近年、注目を浴びつつある「住宅瑕疵担保責任保険」は、その効果は瑕疵発見時の保険だけに留まりません。
瑕疵担保保険を付保した物件には、様々な税制優遇が設けられているため、買主に経済的なメリットがあります。
物件も売却しやすくなるため売主にもメリットがあります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 瑕疵担保以外にどのようなメリットがあるのか知りたい
- 買主が得られる税制優遇を知りたい
- 瑕疵担保保険の税制優遇まとめみたいな記事を読みたい
結論としては、瑕疵担保保険を付保すると「登録免許の減税」「不動産取得税の減税」「住宅ローン控除」「すまい給付金」「贈与税の住宅取得等資金の非課税制度」が優遇されます。
そこで今回の記事では「瑕疵担保保険を付保したときの税制優遇」にフォーカスして、まとめ記事をお伝えします。
この記事を読むことで、あなたは瑕疵担保保険を付保したときの税制優遇をまとめて知ることができます。
既存住宅売買瑕疵保険とは
既存住宅瑕疵担保保険(以下、「瑕疵担保保険」と略)とは、住宅を売却後、一定の隠れた瑕疵(かし)が発見された場合に生じる補修費用などの経済的な負担を保険金で賄うことのできる保険
保険金の支払い対象となる主な費用は、「補修費用」「事故調査費用」「転居・仮住まい費用」等になります。
瑕疵担保保険を付保するためには、インスペクションと呼ばれる建物状況調査に合格することが必要となります。
瑕疵担保保険の効果は、瑕疵の補修費用等だけに留まりません。
不動産取得税等の購入者が支払う税金に優遇制度があるため、瑕疵がなくても購入者が確実に経済的メリットを受けることができます。
住宅を売却するにあたっては、優遇税制のメリットの方が、十分な効果を発揮します。
賢い買主の方の中には、税制優遇が受けられる瑕疵担保保険が付保された物件を探しているような人もいるためです。
瑕疵担保保険そのものの詳細が知りたい方は、下記にに詳しく記載していますのでぜひご参照ください。
次からは具体的に瑕疵担保保険を付保したときの税制優遇にはどんなものがあるかについて見ていきましょう。
瑕疵担保保険を付保したときの減税されるもの
瑕疵担保保険を付けていると下記のものが減税対象となります。
瑕疵担保保険で減税される税金の種類
- 【買主】登録免許税
- 【買主】不動産取得税
- 【買主】住宅ローン控除
- 【買主】すまい給付金
- 【買主】贈与税の住宅取得等資金の非課税制度
それぞれ見ていきましょう。
①【買主】登録免許税の軽減
登録免許税とは
登録免許税とは、土地や建物を取得する際、所有権の移転登記などを行う際に支払う税金
登録免許税は、一般的に買主が負担をします。
登録免許税は、以下の計算式で求められます。
登録免許税 = 課税標準 × 税率
※課税標準:固定資産税評価額
軽減措置
瑕疵担保保険が付保されていると、税率が以下のように変わります。
登録免許税の軽減には、所有権移転登記の他、借入に伴う抵当権設定登記に関してもあります。
登記の種類 | 課税標準 | 本則 | 軽減措置 | |
---|---|---|---|---|
売買による 所有権移転登記 | 土地 | 固定資産税評価額 | 2% | 1.5% |
家屋 | 固定資産税評価額 | 2% | 0.3% | |
借入に伴う抵当権設定登記 | 債権額 | 0.4% | 0.1% |
この軽減措置は令和4年3月31日までとなっています。
また、特定の住宅用家屋は減税処置が異なります。(詳細は国税庁のHPより)
適用要件
登録免許税の軽減措置の適用を受けるための中古住宅の要件は以下の通りです。
- 自分が住むための住宅であり、床面積の90%以上が居住部分であること
- 床面積が50㎡以上※であること ※床面積は登記簿上の面積になります。
- 取得後1年以内に登記をすること
- 以下のいずれかの要件を満たした住宅であること。
(ア) 木造などの非耐火建築物は築20年以内、耐火建築物は築25年以内であること
(イ) 築年数にかかわらず新耐震基準に適合する住宅であることが証明されたこと
(ウ) 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること(加入後2年以内のものに限る)
マンションは専有部分の床面積が対象です。
②【買主】不動産取得税の軽減
不動産取得税とは
不動産取得税とは、売買や贈与などによって土地や家屋を取得した場合に、都道府県が課税される税金
納税時期は、不動産の取得後、半年くらいのタイミングとなります。
不動産取得税は、「土地」と「家屋」のそれぞれに課税が発生します。
瑕疵担保保険により軽減措置が生じるのは、「家屋」の不動産取得税となります。
家屋の不動産取得税は、以下の式で、税額が計算されます。
家屋の不動産取得税 = (課税標準 - 控除額) × 税率(3%)
家屋の課税標準額は、固定資産税評価額となります。
軽減措置
上式の「控除額」は以下のように中古住宅の建築年月日により異なります。
建築年月日 | 控除額 |
---|---|
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 100万円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 150万円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 230万円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 50万円 |
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 | 450万円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 |
平成9年4月1日以後 | 1,200万円 |
適用要件
不動産取得税の軽減措置の適用を受けるための中古住宅の要件は以下の通りです。
自分が住むための住宅であること
床面積が50㎡以上240㎡以下※であること ※床面積は、マンションの場合、専有部分の床面積割合により案分した共用部分の床面積が含まれます。
以下のいずれかの要件を満たした住宅であること
(ア) 昭和57年1月1日以降に新築された住宅であること
(イ) 築年数にかかわらず新耐震基準に適合する住宅であることが証明されたこと
(ウ) 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること(加入後2年以内のものに限る)
土地の軽減措置
土地の不動産取得税については、瑕疵担保保険とは無関係に、以下の軽減措置があります。
土地の不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 1/2 × 税率(3%) - 控除額
控除額については、以下の(ア)と(イ)のうちいずれか多い方の金額を控除額とします。
- (ア)45,000円
- (イ)土地1㎡あたりの固定資産税評価額×1/2×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×3%
土地の軽減措置を受けるためには、以下のいずれかの要件を満たす土地である必要があります。
- (ア) 土地を取得した日から1年以内に、その土地の上にある自己の居住用の中古住宅を取得した場合。
- (イ) 自己の居住用の中古住宅の取得後1年以内にその中古住宅の敷地となっている土地を取得していた場合。
③【買主】住宅ローン控除
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除とは、平成31年6月30日までに自分が住むための住宅の取得等を行うため返済期間10年以上の住宅ローンを利用した場合、居住年から10年間にわたり年末の借入残高に応じて所得税額などから一定額の控除を受けられる制度
住宅ローン控除額は以下の式で計算されます。
住宅ローン控除額 = 住宅借入金等の年末残高 × 控除率
控除率等
控除率等は以下のように決まっています。
項目 | 新築住宅 | 中古住宅 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
住宅の種類 | 認定住宅 | ZEH(ゼッチ) | 省エネ基準 | その他 一般新築住宅 |
中古 認定住宅 |
中古 一般住宅 |
控除率 | 0.7% | |||||
控除期間 | 13年 | 10年 | ||||
住宅ローン残高の上限 | 5,000 万円 | 4,500万円 | 4,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 | 2,000万円 |
1年間の控除額 | 35万円 | 31.5万円 | 28万円 | 21万円 | 21万円 | 14万円 |
トータルの最大控除額 | 455万円 | 409.5万円 | 364万円 | 273万円 | 210万円 | 140万円 |
適用要件
住宅ローン控除を受けるには、以下の要件が必要になります。
【前提条件】
- 借入金の償還期間が10年以上であること
- 合計所得金額が3,000万円以下であること(3,000万円を超える年は住宅ローン控除が利用できない)
※出典:国土交通省「住宅ローン減税制度利用の要件」より
【家屋の条件】
- 自ら居住すること
- 床面積が50m2以上であること
- 中古住宅の場合、耐震性能を有していること
耐用性能は下記のア、イのいずれかに適合している必要があります。
ア:築年数が一定年数以下であること
- 耐火建築物以外の場合(木造など):20年以内に建築された住宅であること
- 耐火建築物※の場合:25年以内に建築された住宅であること
(※鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など)イ:以下のいずれかにより現行の耐震基準に適合していることが確認された住宅であること
- 耐震基準適合証明書
国土交通大臣が定める耐震基準に適合していることについて、建築士等が証明したもの- 既存住宅性能評価書(耐震等級1以上)
既存住宅性能評価において、耐震等級1以上が確認されたもの- 既存住宅売買瑕疵保険に加入
住宅瑕疵担保責任保険法人による中古住宅の検査と保証がセットになった保険(既存住宅売買瑕疵保険)に加入していること。同保険への加入には現行の耐震基準に適合していることが要件とされている。【平成25年度税制改正により追加】※出典:国土交通省「住宅ローン減税制度利用の要件」より
④【買主】すまい給付金※2024年11月現在は対象者ほぼなし
すまい給付金は令和3年12月31日までに引き渡され入居が完了した住宅が対象のため、給付対象外の人がほとんどです。
一方で、下記の期間内に契約した場合かつ40㎡以上であれば、令和4年12月31日まで給付されます。
- 注文住宅の新築の場合:令和2年10月1日から令和3年9月30日まで
- 分譲住宅・中古住宅の取得の場合:令和2年12月1日から令和3年11月30日まで
すまい給付金とは
すまい給付金とは、所得税額や住民税額が少ないことから消費税率の引き上げに伴う住宅ローン控除の拡充をもっても負担軽減効果が十分に及ばない方に対して現金を給付する制度
住宅の引渡を受けてから1年以内に給付申請を行えば、住宅取得者の収入および持分割合により決定された給付額が指定の口座に振り込まれます。
給付額は以下の式で計算されます
給付額 = 給付基礎額 × 持分割合
持分割合とは、登記簿謄本に記載された持分割合になります。
給付額の目安
給付基礎額は、都道府県民税の所得割額によって決定されます。
所得割額は、市区町村が発行する課税証明書に記載される所得割額で確認できます。
以下に、扶養家族が1人の場合をモデルとしたときの給付基礎額の目安を示します。
ただし、神奈川県は他の都道府県と税率が異なるため、所得割額が異なります。
収入額の目安 | 都道府県民税の所得割額※ | 給付基礎額 | |
---|---|---|---|
政令指定都市以外 | 政令指定都市 | ||
450万円 | 7.60万円以下 | 3.800万円以下 | 50万円 |
450万円超525万円以下 | 7.60万円超9.79万円以下 | 3.800万円超4.895万円以下 | 40万円 |
525万円超600万円以下 | 9.79万円超11.90万円以下 | 4.895万円超5.950万円以下 | 30万円 |
600万円超675万円以下 | 11.90万円超14.06万円以下 | 5.950万円超7.030万円以下 | 20万円 |
675万円超775万円以下 | 14.06万円超17.26万円以下 | 7.030万円超8.630万円以下 | 10万円 |
実際の給付金については「すまい給付金シミュレーション」を使うといくらもらえるか簡易計算できます。
適用要件
すまい給付金制度は住宅ローンを利用しない方でも対象となります。
- 住宅の所有者:不動産登記上の持分保有者
- 住宅の居住者:住民票において、取得した住宅への居住が確認できる者
- 収入が一定以下の者[8%時]収入額の目安が510万円※2以下[10%時]収入額の目安が775万円※2以下
- (住宅ローンを利用しない場合のみ)年齢が50才以上の者※1
※1 10%時には、収入額の目安が650万円以下(都道府県民税の所得割額が13.30万円以下)の要件が追加されます。
※2 夫婦(妻は収入なし)及び中学生以下の子供が2人のモデル世帯において住宅取得する場合の夫の収入額の目安です。※出典:国土交通省「すまい給付金とは」より
すまい給付金上の住宅ローンとは、住宅の取得を目的とした金融機関等からの借入金で、返済期間が5年以上のものを指します。
⑤【買主】贈与税の住宅取得等資金の非課税制度
贈与税の住宅取得等資金の非課税制度とは
贈与税の住宅取得等資金の非課税制度とは、令和5年年12月31日までに贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である18歳以上の子または孫などが、父母または祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受けた場合に所定の額を限度額に贈与税が非課税となる制度
非課税限度額
非課税限度額は、下表の通りとなります。
対象住宅 | 非課税限度額 |
---|---|
良質な住宅用家屋 | 1,000万円 |
上記以外の住宅用家屋 | 500万円 |
震災特例法の良質な住宅用家屋 | 1,500万円 |
震災特例法の上記以外の住宅用家屋 | 1,000万円 |
ここでいう良質な住宅とは下記のことを指します。
- 断熱等性能級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること
- 耐震等級(構造躯体の倒壊防止)2以上若しくは免震建築物であること
- 高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること
※出典:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」より
中古住宅の要件
非課税制度の適用を受けるための中古住宅の要件は以下の通りです。
- 建築後使用されたことのない住宅用家屋
- 新耐震基準の適合するもの(※登記簿上の建築日付が1982年(昭和57年)1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)
- 建築後使用されたことのある住宅用家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するもの(※一定の証明書等により証明がされたもの)
- 耐震改修につき都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日まで耐震基準に適合するもの(※一定の証明書等により証明がされたもの)
贈与税の住宅取得等資金の非課税制度については、国税庁のページで解説されています。
まとめ
瑕疵担保保険を付保したときの税制優遇について見てきました。
各種の税制優遇要件の中に、「既存住宅売買瑕疵保険に加入していること」という要件があったことをお分かりいただけましたでしょうか?
瑕疵担保保険が付保された物件には、買主に優遇税制の様々な恩恵を与えることができます。
買主が物件を購入しやすくなるため、住宅を売却するときは、瑕疵担保保険の付保を検討してみましょう。