これからマンションを売却しようとする人は、1つだけ知っておくべき事実があります。
中古マンションは一般的に売出価格と成約価格が異なるという点です。
中古マンションの売却では、「値引交渉」を受けることがほとんどです。
交渉という過程を経て最終的に成約価格が決まります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 交渉なんてやったことないし、どうしよう
- 交渉を受けてしまったらどのように対処して良いか分からない
- 交渉を受けた場合の対処法や注意点を知りたい
そこで今回の記事ではマンション売却における「交渉」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは交渉に対する対処法や交渉に強くなる方法を知ることができます。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.マンション売却における「成約価格」は「売出価格」の71~87.7%
- 売出価格とはチラシに記載されている販売価格や売り希望価格のこと
- 成約価格とは実際に売買が決まった売買契約書に記載されている価格のこと
中古マンションの売却では、売出価格と成約価格が異なることが一般的です。
以下のグラフは東日本不動産流通機構のデータから、筆者が築年数別のマンションの売出価格単価と成約単価の値動きについてまとめたものです。
青いラインが売出㎡単価で、赤いラインが成約㎡単価になります。

マンション築年数別売出価格と制約価格
※東日本不動産流通機構より筆者が分析・集計
赤の成約価格のラインに表示されているのは、売出価格に対する成約価格の割合です。
統計的には成約価格は売出価格の71.0~87.7%の間で決まっていることが分かります。
平均でも1割以上は値引きしていることになります。
もちろん、物件によっては一切、値引せずに売却できる物件も存在します。
値引しない物件もあることを考慮すると、かなり多くの物件が「値引交渉」を受けているという実態が分かります。
適正な「売出価格」の設定方法
売出価格よりも成約価格の方が1割強くらい安いのが分かりました。
逆に言うと値引交渉があるのは「当たり前」という世界。
つまり売出価格は最初から高めに設定しておくことがポイントとなります。
もちろん、その分売れ残りのリスクも増えますので、時間的に余裕がある方になります。
売却予想価格が100であれば、売出価格は110と設定しておくようなイメージ。
実際に110で売出を開始し、100くらいまでの根切交渉であれば、予定通りとなります。
また、110で売出しところ、根切交渉の結果、105くらいで売却できれば売却としては大成功。
一方で、根切交渉の結果、売出価格が110の物件が、90でしか売却できなければ、売却としては失敗です。
90でしか売却できなかった場合、ひょっとしたら売却予想価格の見込みが甘かった可能性もあります。
適正な売却価格を把握するのが大事
売出価格の設定で重要なことは、適正な売却予想価格を把握しておくこと。
売却予想価格が高過ぎると、
- 売却できないか
- 大きく値引を受ける
かのどちらかになります。
ここで、売却前の査定は、無料の一括査定サイトを使うことがオススメです。
一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス

一括査定サービスの仕組み
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。

一括査定の流れ
無料の一括査定サイトの良いところは、複数社からの査定額が取れること。
査定額と言うのはあくまでも参考価格です。
査定を取ると、つい高い査定額に目が行ってしまいますが、注目すべきは「一番安い査定額」です。

査定額が高すぎる不動産会社は危険
一番安い査定額は、その査定額でしか売却できない可能性もある価格です。
売出価格については、「一番安い査定額」をベースに決めるのがポイントになります。
もし、査定額が、96、93、90のようなバラバラの価格になった場合、一番安い90をベースに100くらいの価格を売出価格に設定しておくのが、ちょうど良い売出価格になります。
売出価格が無理のない価格であれば、激しい価格交渉は避けられ交渉にも応じなくてよくなります。
理由は、買主がどんどん集まる状態になるから。
またちょっと値引すれば売れる価格であるため、なかなか売れないということも、あまりありません。
適正な売出価格の設定方法としては、一番安い価格をベースに、プラス1割を上乗せした水準とするのが良いでしょう。
一括査定のオススメは 「すまいValue」「HOME4U」
不動産一括査定は筆者が知っているだけでも30はあります。
その中でも
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- 【1都3県・大阪・兵庫・京都・奈良】売主専門の数少ない不動産会社「 SRE不動産(※旧ソニー不動産)
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
の4つを特にオススメしています。
筆者も不動産一括査定(「 すまいValue 」「 HOME4U
」「 イエウール
」)を利用しました。
下記は「 すまいValue 」を利用して「三井のリハウス」「東急リバブル」「三菱地所ハウスネット」より、査定結果をもらった写真。
とても分厚い査定書を見ながら、3社ともに丁寧に説明をしていただきました。

不動産査定書を3社より入手
下記表が「不動産売買の仲介件数が多い不動産会社」が「どこの不動産一括査定に参加しているのか」を調査した結果です。


不動産一括査定×不動産会社のマッチング表


不動産売買は超大手に偏っている
「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」が超大手と言われる不動産会社です。
超大手不動産会社3社で不動産仲介の約30%のシェアを持っています。つまり、不動産売買した人の中で3人に1人は、「三井不動産リアリティネットワーク」「住友不動産販売」「東急リバブル」のどこかに仲介を依頼していることになります。
それだけ日本の不動産売買は、超大手不動産会社に偏っているということ。
超大手不動産会社は販売活動に強く、豊富な買主を持っており、売りやすいとも言えます。
そしてこの3社に唯一依頼できるのが「 すまいValue 」です。なので「すまいValue」は外せません。
超大手不動産会社だけではなく大手・中堅・地域密着の会社とも比較する
ただ、超大手だけで満足してはダメ。不動産業界は特殊な縄張りなどもあり、A地域はX不動産が強い、B地域はY不動産が強いということが存在します。
また、超大手になるほど両手仲介の比率が高まります。
両手仲介とは、1社の不動産会社が売主と買主の両方の仲介を行うこと。買主と売主から手数料をもらえるため、利益相反の関係になる。アメリカは両手仲介は禁止されています。
売却を成功するためにも超大手不動産会社と併せて大手・中堅や地域密着の不動産会社も比較することをオススメします。
その場合は下記のような使い分けがいいでしょう。
不動産一括査定の賢い使い方
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額提示を希望」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。


一括査定 | 机上査定 | 備考欄 |
---|---|---|
すまいValue | 〇 | 〇 |
HOME4U | 〇 | 〇 |
イエウール | 〇 | |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | 〇 | 〇 |
一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく説明しています。
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不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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以上、ここまで売出価格と成約価格の現状について見てきました。
値引交渉は、内覧をした後に行われます。
2.内覧時の値引き交渉と対処法
売主にとって、マンション売却の中で最も重要な仕事は内覧です。
内覧とは、不動産会社が連れてくる購入希望者に対し、実際に物件の中を見せてあげる行為
中古マンションであっても、数千万円の買物であるため、購入希望者は「中を見ずに買う」ということは、まずあり得ません。
内覧は必ず行う必要のある売却のステップです。
マンションに住ながら売却する場合も内覧は必要になります。
居住中の売却の場合は、生活している状態をそのまま見せることになります。
内覧は物件のチラシを見て興味のある人が見に来てくれているため、売却まであと一歩の段階です。
そのため、売主としては、「これさえ乗り切れば売却できるかも!」と期待しちですが、残念ながら話はそんなにトントン拍子では決まりません。
内覧によって買わないことを決める人もいる
購入者は内覧によって「買わないことを決める」人もいます。
内覧をしてくれた人が全て購入してくれるわけではないということをしっかりと理解しておく必要があります。
内覧によって、スパッと購入を見送る人については、「縁がなかった」ということで深追いする必要はありません。
単純に条件が合わなかっただけですので、ガッカリする必要もありません。
一方で、問題となるのは、内覧によって、「○○万円まで下げてくれたら買うんですけど…」という人が現れた場合です。
このような人が価格交渉の対象となります。
値下げ要求しているくる人はチャンス
値下げ要求をしてくる人は、購入可能性の高い人。
先方の要求額が売主の許容範囲に収まっている場合には、応諾することで売買契約が可能になります。
購入希望者の中には単純に予算がないため、値下げを要求してくる人もいます。
また、予算は合っても物件の問題点を指摘して値下げを要求してくることもあります。
購入希望者にとってみると、内覧は「価格交渉のための粗探し」でもあると言えます。
内覧によってチラシでは分からなかった問題点が見つかれば、その部分を指摘して価格交渉をしてくる可能性もあります。
内覧は、売買の最終段階であると同時に、購入希望者への価格交渉材料のネタ提供の場でもあるということを知っておく必要があります。
例えば、備え付けのディスポーザーが壊れているというような「粗」が見つかれば、「その分、値引してください」という話になります。
値引き交渉された時の対処法
値引き交渉されたら価格を下げる代わりに、物件の問題点を容認させることです。
例えば、「越境している」「扉が故障している」等の問題点について、値段を下げる代わりに問題を容認してもらうことを交換条件とします。
何かネックになるような問題を抱えている場合には、問題点を先に容認させ、価格を下げることとを応諾しましょう。
以上、ここまで買主に交渉される内覧対応について見てきました。
値引交渉は、売出価格の設定が高過ぎれば交渉も激しくなります。
3.値引き交渉で不利になる状況と対処法
不動産の売買には「売り急ぎ」と「買い進み」という現象があります。
- 売り急ぎとは、売主が、慌てて売る、または、急いで売ることでと安く売ること
- 買い進みとは、買主が、焦って買う、または、急いで買うことで高く買うこと
もし、売主であるあなたが急いで売らなければいけない事情を抱えている場合、売主の立場としては、とても弱い状態です。
売り急ぎの状態であれば、売主としての交渉力は低く、買主に足元を見られてしまいます。
買主が思いっきり値引交渉をしてきても、応諾せざるを得ないことも多いです。
逆に買い進みの状況というのは、あまりありません。
買主が焦って買いたいというような状況であれば、逆に多少値上げすることも理論上は可能です。
ただし、買い進みの客が来るということは滅多にないことなので、買い進みを期待するのは止めましょう。
あなたが売主ということであれば、極力、売り急ぎの状態にはならないようにすることが重要です。
つまり、売却スケジュールは余裕を持つことが重要です。
例えば、引越であと1ヵ月後には売却しなければならないという状態は、既に売り急ぎの状態です。
通常、マンションの売却には3ヶ月程度の時間を要するため、十分な売却活動時間を設けていないと、その時点で価格交渉力が弱くなります。
値引交渉で大きく譲歩しないようにするためには、まずは「売り急ぎ」の状態にならないことです。
「①適切な売出価格」「②適切な売却期間」は、交渉に弱くならないための必須要件です。
売却はスケジュールに余裕をもって開始するようにしましょう。
以上、ここまで売り急ぎと買い進みについて見てきました。
適切な売出価格と適切な売却期間を設けても、交渉に弱くなる理由はまだあります。
そこで次に交渉に弱くなる理由について見ていきます。
「当て馬」がないと値引き交渉を受けやすい
売主で交渉に弱くなる人は、「当て馬」がない人です。
当て馬とは、優勢な者を牽制する目的で推し立てられた者。マンションの売却で当て馬とは、別の購入希望者のこと
不動産の売却においては、購入希望者が複数存在する限り、売主が交渉に弱くなることはまずありません。
例えば、2,000万円の物件を、「1.950万円で買います。」という買主Aが現れているとします。
その中で、買主Bが「1,900万円にしてくれたら買います。」と言ってきたとしても、買主Bの要求は跳ね除けることができます。
買主Aという当て馬がいる限り、買主Bの根切交渉は、100%応じる必要はありません。
つまり、購入希望者が複数存在するような状況を作り出せれば、気の弱い人でも価格交渉力が上がります。
交渉は気が強い・気が弱い、経験がある・経験がない等の要因では決まりません。
交渉が強くなる状況を作りだした人が、交渉が強くなります。
値引き交渉に強くなる方法
マンションの売却にあたっては、価格交渉力が弱くならないように、事前に交渉が強くなる状況を作っておくことが重要。
ところが、実際には当て馬を作れない売却をする人が多くいます。
具体的には不動産の売却を1社だけの不動産会社に依頼していると、当て馬を作ることが難しくなります。
仲介が1社の不動産会社だけにコントロールされてしまうと、逆に売主が買主の当て馬にされてしまいます。
例えば、ある不動産会社が売主Aと売主Bと同時に仲介の契約をしていたとします。
その不動産会社に買主Cが現れたとしたら、不動産会社が売主Aと売主Bを天秤にかけ、買主に物件を勧めるようになります。
買主1人に対して売主が複数存在するような状況になってしまうと、交渉力が弱くなります。
交渉に強い状態と交渉に弱い状態を図に表すと、以下のようになります。

マンション売却のおける交渉に強い状態と交渉に弱い状態
左図の状態は複数の買主が同時に現れている状態です。
一方で、右図の状態は複数の売主が同時に現れている状態になります。
右図のような状態になってしまうと、売主同士が当て馬となるため、交渉力が弱まります。
交渉に強くなるためには、左図のように同時に複数の買主を確保できる状態にすることが重要です。
複数の不動産会社に仲介依頼をする
複数の買主を確保するには、複数の不動産会社に仲介を依頼するのが現実的な方法。
不動産会社に仲介を依頼することを媒介契約と呼びます。
媒介契約には、
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
の3種類があります。
3つの契約形態の、特徴は以下の通りです。
契約形式 | 依頼者の制約 |
---|---|
専属専任媒介契約 | 他の不動産会社に重ねて依頼できず、かつ自己発見取引も認められない。 |
専任媒介契約 | 他の不動産会社に重ねて依頼できない。自己発見取引は可能。 |
一般媒介契約 | 他の不動産会社に重ねて依頼できる。自己発見取引は可能。 |

専任媒介と一般媒介の違い
ここで、専属専任媒介契約と専任媒介契約は、専任系媒介契約と呼ぶことにします。
一般媒介契約にする
専任系媒介契約では1社しか媒介契約が締結できませんが、一般媒介では複数の不動産会社に仲介を依頼することが可能。
例えば、一般媒介で複数の不動産会社(A社、B社、C社、D社)へ媒介の依頼をすると、下図のような形式になります。

一般媒介契約で複数の不動産会社に相談したイメージ図
買主との間に不動産会社を挟むことになりますが、不動産会社同士が競争している関係になるため、実質的には「当て馬」を作ることができるようになります。
逆に専任系媒介契約だと、不動産会社が契約している売主同士で、当て馬にされる可能性があります。

専任系媒介契約のイメージ図
媒介契約について下記記事でさらに詳しく説明しています。
-
一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の特徴とそれぞれの違い
媒介とは仲介やあっせんのこと 一般的には仲介と言うことの方が多いですが、法律用語で仲介のことを媒介と呼んでいます。 こん ...
続きを見る
無料一括査定を使う
このように複数の不動産会社に同時に仲介を依頼するには、前述した無料の一括査定サイトを使うのが便利です。
- 一括査定サイトであれば、査定を通じて複数の不動産会社とコンタクトを取ることが可能です。
- 一括査定サイトを使わないと、複数の不動産会社に同時にコンタクトを取るのは、とても手間がかかります。
一括査定サイトでは1回の情報入力で最大6社から査定を取ることができるため、複数社にコンタクトを取ることがとても楽にできます。
一括査定サイトを使ったら、必ず全ての会社に一般媒介で依頼するようにして下さい。
また売出価格も、一番低い金額を査定してきたところに、1割上乗せした金額で決定するのが良いです。
一括査定サイトを使えば、適正な売出価格を決めることができると同時に、一般媒介契約で複数の不動産会社へ仲介を依頼することも簡単にできます。
「 すまいValue 」「 HOME4U
」
などを使って、値引き工交渉に強い状況を作りましょう。
4.まとめ
マンション売却で必要な交渉と交渉力を強くする方法について解説してきました。
マンションの売却では、ほぼ値段交渉があります。
交渉に強くなるには、
- 適正な売出価格を設定すること
- 売却期間を十分に確保すること
- 一般媒介契約で複数の不動産会社に依頼すること
の3つが重要なポイントになります。
これから売却活動を始める人は、価格交渉に備えてしっかりと準備をしておきましょう。