大量に情報があふれる時代の中、どうやって自分が売却する不動産を際立たせるか?その重要な役割を果たすのが「広告」です。
不動産売却の場合、広告そのものは不動産会社が行うため、自分ではコントロールできません。
ただし、規制の範囲内であれば「もっとこういう広告して欲しい」と要望することは可能。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 広告費って誰が負担するのか知りたい
- 不動産広告のルールが知りたい
- 売れる不動産の広告はどういうものか知りたい
- 不動産会社にどのような要望を伝えれば効果的なのか知りたい
まず広告費は基本的には不動産会社が負担します。
そして効果的な広告とは、
- 写真をたくさん載せること
- 物件のウィークポイントも書くこと
の2点が必要です。
今回の記事では不動産売却における「広告」にフォーカスして、どういう点に気をつければ不動産売却の成功確率をあげられるのかについてお伝えします。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.広告費は不動産会社が負担する
売却活動における「広告費」は不動産会社が負担
最初に広告費の費用負担について解説します。
不動産の売却を不動産会社に依頼すると、不動産会社はチラシの作成やポスティング、SUUMOなどのポータルサイトへの掲載等、広告宣伝活動を行います。
これには当然ながら費用が発生しています。
この費用は誰が負担するのでしょうか?
結論を言うと広告費は不動産会社が負担します。
不動産会社は仲介の成約をすると仲介手数料を受領しますが、仲介手数料にはこれらの広告費や営業マンの交通費、調査費用等が全て含まれています。
仲介とは不動産会社が買主を見つけてくれて、売り主であるあなたと買主の間を取り持ってくれる契約
そのため、不動産会社が不動産売却において別途広告費用を売主へ請求することは基本的にありません。
請求してきたら、「変だぞ?」と思ってください。
例外は特別依頼に係る費用の場合
ただし、不動産会社と締結する媒介契約の中に、通常「特別依頼に係る費用」という条文があり、以下のような記載がある場合が多いです。
特別依頼に係る費用) 第○○条 甲が乙に特別に依頼した広告の料金又は遠隔地への出張旅費は甲の負担と し、甲は、乙の請求に基づいて、その実費を支払わなければなりません。※甲は売主、乙は不動産会社
※出典:国土交通省「標準媒介契約約款」より
これは国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款にある条文ですが、普通に不動産会社と契約してもこの条文は含まれています。
特別に依頼した広告とは?
ここで言う「特別に依頼した広告」というのが曖昧です。
過去の判例では「大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金を意味するもの」とされています。
大手新聞の広告掲載と言えば、例えば日経新聞などでは、億単位の広告料もあります。
そのため、テレビコマーシャルして欲しいくらいの勢いで依頼しない限り「特別に依頼した広告」にはなりません。
念のため、媒介契約の中にこういう条文があるということを知っておいてください。
以上、ここまで広告費は不動産会社が負担するについて見てきました。
仲介手数料は広告費と大きく関わっていることが分かったと思います。
2.不動産会社に支払う「仲介手数料」の意味
仲介手数料は完全成功報酬
仲介手数料は、宅地建物取引業法の中で受領できる「上限」が決まっています。
仲介手数料は、取引額によって以下のように料率が異なります。
売却金額 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 取引額×5% |
200万円超400万円以下 | 取引額×4%+2万円 |
400万円超 | 取引額×3%+6万円 |
この仲介手数料ですが、大きな特徴として「完全成功報酬」という性質があります。
実際に売り手と買い手を繋げて、売買契約を成立させないと、金額をもらうことはできません。
不動産会社がどんなに頑張って広告をしたとしても、他の不動産会社が売買契約を決めてしまえば、今までかかった実費も請求することはできません。
一般媒介を依頼したときの費用
不動産会社へ仲介を依頼するときに締結する媒介契約には以下の3種類があります。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
他業者への重複依頼 | 〇 | × | × |
自己発見取引 | 〇 | 〇 | × |
有効期間 | 特に定め無し | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
依頼者への報告義務 | 特に定め無し | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
成約に向けての義務 | 努力義務 | 積極的努力義務 | 積極的努力義務 |
例えば、一般媒介契約では複数の不動産会社に売却の依頼が可能。
一般媒介で依頼すると、複数の不動産会社がそれぞれ広告を行います。
しかしながら、仲介手数料は成功報酬であるため、報酬を受領できるのは買主を決めた1社だけです。
その他の会社は、買主を決めることができなかったため、投じた広告宣伝費や交通費等を回収することはできません。
成約できなかった不動産会社からは、「広告費だけでもいただけませんでしょうか?」とはならないので、ご安心ください。

専任媒介と一般媒介の違い
筆者としては「一般媒介契約」で契約して、信頼できる不動産会社に複数社依頼することをオススメしています。
それでは次に広告掲載について禁止されていることについてみていきます。
3.不動産売却では「誇大広告」は禁止されている
不動産は高額な商品であるため、広告に関して様々な規制が設けられています。
宅地建物取引業の第32条には「誇大広告の禁止」、第33条には「広告開始時期の制限」が定められているほか、「不動産の表示に関する公正競争規約」という業界自主規制ルールもあります。
広告とはチラシ、ポスター、インターネット等、あらゆるものが規制の対象。
誇大広告禁止の中では、特に「実際のものよりも著しく優良、有利であると一般消費者に誤認されるような表示」について厳しく制限があります。
広告に使ってはいけないキーワード例
例えば、以下のようなキーワードを広告に使ってはいけません。
類型 | 例 |
---|---|
欠けるところが全くない 全く手落ちがないことを意味するよう用語 | 完全 完璧 絶対 万全 |
競争するものよりも 優位に立つことを意味する用語 | 日本一 日本初 業界一 超 当社だけ 他に類を見ない 抜群 |
一定の基準により選別されたことを 意味する用語 | 特選 厳選 |
最上級を意味する用語 | 最高 最高級 極 特級 |
著しく安いという 印象を与える用語 | 買得 掘出 土地値 格安 投売り 破格 特安 激安 バーゲンセール 安値 |
これらの用語は、スーパーのチラシ広告などで毎日見るような単語です。
ところが不動産の広告では、このような表現も厳しく規制されており、使えません。
以上、ここまで誇大広告の禁止について見てきました。
それでは次に気になる高く売却できる広告のポイントについて見ていきましょう。
4.不動産を魅力的に見せる広告のポイント
購入者のアンケートより分析
誇大広告の禁止のため、不動産会社へ「広告に眺望最高とか、お手入れ抜群とか、もっと書いてよ」という依頼はできないということが分かりました。
それではどのような依頼が良いのでしょか。
そのヒントの一つに「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査結果」というものがあります。
このアンケートでは、購入希望者向けの売買仲介で不動産会社が選ばれるポイントについてアンケートをしたものです。
「高く売れるため」のアンケートではありませんが、結果を良く見ると広告に関するヒントが隠されています。

不動産情報サイト利用者意識アンケート調査結果2015より抜粋
アンケート結果では、特に「物件写真の点数が多い」と「物件のウィークポイント(マイナス情報の開示)が書かれている」という点が上位に来ています。
これはまさに購入希望者が欲しい情報を意味しています。
購入者が欲しい情報は「物件写真」「ウィークポイント」
購入希望者はじっくりと品定めをしています。
そのため多くの写真が載っていると大変参考になります。
また良い点だけでなく、きちんとウィークポイントも掲載されていると、広告としての信用力が上がります。
内覧して初めてウィークポイントを知って、見送られるよりも、ウィークポイントを知ったうえで内覧しに来るお客様の方が、成約の確度が格段に向上します。
アンケートによると、特に女性のお客様はウィークポイントの記載を求めています。
そのため、広告を行うにあたって不動産会社には以下の点を指示してください。
- 写真はできるだけ多く掲載してください
- ウィークポイントはハッキリ書いていただいて構いません
この2点を指示するだけでも、不動産会社の意識がかなり変わるため、「売れる広告」へと変わります。
お客様は「良く見せる」広告ではなく、「真実を伝える」広告を求めているのです。
そして何よりも広告に強い信頼できる不動産会社を見つけることです。
5.広告に強い信頼できる不動産会社を見つける方法

不動産売却で大事なことは、「信頼できる不動産会社を探せるか」。
不動産会社によって、得意としている不動産も異なりますし、この地域は得意・不得意などあります。
中には売却金額に数百万、数千万の差が出ることも。
ただ、あなただけの力でそのような不動産会社に出会えることは難しいと思います。
不動産会社を1社1社回って話を聞いていても、逆に迷うことになり時間ばかりが過ぎてしまいます。
そこで筆者がオススメしているのが「不動産一括査定サービス(サイト)」です。
一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ

不動産一括査定のオススメは 「すまいValue」「HOME4U」
不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。
その中でも
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「 SRE不動産(※旧ソニー不動産)
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
の4つを特にオススメしています。
筆者も不動産一括査定(「 すまいValue 」「 HOME4U
」「 イエウール
」)を利用しました。
下記は「 すまいValue 」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。
とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手
下記表が「不動産売買の仲介件数が多い不動産会社」が「どこの不動産一括査定に参加しているのか」を調査した結果です。


不動産一括査定×不動産会社のマッチング表


不動産売買は超大手に偏っている
「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」が超大手と言われる不動産会社です。
超大手不動産会社3社で不動産仲介の約30%のシェアを持っています。つまり、不動産売買した人の中で3人に1人は、「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」のどこかに仲介を依頼していることになります。
それだけ日本の不動産売買は、超大手不動産会社に偏っているということ。
超大手不動産会社は販売活動に強く、豊富な買主を持っており、売りやすいとも言えます。
そしてこの3社に唯一依頼できるのが「 すまいValue 」です。なので「すまいValue」は外せません。
超大手不動産会社だけではなく大手・中堅・地域密着の会社とも比較する
ただ、超大手だけで満足してはダメ。不動産業界は特殊な縄張りなどもあり、A地域はX不動産が強い、B地域はY不動産が強いということが存在します。
また、超大手になるほど両手仲介の比率が高まります。
両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと。買主と売主から手数料をもらえるため、利益相反の関係になる。アメリカは両手仲介は禁止されています。
売却を成功するためにも超大手不動産会社と併せて大手・中堅や地域密着の不動産会社も比較することをオススメします。
その場合は下記のような使い分けがいいでしょう。
不動産一括査定の賢い使い方
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。


一括査定 | 机上査定 | 備考欄 |
---|---|---|
すまいValue | 〇 | 〇 |
HOME4U | 〇 | 〇 |
イエウール | 〇 | |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | 〇 | 〇 |
6.まとめ
不動産売却における広告費の負担と高く売却できる広告のポイントを紹介してきました。
効果的な広告にするには
- 写真をたくさん載せること
- 物件のウィークポイントも書く
ことの2点です。
また、何よりも広告に強い信頼できる不動産会社を見つけることが大事です。
一括査定サイトを使って複数社に相談してみましょう。
一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
-
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