「擁壁」について調べているが、初めて聞く言葉が多くて、何から始めればいいのかまったく分からない方もいるかと思います。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 造成に必要な「擁壁」とは一体何なのか知りたい
- 造成における擁壁施工のメリットについて知りたい
- 造成で擁壁をするのにかかる費用を知りたい
- 造成で擁壁を施工するうえでの注意点があれば知りたい
そこで今回の記事では「擁壁」に関する基礎知識についてお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
造成に必要な「擁壁(ようへき)」とは何なのか
擁壁(ようへき)とは、崖や盛土の側面が異常を来たすのを防ぐために建築する壁のこと
土壌の安息角を超えるスケールの大きい高低差を地面にセッティングしたいときに擁壁することが多く、土壌の横圧に逆らって斜面の崩壊をブロックするために設計・組み立てられる壁状の構造物です。
安息角とは土や粉粒体を築き上げたときに自発的にアンバランスになることなく安定を保つ斜面の最高角度のこと
擁壁の設置義務があるのは、「宅地造成等規制法」の区域内が高さ1m以上の盛土のケースです。
その他の区域は建築基準法によれば盛土・切土には左右されずに壁高2m以上の場合となっています。
つまり、一般的に高さ2mに至るまでの擁壁なら、自由に造れるのが実情といえます。
造成における擁壁の技術的基準
擁壁の設置に関する技術的たたき台として、「宅地造成等規制法施行令」の第6条が規定されています。
宅地造成等規制法の範囲以外となる地域においても、これに適した指導が行なわれているケースが多いです。
ただし、自治体の条例などによりまったく違う場合もあるので気を付けなければいけません。
造成のために作った擁壁は経年劣化する
どんなに頑丈に構築された擁壁でも、永久に機能を保持し続けるわけではなく、数十年経つうちに劣化は進展してしまいます。
今後長きにわたって使う家屋を建てるのであれば、特に注意してその状態を確認しつづけていく必要があります。
しかし、比較的新しい擁壁でもクラックやひび割れが出現している場合があり、新しければ大丈夫というわけではないです。
また、擁壁の亀裂やクラックを補修したとしても、どっちつかずの補修は根本的な解決には結び付きません。
クラックとは、亀裂やひび割れのこと
擁壁はその高さや面積にも左右されますが、工事費用が百万円以上になる場合もあります。
造成時に作った擁壁の作り直しが必要になったら
もし、擁壁の造り直しが不可欠になったとき、タイミング次第で大きな問題になります。
引渡し直後に発覚すれば、問題になり、施工会社には大きな責任問題が問われます。
最悪の場合、訴訟問題にはなりますが、泣き寝入りするよりマシです。
施工後は、「表面の状態」「材質」「水抜穴」を確認して、違和感がないかチェックしましょう。
あきらかな亀裂や排水の様子に問題が確認できないのであれば、安全面での心配はないので安心してください。
これまで擁壁の基本知識についてお伝えしましたが、次に擁壁施工の種類について見ていきましょう。
造成における擁壁は施工条件によって種類が変わる
この章では造成における擁壁施工のメリットと種類についてお伝えします。
擁壁施工は高低に開きがある場合、または斜面の崩壊を防ぐおそれがある場合に、斜面を安定させるために行います。
擁壁は壁状の構造物を意味し、コンクリートやブロックで作成され土砂崩れなどの災害から住まいを防護します。
擁壁施工では、土地のコンディションなどによりちょうど良い施工方法を選ぶことになるでしょう。
擁壁施工の種類には、コンクリート製擁壁、石積み擁壁等があります。
通常はコンクリート擁壁が多く用いられ、「逆T型」「L型」「逆L型」等から選択可能で、施工条件などによりフィットしたものを決定するようになります。
例えば、逆T型は、隣地との境界にゆとりがある敷地の設置にマッチしています。
そして、コンクリート擁壁は、「現場打ちコンクリート」と呼ばれる方法と「プレキャスト擁壁」と呼称される方法の2パターンがあります。
現場打ちコンクリートとは、その場で生コンクリート打設を行なってしまう工法のこと。複雑な形状の擁壁にも加工できるというメリットがある。
プレキャスト擁壁とは、作業場でブロック状に製作されたものを施工していく工法のこと。良質な製品であることや施工スパンもかからないというアドバンテージがある。
コンクリート擁壁にクラックが発生した場合は、隙間補修を行い、もしも地盤沈下が現れた場合には、地盤を固めるために薬剤を投入するなどの処置を実行します。
このように擁壁施工はセットする場所の地形や、土質などのコンディションにより様々な工法がセレクトされることになります。
適切な工法で施工を実行するためにも、施工実績のある優良業者に依頼すると安心でしょう。
これまで擁壁施工のメリットや種類について見てきましたが、次に擁壁施工の費用についてお伝えします。
造成における擁壁の施工にかかる費用
造成のための擁壁の施工・にかかる費用は1平方メートルあたり1万円から1.5万円が相場ですが、擁壁施工の費用は、採用している材料や施工方法などを通じて違いが出てきます。
擁壁施工時には掘削工事が必要となりますが、掘削により発生した土をすぐに対処することができれば、処分費や輸送コストはかかりません。
しかし、場外で処理するケースでは、これらの費用が別途発生してしまいます。
その他には、2メートル以上の擁壁を構築する際には、構造計算コストや行政への申請費用が求められます。
また、斜面が土砂崩れ防止対策工事の対象となる場合には、助成金システムを設けている地方公共団体もあります。
対象となる条件などがありますが、許可された場合は助成金を利用して擁壁施工を行うことが出来ます。
参考として各自治体が発表している擁壁や宅地造成に関する助成金制度についていくつかまとめています。
助成金をうまく活用することができれば、費用をおさえることができるので、お住まいの自治体のホームページで最新情報を確認しましょう。
地域 | 助成金の概要 |
---|---|
宮城県 | みやぎ地域復興支援助成金 宅地災害の復旧に関する補助金(仙台市) 造成宅地擁壁整備工事補助金(女川市) |
山形県 | 危険ブロック塀等撤去支援事業費補助金交付事業 (天童市) |
新潟県 | 長岡市/がけ地近接等危険住宅移転事業の案内 |
千葉県 | 危険ブロック塀等 改善補助事業 (千葉市) 崖地の整備 / 危険ブロック塀等除去事業補助金 (市川市) 各種助成・支援申請窓口のあんない (市原市) |
三重県 | がけ地近接等危険住宅移転事業 |
広島県 | がけ地近接等危険住宅移転事業に関すること 建築物土砂災害対策改修促進事業について |
島根県 | がけ地近接等危険住宅移転事業のご案内 |
石川県 | がけ地近接等危険住宅移転事業について |
長崎県 | 長崎県総合防災ポータル(被災者支援に関する各種制度:がけ地) |
これまで擁壁施工の費用について見てきましたが、次に擁壁施工でおさえておくべき注意点についてお伝えします。
造成で擁壁を施工するならおさえておくべき5つの注意点
造成における擁壁を施工するならおさえておくべき注意点は以下の5つです。
造成で擁壁を施工するならおさえておくべき5つの注意点
注意点1.造成と擁壁工事は実績のある業者を選ぶ
擁壁工事は、依頼する企業に豊富な知識と長年の伝統があることに越したことはありません。
専門知識や専門技術、さらには確かな信頼が物を言います。
しかしいくら腕が良いものであってもしっかりと施主の意向を配慮し、誠意ある施工を実施してくれなければダメです。
満足のいく擁壁工事は、見込むことができません。
そして、「あまり費用を費やしたくない」「安価で終わらせたい」といった理由で業者選びを行ってしまうとアウトです。
後々費用が高くついてしまう原因になりかねます。費用を抑制するということは何かが損なわれてしまうということなのです。
例えば、安くしようとしてコンクリや土の質を悪くしてしまうと、強度が保てなくなるケースがあります。
仮に、擁壁工事を行って時間がたってから埋め戻すと、低質な土ならば、地盤沈下の恐れもあります。
こういったトラブルを未然に防ぐために、大切な目安になってくれるのが見積書です。
詳細な見積り内容と施工について書かれた説明など、それにマッチした見積内容や工事概要が必ず見せられます。
まずは業者から見積りを請求して、長所と短所を突き合わせてみましょう。
注意点2.擁壁を伴う造成工事は見積もりが複雑になる
擁壁工事の価格にはある程度の相場がありますが、見積もりの内容は複雑になってしまいがちです。
例えば、既に古い擁壁があるケースになると、それを解体する義務が出てきます。
また、擁壁工事の際は掘削工事が生じるため、土の移動絡みの費用もかかります。
土の移動をする際、敷地内の他所に置き土ができればコストは減少させられますよ。
このようなちょっとした土地の状況の違いが料金に上積みされていくので、見積もりが複雑になってしまうのです。
そのほかにも、2mをオーバーする擁壁を造る際は構造計算コストや行政への申請費がかかります。
さらに詳しくは後述しますが、重機が通ることの出来る道路幅があるかどうか等の立地条件のせいでも、費用は変動します。
このように見積りが複雑になるのが擁壁工事なので、業者とのヒアリングをないがしろにできません。
見積書を取り、業者が決められた場合には疑問に思った点はためらわずに質問してみましょう。
注意点3.造成の擁壁は劣化しても完全に補修できない
どんなに頑丈に作成された擁壁でも、数十年という時を乗り越えて、次第に劣化が出来ていきます。
もちろん、新しい擁壁であれば大丈夫ということではなく、クラックやひび割れが生じていることだってあります。
このとき擁壁が難しいのは、補修したとしても、多くの場合、根本的な解決にはならないというポイントです。
高さや面積にも影響されますが、擁壁の補修工事費用は数百万円になるケースがあります。
注意点4.造成の擁壁には隣人とのトラブルがつきもの
隣り合った敷地に高低差が見受けられ、その間に擁壁を制作することもあるでしょう。
上側にいる敷地所有者の責務のもと、上側の敷地内に擁壁が整えられるケースが多いです。
この場合は、上側の敷地オーナーが費用負担をすることなります。
ただし、上側の敷地オーナーが擁壁を制作する必要があるといった法律や縛りはありません。
あくまでそうするケースがいっぱいある、というだけです。
下側の敷地において、地盤を削り取るなどなんらかのいきさつで高低差が生じた場合には気を付けて下さい。
下側の敷地内に擁壁をセットすることから、下側の敷地オーナーの費用負担となります。
また、隣地との間の劣化した擁壁を、不動産業者の手配でつくり直すケースもあります。
このとき、費用負担のかわりに敷地の一部を提供し、ボーダーライン上に擁壁をつくる条件が差し出されることも。
さらに、擁壁の基礎部分が壌土の境界線を越えているケースも問題ありです。
その場合は上側と下側の敷地オーナー協議のもと、擁壁を作成する、または修繕をするコストを折半することも考えられます。
また修繕が必要になったシチュエーションで、どちらが費用を背負うのかなど、トラブルと化すことが少なくありません。
このように、敷地の境界線に形成されることが多い擁壁は、それだけ隣人とのトラブルを生じ易いポイントなのです。
注意点5.擁壁造成する場所までの距離と道幅で料金が変わる
土を持ち込む場所から造成する土壌のまでの距離数や道幅でも、コストが変わります。
なぜかというと、土を送り届ける為のダンプが通れないなら、ダンプより小さい車で運ばざるを得ないためです。
4トントラックならスイスイと往復できるものを、軽トラックなら何回も往復しなければいけません。
運搬する時間も奪われるだけではなく、手間もかかるので料金がかさむのも仕方がないです。
ちなみに造成前の土地前の道路幅が約4m以上ないと、追加の費用は間違いなく加算されるでしょう。
まとめ
「造成の擁壁」をテーマとして、様々な知識を解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
紹介した知識さえ押さえておけば、「造成の擁壁」に関する知識は、すべて網羅できているのでご安心を。
今後、造成で擁壁を施工する機会があるなら、今回紹介した知識をぜひ参考にしてみてください。