限界集落とは、人口の50%超が65歳以上の過疎地であり、冠婚葬祭や田んぼ・生活道路の管理など、社会的な共同生活の維持が困難な状況にある集落のこと
東京一極集中が続く中、地域格差が社会問題となっており、平成19年頃から「限界集落」という言葉が注目されています。
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- 限界集落って何?
- 限界集落になるとどうなるの?
- 限界集落ってどこ?
そこで今回の記事では「限界集落」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは限界集落について理解するとともに、限界集落の不動産事情についても知ることができます。
限界集落とは?発生要因や問題点
限界集落の定義
限界集落とは、主に山間部の過疎地で、人口の50%超が65歳以上であり、農作業や、冠婚葬祭などの集落としての共同体の機能を維持することが限界に近づきつつある集落のこと
つまり高齢者ばかり住んでいて、街そのものが維持できなくなってきている集落のことを指します。
限界集落と言う言葉は、当時、高知大学教授であった社会学者の大野晃教授によって提唱されたのが始まりです。
限界集落という表現には、かなり批判があったようですが、深刻な実態を知って欲しいとのことで、教授はあえて限界集落と言う言葉を使い続けたとも言われています。
大野教授が研究されている社会学とは、ざっくり言うと、今の社会現象を捉え、今後世の中がどのように変わっていくかを研究する学問です。
大野教授は山村集落を以下のように分類しています。
集落区分 | 定義 |
---|---|
存続集落 | 55歳未満が過半で、担い手が確保されている集落 |
準限界集落 | 55歳以上が過半で、近い将来に担い手確保困難が予想される集落 |
限界集落 | 65歳以上が過半で、担い手の確保と社会的共同生活の維持が困難となった集落 |
消滅集落 | 人口・戸数がゼロとなった集落 |
既存の集落は、高齢化が進むと、存続集落からやがて消滅集落へと向かうことを予想しています。
限界集落とは今の形態にとどまるというわけではなく、やがて消滅集落へと向かう途中経過の段階にある集落ということになります。
また今は限界集落ではなくても、準限界集落であれば、いずれ限界集落に向かう可能性はあるということです。
限界集落とは、社会学的に集落が消滅に至るまでの一つの過程を表した形態という見方もすることができます。
以上、ここまで限界集落の定義について見てきました。
ではなぜ限界集落が発生してしまうのでしょうか。
次に限界集落の発生原因について見ていきます。
限界集落の発生原因は少子高齢化
元々、限界集落は山間部の村を中心に提唱されていました。
当時は林業の衰退も原因の1つとして考えられていました。
しかしながら、現在、全国で増え続けている限界集落は、必ずしも林業の衰退が原因とはなっていません。
全国の地方では、様々な産業が衰退しており、少子高齢化が進んでいます。
働く場がなく、子供が育てにくい環境であるため、若者が集落を出ていく状況が続いています。
一方で、医療の発達から、平均寿命も延びています。
また結婚しない若者も増えています。
全国的に「死なない・生まない」という状況になっており、少子高齢化が加速化しています。
近年では、限界集落はもはや郊外の問題だけではなく、都市部にも類似現象が見られるようになってきました。
東京都新宿区の戸山団地は限界集落となっていることが判明し、一時話題にもなりました。
今後は、全国の主要都市でも同様の現象が見られることも予想されます。
以上、ここまで限界集落の発生原因について見てきました。
では限界集落となるとどのような問題点が生じるのでしょうか。
そこで次に限界集落の問題点について解説します。
限界集落は田舎だけの問題ではない
限界集落となると、街そのものが維持できなくなっていきます。
人口が少ないため、道路や公共の上下水道といったインフラの維持も難しくなります。
限界集落に限らず、人口が減少している自治体では、水道料金等の公共料金が割高になっているという現象が見られ始めています。
働く場所も少なく、また公共料金も高いということであれば、ますます住みにくくなります。
住みにくさが増幅してしまうと、加速度的に消滅集落へ向かう可能性が高まります。
さらに、限界集落から人がどんどん東京に集まれば、東京の地価がますます上がり、東京も住みにくくなります。
東京も住みにくくなるということを考えると、限界集落はもはや地方の問題とは言えず、全国の問題とも言えるのです。
以上、ここまで限界集落の問題点について見てきました。
では、限界集落は不動産のどのような影響を与えていくのでしょうか。
まず人口と不動産価値との関係についてご紹介します。
人口と不動産価値との関係
不動産価値は人口と密接な関係があります。
東京は人口が一極集中しているがために、土地価格は一番高いです。
東京は土地価格が高過ぎるため、不動産が買えない人がいっぱいいます。
買えない人は、不動産を借りることになりますので、東京は賃貸需要も一番高いです。
一方で、人口の少ない過疎地では、土地価格が非常に安いです。
借りるくらいなら買った方が安いため、賃貸需要はほとんどありません。
人口がある程度いるエリアであれば、購入需要はわずかに存在します。
そのため、貸すことはできなくても、売ることはできます。
さらに人口がほとんど存在しないようなエリアでは、購入需要も減退します。
エリアによっては売却すらできません。
近年はこのような売却ができないエリアも全国で見られるようになってきました。
多少なりとも購入する人がいない限り、坪1万円以上の値段はつきません。
以上、ここまで人口と不動産価値との関係について見てきました。
では限界集落の不動産価格の不動産価格はどの程度なのでしょうか。
限界集落の不動産価格
令和2年の国税調査によると、国内の限界集落は下表の18町村が該当します。
各限界集落の令和2年の地価公示価格の平均は、以下のようになります。
No. | 限界集落 | 地価公示価格(令和2年) | 前年比 |
---|---|---|---|
1 | 青森県東津軽郡今別町 | 22,589円/坪 | ▲ 4.43% |
2 | 福島県大沼郡三島町 | 16,917円/坪 | ▲ 1.02% |
3 | 福島県大沼郡金山町 | 18,966円/坪 | ▲ 1.54% |
4 | 福島県大沼郡昭和村 | 11,008円/坪 | ▲ 0.40% |
5 | 群馬県甘楽郡南牧村 | 19,107円/坪 | ▲ 3.75% |
6 | 群馬県多野郡神流町 | 29,752円/坪 | ▲ 3.12% |
7 | 長野県下伊那郡天龍村 | 16,925円/坪 | ▲ 2.10% |
8 | 長野県下水内郡栄村 | 12,892円/坪 | ▲ 2.01% |
9 | 長野県下伊那郡大鹿村 | 6,975円/坪 | ▲ 1.40% |
10 | 奈良県吉野郡川上村 | 33,355円/坪 | ▲ 1.66% |
11 | 奈良県宇陀郡御杖村 | 17,950円/坪 | ▲ 1.99% |
12 | 奈良県吉野郡東吉野村 | 33,212円/坪 | ▲ 2.40% |
13 | 和歌山県東牟婁郡古座川町 | 36,242円/坪 | 86.13% |
14 | 徳島県勝浦郡上勝町 | 21,179円/坪 | ▲ 2.34% |
15 | 高知県長岡郡大豊町 | 48,429円/坪 | ▲ 1.18% |
16 | 高知県吾川郡仁淀川町 | 37,242円/坪 | ▲ 1.26% |
17 | 山口県熊毛郡上関町 | 52,314円/坪 | ▲ 4.24% |
18 | 山口県大島郡周防大島町 | 55,456円/坪 | ▲ 1.13% |
平均 | 27,251円/坪 | ▲ 1.95% |
令和2年においては、全国の限界集落の平均地価は、坪当たり27,251円ということになります。
長野県下伊那郡大鹿村では坪6,975円となっており、坪単価が1万円を割り込んでいますが、その他の町村は軒並み坪1万円を超えています。
山口県大島郡周防大島町に至っては、坪55,456円もしています。
正直な感想を言うと、限界集落と言っても、意外と土地価格が高いというのが印象です。
ちなみに全国には、もっと地価の価格が低い町村があります。
令和2年の地価公示価格のワースト5は以下の通りです。
No. | 限界集落 | 地価公示価格(令和2年) | 前年比 |
---|---|---|---|
1 | 鹿児島県鹿児島郡十島村 | 4,958円/坪 | 0.00% |
2 | 沖縄県島尻郡渡名喜村 | 4,991円/坪 | ▲ 0.01% |
3 | 沖縄県島尻郡北大東村 | 5,057円/坪 | 0.00% |
4 | 北海道紋別郡西興部村 | 5,289円/坪 | 0.00% |
5 | 北海道中川郡音威子府村 | 5,338円/坪 | ▲ 0.02% |
上表を見ると、全国の地価ワースト5の中に、限界集落は一つも入っていません。
長野県下伊那郡大鹿村であってもワースト8位となっています。
「限界集落イコール不動産価格は低い」という構図には必ずしもなっていないことになります。
このように限界集落の土地価格が意外と高いというギャップが存在する理由としては、限界集落の定義にあります。
限界集落の定義は、単純に「人口の50%超が65歳以上」という形で区切っているため、その人口密度や人口の数とは無関係に定義されています。
例えば、限界集落でも地価が55,456円/坪もする山口県大島郡周防大島町では、人口が17,199人います。
それに対して、地価ワースト1位の鹿児島県鹿児島郡十島村では、人口が756人しかいません。
人口から考えても経済規模は明らかに山口県大島郡周防大島町の方が大きいため、結果的に土地価格も山口県大島郡周防大島町の方が高いということになっています。
以上、限界集落の不動産価格について見てきました。
では、限界集落のようなところで不動産を売却するにはどのようにしたら良いのでしょうか。
限界集落での不動産売却
限界集落の土地価格は、長野県下伊那郡大鹿村を除き、坪1万円を超えていました。
相場が坪1万円を超えているようなエリアは、なんとなくですが、薄っすらと不動産市場が存在しています。
そのため、絶対に不動産が売却できないようなエリアではありません。
坪1万円を超えているようなエリアであれば、適正価格で値段を設定し、じっくり売却活動を行えば、きちんと売却することは可能です。
ただし、地下の低いエリアでは、不動産会社が受領できる仲介手数料額が少ないため、不動産会社が熱心に売却活用をしてくれないということがあるのも事実です。
このような弊害もあり、宅地建物取引業法の改正により、平成30年1月1日以降、不動産の価格が400万円以下の物件に関しては、不動産会社は仲介手数料に加え、「現地調査等の費用の相当額」も受領することができるようになりました。
法改正では、「仲介手数料+現地調査等の費用の相当額」の合計額にも上限が設けられており、その金額は税抜18万円を超えないものとされています。
ちなみに不動産会社が受領できる仲介手数料は、取引額に応じて以下のように決まっています。
取引額※1(売買金額) | 仲介手数料の上限額(税抜きの速算式) |
---|---|
200万円以下 | 5%(18万円※2) |
200万円超から400万円以下 | 4%+2万円(18万円※2) |
400万円超 | 3%+6万円 |
※1.取引額は、物件の本体価格をいい、消費税を含まない価格を指します。
※2.空き家などの現地調査が必要な取引の場合(2018年より施行 出典:国土交通省より)
例えば、今までは坪1万円で60坪の土地を売却すると、取引額は60万円であるため、受領できる仲介手数料はわずか3万円(60万円×5%)でした。
3万円しかもらえなければ、不動産会社は完全に赤字です。
ところが、このような土地でも不動産会社は最大で18万円の手数料をもらえるようになります。
売主にとっては、不動産会社へ支払う費用が高くなってしまいますが、一方で不動産会社のやる気が出る環境にはなりました。
よって、今後は不動産会社の対応も変わってくることが期待されます。
不動産会社のやる気を出させ、上手く売却活動を進めるようにしましょう。
「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」などの不動産一括査定を利用すれば、やる気のある不動産会社を見つけることができますのでオススメです。
まとめ
限界集落について解説してきました。
限界集落は、消滅集落へと向かう途中経過の集落になります。ただ、年齢構成割合だけで定義されているため、不動産価格は意外と高いです。
限界集落で不動産を売却する場合は、仲介手数料の他、現地調査等の費用も準備した上で売却するようにしましょう。