家を売却する際は、司法書士に登記の変更を依頼します。
普段、司法書士に依頼するようなことはないため、不動産売却によって初めて司法書士の存在を知る方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は家の売却における「司法書士の役目と金額の目安」についてフォーカスしてお伝えいたします。
併せて、司法書士に依頼せず家を売却する方法についてもご紹介します。
ただし、基本的によほど詳しくない限りは司法書士に依頼した方が良いというのが筆者の見解です。
この記事を読むことで、あなたは司法書士の役割を理解し、司法書士への依頼に必要性を判断することができるようになるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
不動産売却時の司法書士の仕事は登記
不動産を売却を行う際の司法書士の役割をご存知でしょうか?
本章では司法書士のメイン役割でもある登記についてお伝えします。
不動産登記とは不動産の権利関係を明らかにする証明書
最初に、不動産登記について解説します。
家は居住していても、所有者として居住しているのか、賃借人として居住しているのか、第三者には分かりません。
家は占有しているという状態だけでは、本当の所有関係がどのようになっているのか、当事者以外の第三者には分からないのが通常です。
また家を担保にお金を借りようとしても、担保物件であることを記録するところがなければ、お金を貸した人は安心できません。
そこで国が登記所(法務局)に不動産登記記録という公の登記記録を備え、登記記録に物理的な現況や権利関係について登記することを認めました。
そうして取引の安全を図ることにしたのが、不動産の登記制度です。
家売却の際には引渡しと同時に登記の変更を行います。
登記記録は、原則として1筆の土地または1個の建物の単位で構成されます。
登記により第三者への対抗力が発生する
登記は行うことによって第三者への対抗力が発生します。
対抗力とは、当事者以外の第三者に対しても、その権利を主張できることをいい、第三者がその権利を認めないというときは、最終的に裁判によってその権利が保護される性質のもの
登記の中心的な効力は、AさんからBさんへ売却された場合、その権利の変動を当事者以外の第三者にも主張する根拠を持つというところにあります。
登記を行うと登記簿謄本が変更される
登記を行うと登記簿謄本が変更修正されます。
登記簿謄本は、売買などの権利の移動を公示するもので、登記記録の「甲区」または「乙区」になされます。
この権利に関する登記は、所有権の移転や地役権、地上権、抵当権の設定、変更、抹消などのときに行われるもので、不動産登記の中核をなすものとなります。
司法書士は登記の代理人
登記は、売主と買主が共同でこれを行うのが原則ですが、この登記申請を双方の代理人として行ってくれる人が司法書士となります。
登記は、当事者が共同で登記所に申請するのが原則。
ただし、登記申請に必要な書類の作成や確認には専門的な知識が必要なことから、登記の専門家である司法書士に必要書類の確認および登記申請の委任をするのが通常です。
司法書士の選定は、基本的に買主や買主が借入を行う金融機関が手配するのが一般的です。
以上、ここまで司法書士の役割について見てきました。
それでは次に司法書士へ登記を依頼した時の金額の目安についてご紹介します。
司法書士に登記依頼をした時の金額の目安
家の売却においては、売主は抵当権の抹消の登記費用が発生します。
一方で、買主は所有権移転及び抵当権設定の登記費用が発生します。
登記費用の中には、それぞれ
- 登録免許税
- 司法書士に対する費用
- 登記完了後の登記事項証明の取得費用
が含まれます。
売主の方では抵当権抹消登記手続きの代理業務として司法書士に対する費用が発生します。
日本司法書士連合会によれば、土地1筆及び建物1棟の抵当意見抹消費用の平均値は関東地区では14,476円となっています。
全国の中では司法書士費用は、東北地区が12,643円と最も低く、近畿地区が16,746円と最も高くなっています。
登記費用
- 抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。(※土地1筆と建物1棟の場合には、2,000円となります。)
- 登記完了後の登記事項証明の取得費用は書面請求の場合は不動産1個につき600円です。(※土地1筆と建物1棟の場合には、1,200円となります。)
よって家の売却において、売主が負担する登記費用はまとめると以下のようになります。
項目 | 金額(土地1筆と建物1棟の場合) |
---|---|
①登録免許税 | 2,000円 |
②司法書士に対する費用 | 14,476円(関東地区) |
③登記完了後の登記事項証明の取得費用 | 1,200円 |
合計 | 17,676円 |
以上、ここまで不動産売却における登記費用の目安について見てきました。
それでは次に登記に必要な書類について見ていきましょう。
不動産登記に必要な書類
家の売却の際に、売主側で用意する登記に必要な書類は以下のものになります。
書類名 | 備考 |
---|---|
権利証または登記識別情報 | 登記識別情報とは、登記名義人を識別することができる書類で権利証に代わるものです。 住宅ローンを設定している場合は、金融機関が保管しているケースが多いです。 尚、権利証は平成17年3月に登記済証制度が廃止されたため、それ以降の物件は権利証が登記識別情報となります。 |
委任状 | 司法書士が代理で登記を申請する場合に使います。 委任状の書面は司法書士の方で準備します。 |
住民票 | 住所を証明するために必要な書類となります。 住所の変遷が住民票で確認できない場合は、戸籍の附票が必要となります。 |
印鑑証明書 | 登記申請日前3ヶ月以内に発行されたものを用意します。 印鑑証明書とは別に、「実印」も必要となります。 |
固定資産税評価証明書 | 買主の登録免許税の税額算出のために必要な書類となります。 売主側で用意します。 |
本人確認書類 | 司法書士が本人確認のために使用する書類です。 運転免許証やパスポートなど。 |
抵当権抹消書類 | 金融機関が作成します。 |
引渡当日は、登記必要書類が揃っていることが前提です。
不動産会社に仲介を依頼している場合には、事前に書類の確認があることが通常です。
不動産会社を使わない場合には、事前に書類に漏れがないかどうか、司法書士に確認してもらいましょう。
以上、ここまで登記に必要な書類について見てきました。
それでは次に司法書士を使わずに売買できるケースについて見ていきましょう。
司法書士を使わずに売買できるケース
登記の申請について、不動産登記法では、不動産の権利に関する登記の手続きについては共同申請主義の原則を採用しています。
つまり登記は、登記をしようとする当事者が共同申請をすることにより行います。
つまり、売主と買主が共同で申請することが本来の登記と言えるのです。
法の主旨からすると、司法書士に代理で頼むことは、むしろイレギュラーな形とも考えられます。
売主と買主が直接窓口に出向き登記申請を行える
そのため登記を行う法務局では、売主と買主が直接窓口に出向いても、登記を受け付けてくれます。
法務局には登記官と呼ばれる公務員がいます。
売主と買主で、共同で出向けば、必要書類や手続きなどを登記官が親切に教えてくれます。
司法書士費用を節約したい人は自力での登記をチャレンジしてみるもの良いでしょう。
抵当権が付いていない不動産であれば自力で行える
司法書士を使わずに、自力で登記を行う場合は、抵当権がついていない不動産であれば、自力で出来る可能性はあります。
抵当権がついている物件の場合、登記のために金融機関から抵当権抹消書類などを取得する必要があります。
金融機関は、通常、素人による移転登記手続きを嫌がりますので、司法書士を外しての登記は難しいと言えるでしょう。
また登記は売主と買主の共同で行う必要があるため、買主も良く知っている人であれば、やりやすいです。
例えば、親族間売買や親族・友人への売却、隣地所有者への売却など、買主と協力できる関係の売買であれば、自力の共同申請による登記も行うことができるでしょう。
まとめ
家を売却する際の司法書士の役目と金額目安についてみてきました。
司法書士は必ずしも使わなければならない存在ではないですが、手続きを滞りなく進めるには必要不可欠な存在です。
基本的には不動産会社の方で手配もしてもらえます。
金額が概ね妥当であれば、スムーズに売却を進めるためにも、依頼した方が良いでしょう。