法人が不動産売却をするときに気を付けるべき建物価格と消費税

法人が不動産売却をするときに気を付けるべき建物価格と消費税

この記事は法人で不動産の売却を担当している人向けに書いた記事となります。

個人は不動産の売却額に対して消費税は発生しませんのでご安心ください。

消費税は不動産の世界においては、とても分かりにくい税制になっています。

普段はあまり意識しない消費税ですが、法人が不動産を売却する際は、この歪んだ税制に頭を悩ます方が多いです。

こんな悩みをスッキリ解消!

  • 不動産売却と消費税の基本的な関係が知りたい
  • 築古の不動産を売却したが消費税を納め過ぎているような気がする
  • 税込み金額で売却したため、消費税がいくらなのか分からなくて困っている

結論からすると、築年数が古い土地建物を売却した場合、土地建物価格の割付方次第では損をしている可能性があります。

対策としては適切な土地と建物の価格を算出する必要があります。

そこで今回の記事では、法人の不動産売却について、特に「消費税」にフォーカスしてお伝えいたします。

株式会社グロープロフィット 代表取締役 竹内英二

【執筆・監修】不動産鑑定士・不動産コンサルティングマスター

株式会社グロープロフィット 代表取締役

竹内英二

日本土地建物株式会社にて、不動産鑑定や開発用地の仕入れ担当を11年間に渡り従事。オフィスビル・賃貸マンション等の開発も行っていたことから、土地活用・不動産投資の分野に強い。

資格不動産鑑定士・中小企業鑑定士・宅地建物取引士・不動産コンサルティングマスター・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン資格

1.不動産売却における「消費税」は法人特有の悩み

最初に不動産と消費税の基礎知識について解説します。

消費税の納税義務者は事業者。

課税事業者である法人または個人事業主は不動産を売却すると、買主から預り消費税を受け取ることになります。

個人(個人事業主を除く)は事業者ではないため、不動産売却における消費税は発生しません。

消費税は土地は非課税

ここで、不動産においては消費税はとても悩ましい問題があります。

消費税は土地については非課税ですが、建物については課税されるのです。

そのため土地建物総額が5,000万円の物件の消費税は単純に500万円とはなりません。

総額5,000万円のうち、土地価格が3,000万円、建物価格が2,000万円だとしたら、当該物件の消費税は200万円(=2,000万円×10%)となるのです。

不動産と消費税の関係については、下記に詳しく記載していますのでご参照ください。

不動産を売却した時に消費税の対象となるものは?費用を抑える方法は?
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以上、ここまで消費税は法人特有の悩みについて見てきました。

それでは次に建物と土地の基本的な割付方法について見ていきましょう。

2.建物と土地の基本的な割付方法

不動産の売買では、価格交渉も多いため、最終的に売却価格は「総額でいくら」という感じで決まることが多いです。

特に収益物件の取引の場合は、収益を利回りで割って求めた収益価格で取引されることが多いことから、土地建物価格の内訳が分からないことがほとんど。

逆に言えば、不動産は土地がいくら、建物がいくらという形で積み上げて取引されるケースの方が稀です。

そのため、土地建物の内訳価格は総額を後から振り分けるということが多いです。

土地建物価格に分ける理由は、もちろん消費税額を計算するためです。

固定資産税評価額を使う方法

総額を土地建物価格に振り分ける最もオーソドックスな方法としては、土地と建物の固定資産税評価額の割合で割り付けるという方法です

例えば、売却した不動産の土地と建物の固定資産税評価額か以下のような価格だったとします。

不動産固定資産税評価額割合
土地3,000万円60%
建物2,000万円40%
土地建物合計5,000万円100%

ここで、今回売却した不動産の土地建物総額が8,000万円だったとします。

そうすると、建物価格は上表の建物価格割合を用いて以下のように計算されます。

建物価格 = 実際の売買価格 × 固定資産税の建物評価額割合 = 8,000万円 × 40% = 3,200万円

よって、土地建物総額が8,000万円の物件の消費税は以下のようになります。

消費税 = 建物価格 × 消費税率 = 3,200万円 × 10% = 320万円

固定資産税評価額を利用して建物価格を求める方法は、「こうしなければならない」という方法ではありません。

あくまでも建物価格を求める一つの方法として認められているに過ぎません。

別の方法で土地建物の時価が把握できるのであれば、その方法を用いても構わないのです。

固定資産税評価額は、どの不動産にも評価額がついていますので、土地建物価格の割付に利用するのが便利というだけです。

ここまで建物と土地の基本的な割付方法について見てきました。

それでは次に固定資産税評価額についてもう少し深掘していきましょう。

3.固定資産税評価額の特徴

固定資産税評価額は、基本的には固定資産税を徴収するための評価額。

その他に、不動産取得税や登録免許税を計算するための根拠となる評価額でもあります。

つまり時価ではなく、国が税金を徴収するために設けた税金計算用の価格です。

固定資産税評価額は、土地と建物で以下のような特徴を有します。

土地評価額の特徴

土地については、おおむね地価公示価格の70%が土地の固定資産税評価額となります。

地価公示価格は、一応、時価相当価格という位置づけ。

土地の固定資産税評価額は時価の70%ということになります。

価格の種類時価に対する割合
地価公示価格100%
相続税路線価評価額80%
固定資産税評価額70%

つまり、固定資産税評価額が700万円の土地があったとすると、その土地の時価は1,000万円ということになります。

ただし、これはあくまでも建前上の話で合って、1,000万円がピッタリこの土地の時価というわけではありません。

建物評価額の特徴

建物の固定資産税評価額は以下のような性質を持ちます。

この関係は主に新築当初の建物評価額に当てはまります。

価格の種類新築工事に対する割合
建物固定資産税評価額50~60%

数年前までは新築当初の建物固定資産税評価額は、新築工事代金の約50%程度でしたが、近年評価額が上がってきたため、新築工事費の約55%程度が建物固定資産税評価額に近い水準になってきました。

以上、ここまで固定資産税評価額の特徴について見てきました。

それでは次に固定資産税評価額で割り付けた場合の問題点について見ていきます。

4.固定資産税評価額で割り付けた場合の問題点

繰り返しますが、固定資産税評価額は国が税金を徴収するために設けた税金計算用の価格です。

固定資産税は市区町村税ですが、市区町村にとっては大切な税収です。

仮に、もし固定資産税評価額が毎年のように変化してしまうと、税収がとても不安定になってしまいます。

そのため固定資産税評価額は、3年に1度しか評価替えが行われず、しかもほとんど変化することはありません。

築年数が古いと問題が顕在化する

特に建物については、新築時は請負代金の半額程度になります。

ただし、築年数が経過してもそこからなかなか下落しないというのが特徴です。

例えば、築25年以上の木造住宅を売買すると、建物価格はゼロとして、土地価格だけで売買されるようなことが良くあります。

この場合、建物の市場価格はゼロになっています。

ところが築25年以上の木造であっても、固定資産税評価額が何百万円か残っていることがほとんどです。

そのため、このような築古の木造住宅を、固定資産税表額を使って土地建物価格に分けると、本来市場価格がゼロである建物に、建物価格が発生してしまいます。

仮に、法人がこのような築25年以上の戸建住宅を売却した場合、固定資産税評価額で土地建物価格の割付を行うと、実態は建物価格がゼロであるにも関わらず、消費税が発生してしまうことになります。

このような現象は、鉄筋コンクリート造や鉄筋造等、構造を問わずして築年数の古い建物に全て発生します。

固定資産税評価額で土地建物価格を割り付ける方法を取ってしまうと、築年数が古い建物の場合は、建物価格が実際の市場価格よりも大きくなってしまうという問題が発生します。

建物価格が大きいと、預り消費税が増えるため、納税する消費税が無駄に増えることになります。

築古物件を売却した場合には、消費税を納め過ぎているということになりかねません。

築古物件で適切な税金を納めるためには、土地建物価格の時価を把握する必要があるのです。

ただし、築浅物件を売却する場合は、建物価格割合が実態よりも小さい確率が高いため、固定資産税評価額で割り付けた方が有利に働く可能性はあります。

このような場合は、堂々と固定資産税評価額を使って土地建物の内訳価格を決めましょう。

以上、ここまで固定資産税評価額で割り付けた場合の問題点について見てきました。

それでは次に適正な建物価格とする対処方法について見ていきます。

5.適正な建物価格とする方法は不動産鑑定士を使う

適切な消費税額を納めるためには、売却した不動産の土地建物価格を評価する必要があります。

そのためには、不動産鑑定士による不動産鑑定評価書や不動産調査書(以下、「鑑定評価書等」という)が必要になります。

鑑定評価書等を取得し、土地建物価格の時価を求め、顧問税理士に鑑定評価書等を出して消費税を計算してもらう必要があります。

査定については、税務署に対策としての資料となるため、これは無料の不動産一括査定サイトの査定では代用できません。

鑑定評価書等は有料となってしまいますが、物件価格が大きければ、節税効果も大きく、鑑定評価を依頼してもペイできます。

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最後に避けるべき税込み価格売却について見ていきます。

6.避けるべき税込み価格売却

法人が不動産を売却する場合は、税込み価格での売却は避けましょう。

税込み価格で売却してしまうと、総額の中に

  1. 土地価格
  2. 建物価格
  3. 建物価格

に対する消費税の3つの変数が含まれてしまいます。

これらの3つの要素を後から割り付けるのは至難の業です。

ただし、残念ながら実際は税込み総額で売却してしまうことは良くあります。

理想としては、売買代金が決まった時点で、鑑定評価書等を取得し、土地と建物の内訳価格を出すことをオススメします。

後から建物価格の割付に困らないためにも、特に築年数の古い不動産を売却した場合には、早めの対応を取るようにしましょう。

7.まとめ

法人が不動産売却をするときに気にすべき建物価格と消費税について見てきました。

築古の不動産売却の場合は、土地建物価格を実態に合わせることが、節税に繋がります。

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