学校法人から土地の購入を打診されることがたまにあります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 通常の売却と学校法人へ売却の違いはあるんだろうか?
- 学校建設のために土地収用された場合、税金を納めなければいけないのだろうか?
- 売却ではなく、寄付をした場合はどうなるのだろうか?
そこで今回の記事では、「学校法人への不動産売却」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは通常の売却と学校法人への売却の違いを理解し、節税制度も知ることができます。
そもそも学校法人とは
学校法人は私立学校法に基づき、私立学校を設置運営するための法人
今でこそ、学校というものは、独立した存在。
元々、教育というのは歴史的に見てボランティアで行われていたものと言えます。
例えば、江戸時代の教育の場と言えば「寺子屋」です。
寺子屋では、僧侶や神職が読み方やそろばんなどを教えていました。
寺子屋のような教育機関は日本だけではありません。
ヨーロッパなどでは、教会が同様の役割を果たしていました。
教師は聖職というイメージが強いのは、このような背景があるからでしょう。
教育とは、歴史的にも世界的にも、お寺や教会等が中心となって行ってきた事業。
本来、公益性の高いものなのです。
そのため、学校法人は税法上の公益法人の一つとなっています。
公益法人には、学校法人の他、宗教法人や社会福祉法人、企業年金基金、商工会議所等などが含まれます。
これらの法人は、お金儲けを主たる目的としていない法人と言えます。
以上、ここまで学校法人について見てきました。
それでは次に売却する上で知っておかなければ損する学校法人の課税優遇措置について見ていきましょう。
学校法人の課税優遇措置
学校法人は公益性の高い教育事業を行っているため、様々な課税優遇措置を有しています。
ここでは学校法人の課税優遇措置について、特に不動産に関するものを中心にお話しします。
学校法人の所有する不動産の中で、直接保育又は教育の用に供する不動産については、不動産を購入したときに生じる不動産取得税と登録免許税は非課税となります。
また不動産を保有しているときに係る固定資産税も、直接保育又は教育の用に供する不動産については非課税です。
さらに不動産の売却に関しては、収益事業委に属する固定資産を売却する場合以外については非課税となります。
このため、学校法人は、直接保育又は教育の用に供する不動産については、買っても非課税、持っても非課税、売っても非課税ということになります。
ただし、収益事業に係る不動産等の直接保育又は教育の用に供していない不動産に関しては、不動産取得税や登録免許税、固定資産税、売却益に係る法人税は課税対象となります。
このように学校法人が不動産に関して非課税だらけなのは、学校法人というのは、教育という崇高な公益事業を行っているためということが言えます。
一方で、個人の方が学校法人に学校用地を売却した場合、やはり崇高な公益事業へ大きな協力をしたことにもなります。
そのような方には、他の人と同じような課税がされるのでしょうか。
そこで次に気になる学校法人へ不動産を売却する場合の税金について見ていきましょう。
学校法人へ不動産を売却する場合の税金
学校法人は不動産に関して非課税だらけ。
学校法人へ不動産を売却した人が他の人と同様に課税を受けては少し不公平です。
まず、不動産を売却したときの税金について、基本的なことを解説します。
個人が不動産売却をしたときの税金
個人が不動産を売却した場合の所得税は、以下の式で表される所得税が発生します。
所得税 = 課税譲渡所得 × 税率
ここで、課税譲渡所得とは売却額ではありません。
課税譲渡所得とは、以下の式で表される売却益を指します。
譲渡所得 = 譲渡価額(売却額)-取得費(購入額)-譲渡費用(売却に掛かった経費)
※取得費とは土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額
※譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用
取得費とは、売却した不動産を購入したときの昔の金額。ただし、建物は減価償却後の価格です。
また譲渡費用とは、測量費や仲介手数料等の売却に要した費用です。
収用等に係る5,000万円の特別控除が受けられる
しかしながら、学校法人への不動産売却のように、公共事業へ不動産を売却した人に他の人と同様に所得税を課してしまうのは、不公平です。
また税金が安くなる特典を付けてあげないと、そもそも公共事業に協力する人が減ってしまいます。
そこで、国としては、このような公共事業のために土地を売却した場合に関しては、減税となる特例政策を設けています。
その特例は、「収用等に係る5,000万円の特別控除」です。
この特例を適用すると、以下のように課税譲渡所得を5,000万円減額することができます。
課税譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 5,000万円
収用等に係る5,000万円の特別控除を適用すれば、5,000万円以上の売却益が出ない限り、課税譲渡所得がプラスにならないため、所得税が発生しないということになります。
特別控除の適用要件
この特例は、原則として土地収用法の手続きによって土地が収用される場合、適用されることとなります。
学校法人の学校用地取得は、土地収用制度の適用を受けることができます。
そのため、学校法人への土地売却が、単なる土地売買ではなく土地収用法による収用という形となると、収用等に係る5,000万円の特別控除の適用が受けられます。
高等学校や幼稚園であれば特別控除が受けられる
ただし、学校法人に関しては、例外規定もあります。
学校法人への土地売買が、土地収用法でなければならないとすると、少し面倒な話となります。
そこで、学校法人の設置に係る高等学校及び幼稚園の敷地のための土地売却であれば、例外的に土地収用法による事業認定がなくても収用等に係る5,000万円の特別控除の特例を受けることができます。
例えば、ある学校法人が、幼稚園の敷地としてあなたの土地を購入したいという申出があれば、5,000万円の特別控除は適用できるという話になります。
特例を受けるための注意点
実際に、収用等に係る5,000万円の特別控除の適用を受けようとする場合には、売却する土地の所在地の税務署と事前に協議することが必要です。
適用が受けられるかどうか、きちんと確認しながら手続きを進めましょう。
以上、ここまで学校法人へ不動産を売却する場合について見てきました。
それでは次に寄付行為について見ていきます。
寄付行為は贈与税がかからない
公共事業への貢献には、不動産の売却以上に、もっと高いレベルの貢献があります。
それは「寄付」です。
通常、不動産を他人へ寄付すると、贈与とみなされ贈与税が発生します。
ただであげても、相続税評価額で贈与したものとみなされ、贈与税が課されます。
しかしながら、学校法人へ土地を基部した場合、それは素晴らしい行為なのでそこには贈与税はかかりません。
これは贈与等に係るみなし譲渡課税と非課税特例と言われます。
ただし、その寄付は、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること等の一定の要件は満たす必要はあります。
この特例についても、税務署と要件を確認しながら進めることをオススメします。
まとめ
個人が学校法人へ不動産を売却する場合の特例と注意点について解説してきました。
学校法人への不動産売却は公益に資する行為。
大きな課税の特例があることを知っておくのが良いでしょう。