個人の方が不動産を売却すると、売却益が生じた人は確定申告をする必要があります。
また個人の方がマイホームを売却して税金の特例を受けようとする場合も、やはり確定申告が必要です。
不動産の売却と確定申告は切っても切れない関係にあります。
不動産売却による確定申告は、自営業やアパートの大家さんなど、普段から「青色申告」を行っている人たちも分けて考える必要があります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 不動産売却でも青色申告できるのか知りたい
- 不動産を売却したときは青色申告をすべきなのか知りたい
- 青色で確定申告を行っているが、不動産売却をしたときはどのような手続きを踏めば良いのか知りたい
そこで今回の記事では、「不動産売却と青色申告」との関係にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは不動産を売却したときに、どのような確定申告手続きを踏めば良いのか理解できるようになります。
個人所得と不動産売却益の所得種類
初めに個人の所得の種類について解説します。
「所得」という日本語には収入という意味が含まれますが、税法上は所得と収入を分けて考える必要があります。
税法上は、収入とは会社でいう売上のような意味を持ち、所得とは会社でいう利益のような意味を持ちます。
そのため、収入から必要経費を控除したものが所得という関係になります。
所得を式で表すと以下のようになります。
所得 = 収入 - 必要経費
所得の種類は10種類ある
さらに個人の所得は以下の10種類に分けられます。
各所得の定義は正確性を期すため、国税庁のホームページよりそのまま抜粋しています。
- 利子所得:預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。
- 配当所得:株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。
- 不動産所得:土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他、他人に不動産等を使用させることを含みます。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除きます。)をいいます。
- 事業所得:農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。
- 給与所得:勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
- 退職所得:退職により勤務先から受ける退職手当や加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得をいいます。
- 山林所得:山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得を いいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合には、山林所得ではなく、 事業所得又は雑所得になります。
- 譲渡所得:土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得、建物などの所有を目的とする地上権などの設定による所得で一定のものをいいます。ただし、事業用の商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどを 譲渡することによって生ずる所得は、譲渡所得となりません。
- 一時所得:上記1から8までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
- 雑所得:記1から9までの所得のいずれにも該当しない所得をいいます。
不動産売却の所得は「譲渡所得」
ここでは、マンションなどの不動産を売却したときの所得は「8.譲渡所得」となることがポイント。
アパート大家さんが賃料収入により得ている所得は不動産所得となりますが、その大家さんがアパートを売却したときは譲渡所得となり、不動産所得とは分けて考える必要があるのです。
ちなみに譲渡所得とは、不動産の売却額ではありません。
ここでも上述の収入と所得の考え方が適用されます。
売却額は売上に相当するため、所得ではなく収入となります。
不動産を売却した時の譲渡所得の計算方法
不動産を売却したときの譲渡所得は以下の計算式で表されます。
譲渡所得 = 譲渡価額(売却額)-取得費(購入額)-譲渡費用(売却に掛かった経費)
※取得費とは土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額
※譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用
つまり売上から仕入と費用を控除した利益が、「譲渡所得」となります。
以上、ここまで所得の種類について見てきました。
それでは次に気になる青色申告についてご紹介します。
不動産売却は青色申告が使えない
確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告は複式簿記により取引の状況を記帳し、所得を申告する制度です。
青色申告には手間がかかりますが、65万円の控除額があるなど、白色申告に比べて節税効果が高いというのが一番のメリットです。
同じ所得であっても申告方法に青色か白色を選ぶだけで納税額が変わることになります。
青色申告ができる所得
青色申告ができるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」の3つだけ。
残念ながら、不動産を売却したときは譲渡所得のため、青色申告は使えません。
以上、ここまで青色申告について見てきました。
それでは次に気になる青色申告をしている人が不動産を売却した場合、どうなるかについて見ていきます。
青色申告と不動産の譲渡所得の関係性
青色申告ができる人は、不動産所得または事業所得、あるいは山林所得がある人に限られます。
事業所得とは主には個人事業主です。
給与所得者であるサラリーマンでも、賃貸アパートや賃貸マンションなどを所有している人は、不動産所得があるため青色申告ができることになります。
ここで問題となるのは、例えば賃貸アパートの所有者で、普段、青色申告を行っている人が、その賃貸アパートを売却した場合はどうなるかという点。
不動産所得の中では、損益計算書の中で賃料収入と固定資産税などの経費を記載し不動産所得を確定しています。
青色申告の損益計算書は、不動産所得のためだけのもの。
賃貸アパートを売却した場合は、不動産所得とは別に譲渡所得が発生していることになるため、不動産所得と分ける必要があります。
譲渡損失の損益通算はできない
青色申告を行っている賃貸不動産や事業用不動産を売却して譲渡損失が出たとしても、他の譲渡益と損益通算をすることはできません。
賃貸マンションや事業用不動産は譲渡益が発生した場合のみ所得税・住民税が発生し、譲渡損失が発生した場合には、所得税・住民税は課税されないというだけで終わります。
ややこしいですが、これはマイホームを売却しした際の損益通算の特例とは話が異なる点です。
まとめ
一戸建てやマンションを売却したときの確定申告と青色申告との関係について見てきました。
結論としては、マンションを売却しても青色申告はできません。
また青色申告をしている人が事業用不動産等で譲渡損失が発生しても他の所得と損益通算はできません。