アパート経営を相続したときの手続きと今後の方針の決め方を解説

相続したアパートの経営方針

相続では築年数が古くなったアパートを引き継ぐことが多いです。

築年数の古いアパートは、賃貸経営が難しいため、建て替えや売却等も含めて方針を決めることが必要です。

では、アパートを相続した場合、どのような手続きを踏み、今後の方針をどのように決めていけば良いのでしょうか。

こんな悩みをスッキリ解消!

  • アパート相続の手続きの流れを知りたい
  • 相続したアパートの対処法を知りたい
  • 相続したアパートを経営し続ける際のコツを知りたい

そこで今回の記事では「親から相続で引き継いだアパート経営」にフォーカスしてお伝えいたします。ぜひ最後までご覧ください。

株式会社グロープロフィット 代表取締役 竹内英二

【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター

株式会社グロープロフィット 代表取締役

竹内英二

大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。

資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士

1.親の時代と状況が異なるアパート経営

築古のアパートは難しい

相続で引き継ぐアパートは、ほとんどの場合、築古アパートです。

アパート経営の良い時期は、最初の10年、長くても20年といったところです。

築20年以上のアパートの所有者になることは、相続ではなくても普通に苦労します。

アパートは、築年数が古くなると、空室が増え、賃料も下がり、修繕費も多く発生します。

「空室」「賃料下落」「修繕費発生」の三重苦がのしかかるのが築古のアパート経営です。

近年は、平均寿命が高くなっていますので、相続自体も高齢化しています。

100歳の親が無くなり、70歳の息子がアパートを相続するようなケースも珍しくありません。

相続が高齢化すると、引き継ぐアパートも老朽化しています。

アパート経営の素人が、いきなり三重苦をかかえるアパートを引き継ぐわけですから、難しいのは当たり前と言えます。

相続税の改正もあり、近年はさらに厳しい環境

また、近年は相続税法の改正により新築アパートも増え、30年前の状況に比べると、明らかにアパートの経営環境は厳しくなっています。

アパートがあまりにも供給過剰になっていることから、2016年12月には、金融庁と日銀がアパートローンの監視強化まで乗り出した次第です。

さらに建築費も高騰していることから、たとえ新築であったとしても、今のアパートオーナーは相当のリスクを抱えてアパート経営を行っています。

今やアパート経営は地主が余生でのんびり行うものではなくなりつつあります。

現在ではアパートが供給過剰であることに加え、相続したアパート自身が老朽化していることから、親が行っていたアパート経営の手法では立ち行かなくなってきているのが実態です。

相続人は、30年前の親の時代とはアパートの経営環境がガラッと変わっていることを、強く意識する必要があります。

敗戦処理に苦労する相続人

相続したアパートの経営状況が思わしくない場合は、何らかの手立てを早めに打つ必要があります。

冒頭に「親が残した資産を整理するのに大変苦労した」と語った相続人の言葉を紹介しましたが、資産を引き継いだ相続人は「敗戦処理」に苦労する方が多いです。

親は賃料収入で良い思いをしたかもしれませんが、子供は敗戦処理に回るケースが後を絶ちません。

親としては、資産を残すために相続対策をしたはずですが、結局、相続で引き継いだ後、負の資産として物件を売却してしまうということも良くあります。

その際、相続物件は境界が未確定なことも多く、相続人が隣地との境界画定に苦労し、やっとの思いで売却しているような場合もあります。

実は難しい敗戦処理

実は、相続物件の敗戦処理は簡単ではありません。

複数の資産を持っている方は、収益性の低い物件から順次、売却していくような対応も必要になります。

尚、相続物件で境界が未確定の物件を売る場合については、下記に詳しく記載していますので、ぜひご参照ください。

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アパート経営を引き継がず相続放棄も検討

アパート経営の難易度が親の世代と異なることを話してきましたが、アパート経営に不安がある場合や収支バランスが悪い場合は、相続放棄の選択肢も検討してみてください。

相続放棄を行うには家庭裁判所に必要書類を揃えて提出する必要があります。

これらの作業は、自分でも行うことができますが、書類の作成や取り寄せに不安があるのなら行政書士や弁護士に相談してみましょう。

相続放棄の注意点については以下の記事で詳しく解説しています。

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以上、ここまで親の時代と違うアパート経営について見てきました。

次にアパートを相続した際の手続きの流れについてお伝えします。

2.アパートを相続した際の手続きの流れ

最初にアパートを相続した際の手続きの流れについて解説します。

アパートを相続した際の手続きの流れ

  1. ローン残債を確認する
  2. 誰が引き継ぐかを決める
  3. 入居者または管理会社・銀行に連絡する
  4. 名義変更を行う
  5. 準確定申告(4ヶ月以内)を行う
  6. 相続税を納税(10ヶ月以内)する

①ローン残債を確認する

アパートを引き継いだ場合、ローン残債があるかどうかを確認します。

ローン残債とは、ローン返済中のある時点において、まだ返済していない借入金の残額(元金)のこと

ローン残債は、相続財産からその残債額をマイナスすることができるため、相続税を節税できる効果があります。

ローンが残っている場合は、アパートを引き継ぐ人がその債務も引き継ぐことになります。

アパートの所有権を引き継いだからといって、自動で債務も引き継ぐわけではないので、銀行に連絡して債務の引き受けの手続きを行います。

②誰が引き継ぐかを決める

相続した時点では、アパートは相続人の共有状態となっているため、誰がアパートを引き継ぐのかを決めます。

遺言書が残っていれば、遺言書に従い引き継ぐ人を決定します。

よって、相続が発生したら、まずは遺言書の有無を確認するようにしてください。

遺言書がない場合は、遺産分割協議によって誰が引き継ぐかを全員で話しあって決めることになります。

遺産分割協議とは、相続が発生した際に、共同相続人全員で遺産の分割について協議し、合意すること

遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意が必要です。

③入居者または管理会社・銀行に連絡する

アパートを引き継ぐ人が決まったら、入居者または管理会社・銀行に連絡します。

アパート引き継ぎ時に、家賃の振込先が変わることになりますので、入居者または管理会社に新たな家賃の振込先を伝えようにしてください。

管理会社経由で家賃が振り込まれている場合には、管理会社に家賃の振込先を伝えます。

アパートの管理会社に連絡し、お金の流れがどうなっているかを確認しましょう。

④名義変更を行う

アパートを引き継ぐ人が決まったら、名義変更を行います。

特定の相続人がアパートを引き継場合、名義変更には「遺言による名義変更」「遺産分割協議による名義変更」の2パターンがあります。

それぞれの名義変更に必要な書類は以下の通りです。

相続方法必要書類
遺言・遺言証書
・遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
・遺言により相続する相続人の住民票
・固定資産税評価証明書
・受遺者の戸籍謄本
・相続関係説明図(任意)
遺産分割協議書・遺産分割協議書(相続人全員自著・実印押印・印鑑証明書添付)
・被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
・被相続人の除住民票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図(任意)

名義変更にあたっては登録免許税が発生します。

登録免許税の算式は以下の通りです。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

また、名義変更を司法書士に依頼する場合には、司法書士手数料もかかり、6~7万円あたりが相場です。

⑤準確定申告(4ヶ月以内)を行う

アパートを相続した場合、準確定申告を行う必要があります。

準確定申告とは、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの所得の確定申告のこと

アパート経営をしていた被相続人は、不動産所得と呼ばれる所得が発生しており、毎年確定申告をして所得税等を納税していました。

年の途中で死亡してしまうと、死亡した年の1月1日から死亡した日までの被相続人の不動産所得が未申告となります。

その未申告の部分を相続人で申告するのが準確定申告です。

準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内となります。

⑥相続税を納税(10ヶ月以内)する

相続税の納税義務のある人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税をすることが必要です。

相続税とは、被相続人の財産が基礎控除額を超えている場合に発生する税金のこと

基礎控除額の計算式は以下の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

アパート経営をしているような人は資産家ですので、アパートを引き継ぐような人は相続税の納税義務があると思われます。

被相続人が生前に付き合っていた税理士等に確認し、相続税を納税するようにしましょう。

これまでアパート経営を相続した際の流れについて見てきましたが、次にアパートを相続した際の相続税について見ていきましょう。

3.アパートを相続した際の相続税

アパートの相続税評価額の算式は以下の通りです。

(建物の評価額)
建物評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

(土地の評価額)
貸家建付地評価額 = 自用地としての価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は30%で、建物も土地も同じ30%を用います。

借地権割合は、路線価ごとに30%~90%の値で定められています。

賃貸割合とは、相続時における入居率のこと。賃貸割合は土地も建物も同じ数値を用いる。

一時的な空室の場合は、その部分は入居中の部屋に換算することが可能です。

一時的な空室部分であるか否かは以下の基準から総合的に判断が行われます。

一時的な空室部分

  1. 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものか
  2. 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたか
  3. 空室の期間、他の用途に供されていないか
  4. 空室の期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度であるなど一時的な期間であったか
  5. 課税時期後の賃貸が一時的なものではないか

例えば、10室中1室が相続時にたまたま1ヶ月前から空室になっているような場合は、賃貸割合は100%となります。

借入金に関しては、マイナスの現金という扱いなので、現金額をそのまま控除することが可能です。

例えば以下のケースで相続税評価額を計算します。

(条件)
土地の自用地としての相続税評価額:5,000万円
建物の固定資産税評価額:2,000万円
ローンの借入額:4,000万円
借地権割合:60%
賃貸割合:100%(相続時の入居率のこと)

(相続性評価額)
建物評価額 = 建物の固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
      = 2,000万円 × (1 - 30% × 100%)
      = 1,400万円

土地の評価額 = 自用地としての価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
       = 5,000万円 × (1 - 60% × 30% × 100%)
       = 4,100万円

相続税評価額 = 建物評価額 + 土地評価額 - 借入金の額
       = 1,400万円 + 4,100万円 - 4,000万円
       = 1,500万円

他の現金や自宅等の資産とアパートの相続税評価額を合算し、その金額が基礎控除額を超えていたら相続性が生じることになります。

アパートを相続した際の相続税について見てきましたが、次に相続した後のアパートの経営方針についてお伝えします。

4.相続したアパートで検討すべき3つの経営方針

相続したアパートでは、以下の3つの経営方針を検討することができます。

相続したアパートで検討すべき3つの経営方針

  1. 相続したアパートを建て替える
  2. 相続したアパートを建て替えない
  3. 相続したアパートを売却する

この章では、それぞれの経営方針のメリットとデメリットについてお伝えします。

経営方針①相続したアパートを建て替える

入居率が1~2割程度のアパートを相続した人は、建て替えることをオススメします。

相続したアパートを建て替えるメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット・賃料や空室が回復する
・修繕費の支出が止まる
デメリット・立ち退きが必要となる
・建て替え費用が必要となる

建て替えるメリット

メリットは、「賃料や空室が回復する」「修繕費の支出が止まる」があります。

一般的にアパートは築年数が古くなるほど、空室も増え、賃料も下がっていきますが、新築アパートに建て替えれば、満室にすることもできますし、賃料も回復させることができます。

また修繕面でも、築年数の古いアパートは、大規模修繕費が立て続けに出ていきますが、新築に建て替えれば、少なくとも10年程度は大きな修繕費が発生することなくアパート経営を行うことができます。

建て替えるデメリット

デメリットは「立ち退きが必要となる」「建て替え費用が必要となる」があります。

アパートの建て替えで最も厄介なのが立ち退きです。

賃貸オーナーが古いアパートを建て替えたいというのは、入居者を立ち退かせる正当事由には該当しません。

正当事由とは、借主を立退かせるための正当な理由のこと

建て替えたいという理由だけでは契約を解除することはできないため、立ち退き料が必要となります。

アパートの立ち退き料は、「引っ越し代+α」が相場であるため、1戸あたり50万円~100万円程度かかります。

立ち退きは、仮に裁判になってしまうと解決まで2年以上はかかり、しかも立ち退き料も安くなりません。

借主に居座られてしまうと、立ち退きが困難になりますので、立ち退き交渉は慎重に行うことが必要です。

また、建て替えには、新たな建て替え費用(取り壊し費用と新築費用)が必要で、取り壊し費用は基本的にローンを組むことができません。

新築のアパートローンも、少なくとも建築費の10%は頭金として用意することを銀行から求められます。

経営方針②相続したアパートを建て替えない

7割以上の入居率が確保されているアパートを相続した人は、建て替えずそのままアパート経営をすることをオススメします。

相続したアパートを建て替えないメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット・継続的に賃料収入が得られる
・立ち退き料や建て替え費用が不要となる
デメリット・空室が増え続ける
・修繕費が増え続ける

アパートを建て替えないメリットとデメリットは、基本的に建て替えるメリットとデメリットの裏返しです。

建て替えには、立ち退き料や取壊し費用等のコストがかかるため、短期的には建て替えない方が経済的なメリットがあります。

アパートは、築40年超えであっても、常に8割以上埋まっているような物件であれば、無理に建て替える必要はありません。

立地の良いアパートは、築50年を過ぎても建て替えていない物件も多くあることから、アパートの建て替えは、築年数ではなく空室状況で決めることがポイントです。

次にアパートを建て替えない場合の見直し事項についてお伝えします。

アパート経営の見直し①一括借上げの見直しをはかる

アパート経営の収益性を落としている原因の一つに一括借上げがあります。

一括借上げは満室時の85%程度の賃料で借りているため、一括借上げを外すだけでも収益性がアップします。

一括借上げは、家賃の減額もあるため、相続で引き継いだ時点では、既に何度か減額を受けている可能性もあります。

そのため、相続時点では一括借上げによって相当収益性が低くなっている場合もあります。

一括借上げは、管理会社によっては修繕対応とセットにしているハウスメーカーもあります。

そのため、一括借上げを解約しようとすると、「それでは、今後一切修繕は対応しません」と半分脅してくるような管理会社もいます。

ただ、スポットで修繕してくれるような会社はいくらでもありますので、そこはひるまずに解約交渉に臨んでください。

また、一括借上げは、契約形態としては普通賃貸借契約と呼ばれる形式になっていることが多いです。

普通賃貸借契約とは、更新規定のある契約で、借り手側の権利が強く守られていることが特徴です。

解約できない場合の対応方法

一括借上げを解約しようとしても、相手が抵抗して簡単には解約できない場合があります。

一括借上げの解約を申し出した際、相手が抵抗するような場合は、借上げ会社にしっかり利益が出ているという証拠です。

借上げ会社側からすると、利益が確保できている美味しい物件の場合、簡単には解約したくないという思惑が働きます。

このような物件の場合、一括借上げ会社に対し、「賃上げ交渉」を行います。

具体的には借上げの料率の引き上げです。

例えば、現在の借上げ料率が満室の85%であれば、88%まで上げるというような交渉です。

借上げ料率に関しては、法的な決まりはありません。

何%にするかは、借主と貸主の力関係で決まります。都内の物件では、借上げ料率が95%のような物件も存在します。

交渉ですので最初は思い切った値上げを打診してください。

賃上げ交渉で相手が嫌がるようであれば、一括借上げを外れてもらうことになります。

借上げ会社を外すつもりで「賃上げ交渉」を行うことがポイントです。

一括借上げを外した際の注意点

一括借上げを外すと、入居者と直接賃貸を行うことになります。

賃貸人が変わるだけですので、賃借人(入居者)に通知が必要ですが同意は不要です。

入居者が一括借上げ会社に支払っていた賃料をそのまま引き継ぐことができます。

ただし、入居者が一括借上げ会社に預けていた敷金についても、返還義務を引き継ぐことになりますので注意が必要です。

一括借上げの場合、入居者からは直接敷金を預かっていないため、仮に入居者が退去して敷金の返還を求められた場合、その返還原資がありません。

入居者と直接賃貸になっても、敷金を預かりなおすことはありません。

そのため、一括借上げ会社を解約する場合は、一括借上げ業者と建物オーナーとの間の敷金と、一括借上げ会社と入居者との間の敷金とで清算を行うことを忘れないようにしてください。

一括借上げ会社を解約した場合、「賃貸人の地位承継通知書及び同意書」という形で3者の新たな覚書を締結しておきます。

賃貸人の変更は、通知のみで足りますが、入居者が敷金返還の権利を確保しておくためにも、入居者側も同意をした方が無難です。

そのため、以下の書式は、通知書と同意書を兼ねたものになっています。

以下に、サンプルを例示しますので、ご参照ください。

平成29年〇月〇日

賃貸人の地位承継通知書及び同意書

借主 □□ □□ 様

旧賃貸人 東京都○○区○○

○○ ○○ 印

所有者兼新賃貸人 東京都○○区○○

△△ △△ 印

拝啓  時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、貴社に賃借いただいております「××」(以下、「本物件」といいます。)につきまして、平成29年〇月〇日付で△△ △△が本物件の新賃貸人となりました。

従いまして、□□ □□様と○○ ○○との間で締結した賃貸借契約に基づく賃貸人の地位について平成29年〇月〇日をもって、○○ ○○から△△ △△が承継いたしましたのでご通知いたします。つきましては、下記事項につき、ご通知申し上げますので、お忙しいところ大変恐縮ですが、内容をご確認のうえ、末尾記載の「同意書」をご提出くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

1.□□ □□様と○○ ○○との間に取り交わされている賃貸借契約は、現状のまま新賃貸人に有効に引継がれます。

2.賃借人に返還を要する敷金については、新賃貸人に免責的に承継されますので、これらの返還義務は新賃貸人が負うことになります。(将来、本賃貸借契約が終了した場合には、△△ △△が本賃貸借契約の条項に基づき同契約上の賃貸人として保証金を預り証と引き換えに貴社に返還させていただくことになります。)

3.平成29年〇月1日よりご請求させていただきます平成29年◇月分賃料等及び、それ以降の賃料等については、新賃貸人指定の口座宛にお振込下さい。

新振込先 

      銀行名:××銀行

     支店名:○○店

     預金種目:普通

     口座:0000000

     受取人:△△ △△

以上

同 意 書

平成29年〇月〇日

旧賃貸人         ○○ ○○ 様

所有者および新賃貸人   △△ △△ 様

上記の各事項につき確認し、賃貸人の地位が○○ ○○から△△ △△に承継される事に同意致します。

賃借人 □□ □□ 印

以 上

以上、ここまで一括借上げの見直しについて見てきました。

では既にサブリースは外している場合はどうすべきでしょうか。

そこで次に管理会社の切替について見ていきます。

アパート経営の見直し②管理会社の切替を検討する

相続をきっかけにアパートの管理会社を変える人はとても多いです。

また逆に言えば相続は管理会社を切替える良いきっかけとも言えます。

典型的な例としては、親の代で古くから付き合っていた地元の不動産会社の管理を取りやめ、子供が力のある大手の不動産会社へ管理を切替えるというようなパターンです。

管理会社も付き合いが長くなると、だんだんと馴れ合いの関係となり、手を抜く不動産会社も少なくありません。

空室が発生しても、気にも留めず、ちっとも埋めようとしない管理会社もあります。

相続で息子の代になると、管理会社とは元々の人間関係がないため、動きの悪い管理会社とは継続して管理を委託する理由がなくなります。

そのため、相続をきっかけに大手の不動産会社に管理を切替える人は多くいます。

アパートの管理料は、通常、賃料の5%が一般的です。

大型物件になれば3%という物件も存在します。

管理会社を切替えるときは、同時に管理料の料率も下げる努力が必要です。

普通の規模のアパートでも4%で管理を受託する不動産会社は多いです。

例えば、現在の料率が5%であれば、切替後は4%にすることを目標にしましょう。

また、古い管理委託契約書では、管理の料率を「(賃料+共益費)×5%」としている物件もあります。

管理料は共益費を除いた「賃料×5%」としている会社も多いです。

管理料の算出方式には決まりがありません。

細かい部分ですが、共益費を外した形で管理料を算出する方式に切り替えることでも、費用の圧縮を図れます。

管理料の算出方式も見直すことが必要です。

管理会社切替時の注意点

尚、相続したてのときは、管理会社を切替えればアパート経営が改善するものと安易に考えがちです。

このような淡い期待は、とても危険です。

確かに、アパート経営が上手く行かない理由には、「管理会社が悪い」というのも1つにはありますが、

空室が多い理由は管理会社だけが悪いわけではないことが多いです。

そもそも管理会社には、入居者を埋めれば仲介手数料が入りますし、管理料も増えます。

管理会社には「自分たちも空室を埋めた方が得」というインセンティブがあります。

それにも関わらず、「埋めない」もしくは「埋まらない」というのは、他にも原因があることが考えられます。

苦労して管理会社を変えたにも関わらず、結局、何も変わらなかったということは良くあります。

また大手の管理会社に切り替えたことで、逆に料率が上がってしまったというような例もあります。

そのため、まずはなぜ埋まらないのかという部分について現状分析をすることの方が重要です。

現状分析をした上で、「明らかに管理会社が手抜きをしている」ということであれば、管理会社を切替えるようにしてください。

試しに、今の管理会社に空室対策の相談をしてみることをオススメします。

その際、今の管理会社がやる気のないトンチンカンな答えしか返ってこないようであれば、切替えるのも一つの手です。

空室対策を熱心に提案してくるようであれば、その不動産会社を管理会社として継続することも選択肢に一つです。

以上、ここまで管理会社の切替について見てきました。

相続で引き継いだアパートは、場合によっては売却した方が良い場合があります。

次に相続したアパートを売却する経営方針についてお伝えします。

経営方針③相続したアパートを売却する

「相続人間で資産を平等に分けたい人」「相続税の納税のために現金が必要な人」「まとまったお金が欲しい人」は売却することをオススメします。

相続したアパートを売却するメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット・現金を相続人間で平等に分けることができる
・古い物件の賃貸経営から解放される
デメリット・賃料収入を得られなくなる
・ローンが返済しきれないときがある

売却するメリット

メリットは「現金を相続人間で平等に分けることができる」「古い物件の賃貸経営から解放される」の2つです。

相続人間で資産を現金で分け合いたいときは売却を選択することになります。

現金であれば平等に分けることができるため、争いにならないという点がメリットです。

また、築年数の古い物件の賃貸経営から解放され、修繕費の支出等に悩む必要がなくなることから、古い物件を売ることには相応のメリットがあります。

売却するデメリット

デメリットは「賃料収入を得られなくなる」「ローンが返済しきれないときがある」の2つです。

一度アパートを売却してしまえば、定期的な賃料収入は得られなくなります。

ただし、築年数の新しいアパートに買い替えれば、再び賃料収入を得ることは可能です。

相続した物件よりも立地が良く、かつ、築年数の新しい物件に買い替えてしまえば、古い物件を相続したデメリットを解消することができます。

また、地方の築古アパートでは、アパートローンが残っているとオーバーローンで売却できないことがあります。

オーバーローンとは、ローン残債が売却価格を上回っている状態のこと

オーバーローンで売却できない場合には、貯金を加えて完済するか、もしくは、ローン残債が売却価格を下回るまで返済を続けるかの対応が適切になります。

古いアパートはオーバーローンによって簡単に手放せない場合があるため、売却の前は査定をしっかりとってローン残債を返済できるかどうかを確認した上で売却を決断することが必要です。

次にアパートを売却に強い不動産会社を探す方法についてお伝えします。

5.アパート売却に強い不動産会社を探す方法

まず、アパートのような投資物件の売却は、不動産会社に査定してもらうところからスタートします。

投資物件の主な買主は投資家です。投資家は、通常、収益物件をメインで扱うような投資物件に強い不動産会社で物件を探しています。

逆に言うと、売却の際も、そのような多くの投資家を抱えている不動産会社に頼むのが効率的です。

不動産会社には、物件の種別やエリアによって得意・不得意がある

投資用マンション売却に強い不動産会社に頼むことが重要なポイント

気をつけなければいけないのは、査定額はあくまで、不動産会社がいくらで売れそうなのかを判断した価格です。

不動産会社ごとに、実績や算出方法が異なるので、不動産会社によって査定額がバラバラになってしまうことが一般的です。

投資物件に関しては、賃料収入など収益性も加味しながら査定をするため、なおさら不動産会社の力量で査定額にバラつきが出てきます。

なので、査定は複数の不動産会社に依頼して、比較検討することがとても大切です。

しかし、複数の不動産会社を自分で調べて、1社ずつ何度も査定依頼を進めるのはとても大変です。

そんな時に不動産一括査定サイトの活用を強くオススメします。

不動産一括査定とは、売却を検討している不動産の情報を入力するだけで、複数の不動産会社から不動産の売却価格の査定を出してもらうことができるサービスのこと

売却することは決まっておらず、現在の市場価格を確認してみたいという方でも活用出来るので、定期的にチェックしてみるのも良いでしょう。

便利な不動産一括査定サイトですが、筆者が知っているだけでも30はあります。

多くのサイトが乱立し、どのサイトを使えば良いか素人には分かりづらくなってしまっています。

実績や信頼性、提携不動産会社の質など、総合的に判断すると筆者は下記の3つをオススメします。

都市部での売却なら

超大手の不動産会社6社に唯一依頼が一括査定サイト「 すまいValue

東京・神奈川・千葉・埼玉・名古屋・大阪・兵庫・福岡といった都市部での売却なら活用マストです!

都市部以外での売却なら

NTTグループで安心、一括査定サイトのなかで最も歴史があり、実績も抜群の「 HOME4U

すまいValue 」で対象外のエリア(都市部以外)での売却なら活用マストです!

上記サイトとセットで活用

投資物件の売却に特化した不動産一括査定サイト「 RE-Guide

上記2サイトと合わせて活用すると効果的です!

上記オススメサイトの査定依頼フォームでは、「物件の状態」と「賃料」を問う項目があるので、人に貸している投資用物件の場合は「賃貸中」にチェックの上、現在の賃料を入力しておきましょう。

投資用物件の査定は賃料が大きく関わってきますので、入力しておいた方が正確な査定結果を得ることができます。

「すまいvalue」入力画面

「すまいvalue」入力画面

6.アパートの相続に関するQ&A

この章ではアパートの相続に関するQ&Aについて解説します。

Q1.アパートの価格はどうやって計算すればいいですか?

アパートのような収益物件は、収益還元法と呼ばれる方式で価格が決まります。

収益還元法は、厳密には年間純収益を投資家の期待利回りで割ったものです。

ただし、収益還元法を本格的に計算するのは難しいので、「家賃収入を表面利回りで割る」という簡易な方法もあります。

表面利回りとは、家賃に対する利回りのこと

郊外の築古物件の表面利回りは、10%~12%程度が目安となります。

例えば、家賃6万円の部屋が8戸あるアパートは、年間家賃収入が576万円です。

年間家賃収入を10%の表面利回りで割ると、5,760万円がアパートの価格となります。

Q2.アパートの名義は家族の共有名義にした方がいいですか?

アパートのような不動産は共有名義にはしない方が良いです。

理由としては、再び、共有者の二次相続、三次相続が発生していくと、共有者が雪だるま式に増えてしまうからです。

共有物件は、売却しようとすると、共有者全員の同意が必要です。

例えば、30人の多人数共有物件となってしまった場合、29人が賛成しても1人が売却に反対すれば売却ができなくなってしまいます。

多人数共有物件は、将来の相続人が苦労します。

禍根を残す原因となりますので、アパートは誰か1人の相続人に相続させ、単独名義とすることをオススメします。

Q3.次の相続人が決まるまでは家賃は誰のものになりますか?

次の相続人が決まるまでは家賃は相続人全員の共有物になります。

相続人が決まるまではアパートは相続人全員の共有状態にあります。

その持分割合は、法定相続分です。

従って、家賃および費用に関しても相続人が決まるまでは、法定相続分で享受または負担することになります。

最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決にて、相続開始から遺産分割までの、賃料債権の分配方法は法定相続分に応じて行うという最高裁判例が出されており、司法も法定相続分で分けると判断しています。

まとめ

アパート経営の相続について解説してきました。

アパートを相続したら、誰が引き継ぐかを決めることがポイントで、相続では被相続人の資産が基礎控除額を上回る場合は相続税が生じます。

相続したアパートは、「建て替える」「建て替えない」「売却する」の3つの選択肢がありますので、それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選択するようにしましょう。

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