のような長期の融資を行ってくれる銀行も多いです。
このような不動産投資のためだけに設立した限りなく個人に近い法人のことを、プライベートカンパニーと呼びます。
プライベートカンパニーであれば、融資条件に個人と差はほとんどありません。
この記事で紹介する法人による不動産投資は、プライベートカンパニーを前提として話を進めます。
法人不動産投資の最大のメリットは「節税」
法人による不動産投資のメリットは、個人よりも法人の方が税率は低いという点です。
法人で不動産投資を行った方が節税になるという点が最大のメリットになります。
個人の所得税率は、所得が大きくなればなるほど、税率が上がる累進課税制度を採用しています。
所得と所得税率の関係は以下の通りです。
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
上記、所得税率の他、住民税が所得に対し一律に10%かかります。
そのため、所得が4,000万円超となると、所得税と住民税を合わせて55%の税率がかかることになります。
一流のプロ野球選手などは、収入の半分以上が税金で持っていかれる計算です。
それに対して、法人税の実効税率は、所得が800万円超であれば約35%、800万円以下であれば約25%です。
法人の所得とは、利益のことを指します。
利益が900万円を超えると、法人の方が税率は低く有利となります。
所得が多い人ほど、法人にした方が節税になるというのがメリットです。
法人による不動産投資の3つの注意点
法人による不動産投資をする際は、次の3点に注意する必要があります。
- 役員報酬を上げると税金が増える
- 調整しにくい役員報酬
- 会社設立費用がかかる
注意点1.役員報酬を上げると税金が増える
法人による不動産投資を行った場合、収入を自分のものにするには、役員報酬を上げることになりますが、役員報酬を上げてしまえば税金は増えるという点が注意点です。
法人が生み出す収入は、基本的には法人のお金なので、個人にお金を移すには、役員報酬という形で渡すことになります。
しかしながら、役員報酬を上げれば、個人の所得税が上がります。
また、法人でも法人税を支払います。
結局のところ、法人による不動産投資でも、個人にお金を移そうとすると、個人の所得税が上がり、なおかつ法人でも税金がかかるため、トータルで税金が高くなってしまいます。
これでは何のために、わざわざ法人で不動産投資をしたのか分からなくなります。
法人で不動産投資を行う以上、そのお金は法人の費用として使うというのが原則です。
例えば、法人で交際費という形で費用を使えば、法人のお金を使って食事をすることもできます。
法人は経費として認められる範囲が個人よりも広いため、法人にお金を貯めて、法人でお金を使ってこそ、初めて意味があるのです。
個人にお金を移動して、結局のところ税金を上げることだけは避けるようにしましょう。
注意点2.調整しにくい役員報酬
役員報酬は年に一度しか改定できないため、調整しにくいというデメリットがあります。
少な過ぎたと感じても、次の年の改定まで変動させることはできません。
正確に言えば、増額はできるのですが、増額しても損金算入(節税のための費用)とすることができないということになります。
それに対して、期中に減額することは可能です。
役員報酬を期中で増やすと、利益操作とみなされるため、期中の増額は費用として認められないことになります。
また、妻などを従業員として雇っている場合でも、生計を同じにしている従業員なら、役員報酬と同じ扱いとなります。
よって、同様に妻の給料を期中で増額することはできません。
役員報酬は上げてしまえば、個人の税金が上がりますが、低過ぎると全然自分でお金が使えなくなります。
役員報酬は、設定額が非常に難しく、かつ調整もしにくいというデメリットがあるのです。
注意点3.会社設立費用がかかる
プライベートカンパニーを作るには、設立費用も必要です。
会社の設立費用は、登記費用が一番大きいです。
登記費用は資本金の額に対して1,000分の7になります。
また、定款作成費用等も発生し、司法書士への依頼費用もかかります。
会社設立の費用とは少なく見積もっても30万円程度はかかりますので、十分にメリットとデメリットを理解した上で法人化を考えましょう。
メリットを発揮するなら相続対策として利用する
相続対策として法人による不動産投資を行うのであれば、大きな威力を発揮します。
そこでこの章では、法人による不動産投資が相続対策に向いている理由についてご紹介します。
メリット1.分割しやすくなる
法人による不動産投資を行うと、相続財産が分割しやすくなるというメリットがあります。
個人が法人を設立して不動産投資を行うと、相続対象となるのは不動産ではなく、法人の株式になります。
一方で、個人がそのまま不動産投資を行ってしまうと、相続対象となるのが不動産となります。
不動産は現金よりも相続税評価額を下げることになるため、不動産投資は相続税対策に適しています。
しかしながら、不動産は相続人間で平等に分けにくいというデメリットがあります。
例えば、相続財産が、相続税評価額が8,000万円のマンション1棟と、他には現金が2,000万円だけのようなケースを考えます。
相続人が3人いる場合、8,000万円のマンションを誰が相続するかが問題となります。
相続人のうち、誰か1人が8,000万円のマンションを引き継ぐとなると、残りの2,000万円を2人で分けることになります。
引き継いだ資産の額が、1人が8,000万円のマンション、残り2人がそれぞれ1,000万円ずつの現金となると、大きな不公平を生じてしまいます。
相続において、このような不公平は良く生じますが、その主たる原因は不動産にあります。
不動産は平等に分けにくい存在であるため、相続財産に不動産があることによって、相続が争族となってしまうことが良くあるのです。
それに対して、同じ不動産でも引き継ぐ財産が株式であれば話は別です。
例えば、8,000万円の1棟マンションはプライベートカンパニーで運用していたとします。
プライベートカンパニーの株数が300株だとすると、相続人3人の間で100株ずつ平等に分けることが可能となります。
相続で一番難しいことは、相続人間における遺産の分割です。
遺産の分割を容易にしてくれる法人は、ある意味、革命的な相続対策だといえます。
法人だと株を相続できるというメリットは、以前からありました。
しかしながら、以前は法人の方が個人よりも税率が高かったため、容易に法人による不動産投資ができませんでした。
現在は、法人の方が税率は低いため、この「分割のしやすさ」というメリットは使わない手はありません。
法人による不動産投資は、相続で一番難しい分割の問題を、いとも簡単に解決してくれるメリットがあるのです。
メリット2.資金移転ができる
法人による不動産投資を行うと、生前中から相続人に資金移転ができるというメリットがあります。
相続税は、現金で納めることが原則です。
不動産を相続した人が、もし現金を持っていなければ、不動産を売却して現金で税金を払わなければなりません。
例えば、ここでも相続財産が、相続税評価額が8,000万円のマンション1棟と、他には現金が2,000万円だけのようなケースを考えます。
相続人が3人いる場合、1人が8,000万円のマンション、残り2人がそれぞれ1,000万円ずつの現金を引き継いだ場合、8,000万円のマンションを引き継いだ相続人は納税が非常に厳しくなります。
8,000万円のマンションを引き継いだ相続人は、自分の貯金から相続税を払うことになります。
もし、相続人が貯金を持っていなければ、結局、マンションを売却することになります。
せっかく資産を守るために相続対策を行っても、相続人に現金がない場合には、不動産を売却せざるを得ないというケースが非常に多いのです。
そのため、相続人に対しては、相続の前に納税資金としての現金を移転しなければなりません。
個人で不動産投資を行ってしまうと、被相続人から相続人に対して現金を渡すには贈与を使うことになります。
贈与税のかからない範囲で贈与を繰り返すのであれば、毎年110万円までが限度です。
何千万円もする相続税を払うことを考えると、年間110万円の贈与では、とても追いつきません。
ところが、法人で不動産投資を行った場合には、相続人を役員とし、役員報酬という形でお金を移転することができます。
役員報酬であれば、贈与ではないため、上限なく資金を相続人に異動させることが可能です。
相続人に納税資金をスムーズに移せるという点でも、法人による不動産投資は非常にメリットがあるのです。
まとめ
法人化による不動産投資の注意点について見てきました。
法人による不動産投資は、相続対策にはメリットがありますが、その他にはそれほどメリットがあるわけではありません。
法人による不動産投資は設立資金も必要ですので、目的を明確にしたうえで検討するようにしましょう。