古くから所有している土地を売却するのは苦労を伴います。
昔からの土地は境界が元々未確定である、境界標が飛んでいる、越境物が存在するなどの問題を抱えているケースが多いです。
普段は問題とならない境界や越境ですが、売却する際に問題となって顕在化します。
そこで今回の記事では、境界に問題を抱えている土地を売却する時の「手続き」についてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは境界の課題解決方法を理解し、売却に向けて行動を起こせるようになることを約束します。
土地売却手続きに当たっての売主の義務
土地を売却する売主は、売買の目的物について、現地において境界標や杭、ブロック塀等を基準として隣地との境界を買主に明示する義務があります。
この境界明示は形式上、引渡の時に行うことになります。
引渡時に行われる境界明示はむしろセレモニー的な作業と言えます。
実際には境界の明示は購入希望者に対して、売買契約をする以前から明示するもの。
売買活動に入る前に境界を明示できる状態にしておくことが理想的です。
境界に関しては、マンションやディベロッパーが開発した戸建分譲用地等、ディベロッパーから購入した不動産であれば境界が確定していることが通常です。
昔から持っている土地が問題になるケースが多い
そのためマンションや戸建分譲用地を売却するような場合であれば、境界が問題となることはあまりありません。
境界が問題となるケースは昔から持っている土地に多いです。
特に相続で引き継いだような土地は、測量すら行っていない土地も多く、境界が明示できない状態の物件が少なくありません。
境界が明示できる状態になっているのか確認する
そのため、土地の売却を検討する際は、境界が明示できる状態になっているかどうか確認する必要があります。
ディベロッパーから購入した戸建分譲用地でも、境界標が飛んで無くなってしまっていることがあるので、一度確認してみてください。
境界標が飛んでいるだけの場合は、隣地所有者の立会の元、境界標を再度復旧させる必要があります。
境界を明示できる状態にすることが、土地を売却するための第一歩。
境界明示については下記記事でさらに詳しく解説しています。
以上、ここまで土地を売却する際の売主の義務について見てきました。
それでは次に境界確定を確認する方法について確認します。
土地の境界確定と測量
境界が確定しているかどうかについては、簡単に確認できる方法があります。
それは、「確定測量図」を保有しているかどうかです。
確定測量図は境界確定図などとも呼ばれますが、「確定」という言葉が図面名称に入っているかどうかがポイントになります。
測量図の名称が「○○確定図」とか「確定○○図」などになっていれば、境界が「確定」しているという証になります。
境界には「隣地所有者の境界」と「公道との境界」の2種類ある
境界には2種類あります。
1つは、隣地所有者との境界です。これは「民々」の境界と呼ばれています。
もう1つは市道、県道などの公道との境界です。これは「官民」の境界と呼ばれています。
境界が確定している状態とは、民々も官民も両方の境界が確定していることを指します。
良くあるパターンが、民々の境界は確定しているが、官民は確定していないというケースが多いです。
売主の本人は、隣地との民々の境界は確定しているという記憶があるため、境界は確定していると認識している人もいますが、官民の境界は確定していないというケースもあります。
現況測量図では境界は全て確定していないことになる
隣地との境界標があっても、官民の境界が確定していない場合は、現況測量図という名前で測量図が残っている場合があります。
現況測量図では境界は全て確定していないことになります。
また法務局には地積測量図という名称の実測図が備わっています。
しかしながら、地積測量図も確定測量図とは異なるため、地積測量図のみでは境界が全て確定しているとは言えないのです。
境界が確定している場合は「筆界確認書」がある
また、境界が確定している場合には、それぞれの隣地との所有者との間で「筆界確認書」と呼ばれる境界確認書があります。
筆界確認書も境界確認書や境界承認書など、様々な名称で呼ばれていますが、標準的な書式は以下のようなものになります。
筆界確認書
○○○○( 以下甲という。)と△△△△(以下乙という。)とは、土地の筆界に関し、平成 年 月 日現地において立会いし、次のとおり確認した。
1 筆界を確認した土地の表示
甲の土地
乙の土地
2 甲及び乙の筆界の状況
別紙測量図朱線のとおり。
以上のとおり甲及び乙は、それぞれの筆界を確認したことを証するためこの確認書を2通作成し、各自その1通を保有する。
平成 年 月 日
甲 住 所
氏 名 ○○ ○○ 実印
乙 住 所
氏 名 △△ △△ 実印
筆界確認書のポイントは実印を押す
筆界確認書のポイントは実印を押すということ。
お互いの印鑑証明書を添付しておくと間違いがありません。
尚、官民境界の場合は、このような筆界確認書は通常存在しません。
官民の場合は、境界が確定していれば、通常、役所に境界査定図と呼ばれる名称の図面が備え付けられています。
前面道路が市道なら市役所です。誰でも閲覧できますので、官民が確定しているかどうか、役所で調べておきましょう。
土地の売買においては、「確定測量図」の他、印鑑証明書添付の筆界確認書まであると完璧です。
以上、ここまで境界確定と測量について見てきました。
実は他にも買主が気にするポイントとして「越境」があります。次に説明します。
買主が気にする越境は覚書で対処
境界の明示は義務ですが、それ以外に買主が非常に気にする部分があります。それは「越境」です。
越境には隣地から越境を受けている場合と、自分の土地から隣地へ越境してしまっている場合が有ります。
買主は、両方とも気にします。
できれば売却までに越境の問題は隣地所有者との間で解消しておきたい部分。
ほとんどの場合、越境はすぐには解消できないものが多いです。
越境の覚書を締結する
そこで越境に関しては、買主が気にする部分を「越境の覚書」として締結することで売却の準備を行います。
買主が気にするポイントは
- その越境を隣地所有者も認識しているか
- 将来越境を解消する意思があるか
という2点になります。越境の覚書については、上述の筆界確認書とは別の書面として締結しておきます。
越境の覚書の書式は以下のようになります。
覚 書
○○○○( 以下甲という。)と△△△△(以下乙という。)とは、甲所有の後記表示(1)記載物件および乙所有の後記表示(2)記載物件の双方に越境している部分(以下「越境部分」という。)の処置につき次のとおり合意しました。
第1条 甲および乙は越境部分が別添図面記載のとおりであることを互いに確認します。
第2条 甲および乙は将来、双方所有の建物の再建築を行なう際、越境部分を自己の責任と負担において撤去するものとします。
第3条 甲は後記表示(1)記載物件を第三者に譲渡した場合、当該第三者に対してもこの覚書の内容を継承させ、効力が及ぶものとすることを確認します。
第4条 乙は後記表示(2)記載物件を第三者に譲渡した場合、当該第三者に対してもこの覚書の内容を継承させ、効力が及ぶものとすることを確認します。
以上、合意成立を証するため、この覚書2通を作成し、甲・乙署(記)名押印の上、各1通を保有します。
平成 年 月 日
甲 住 所
氏 名 ○○ ○○ 実印
乙 住 所
氏 名 △△ △△ 実印
以上、ここまで越境の覚書について見てきました。
それでは次に土地を分筆(一筆の土地を数筆の土地に法的に分割すること)して売却する場合について見ていきましょう。
分筆して土地を売却する場合は境界確定が必須
単純に土地を売却するだけの場合、仮に隣地との境界が確定できなくても、売主と買主間で筆界確認書が取得できないことの合意を得ることができれば売却は可能です。
しかしながら、土地を分筆して売却する場合は、分筆作業に確定測量図が必要となるため、境界確定が必須となります。
分筆とは土地をいくつかに分けることです。
境界確定は費用と時間がかかるので注意
境界確定には費用と時間がかかり、売却スケジュールが大きく変更してしまう可能性が有るため、注意が必要です。
確定測量に関しては、費用は100万円前後、時間は半年以上というのが1つの目安となります。
境界確定には、特に官民査定に時間を要します。官民の境界を確定することは、道路の反対側の土地所有者の同意も得ることが必要となります。
道路の反対側の土地の分筆状況によっては、所有者が多くなることがあります。
利害関係者が増えるほど、調整は難航するため、官民の境界確定には時間がかかってしまうのです。
そのため、相続して土地の一部を分筆して売却したい場合は、時間をかけて準備する必要があります。
分筆して土地を売却する方法については下記記事でさらに詳しく解説しています。
境界の問題に強い不動産会社を探す
これまで境界未確定の土地売却に関して説明してきました。
ただし、これを素人で考えてもなかなか解決しないのも事実。
一番の解決方法は不動産会社のプロに相談すること。
中でも境界問題に強い不動産会社を探すことが先決です。
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---|---|---|
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イエウール | × | × |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | × | ○ |
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まとめ
境界未確定の土地を売却する時の手続きと注意点について見てきました。
土地を売却する際は、自分の土地の境界がどのような状況になっているのかを確認することから始めましょう。