普段は馴染みのないものですが、不動産を購入したり売却したりするときに必ず登場してくるものに「登記簿謄本」があります。
登記簿謄本には、土地と建物の登記簿謄本には自分の名前や住所が記載されています。
また住宅ローンで抵当権を設定している方は、「借金をいくらしているか」まで載っています。
個人情報にうるさい世の中ですが、登記簿謄本では、あなたの借金の金額まで誰でも見ることが可能。
こんな悩みをスッキリ解消!
- この借金が記載されている登記の内容ってどうなるんだろう
- 登記の抹消費用にはいくらくらいかかるんだろう
- 登記の費用ってそもそも誰が負担するんだろう
そこで今回の記事では、不動産売却における登記費用、特に「抵当権抹消費用」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは登記費用について理解し、登記費用がいくらくらいかかるのか分かるようになります。
不動産売却で発生する登記とは
まず最初に不動産を売却するときに発生する登記についておさらいします。
登記の目的
登記は権利を公示するためにあります。
不動産は借りている人もいれば、無断で使っている人もいるため、所有権等の権利を公に示す仕組みがないと、誰が真の所有者なのか分かりません。
またお金を貸した人も、「私はこの人に、この不動産を担保にしていくら貸している」と明示しておかなければ、後からお金を貸す人に担保の権利を奪われてしまいます。
そのため登記簿謄本では、個人の名前や住所、借入金の額など、わざと誰でも見られるようにしています。
「個人情報が漏れてしまう」のではなく、わざと「漏らしている」のが登記です。
登記の内容
登記の中で一番重要なのが、所有権の登記です。
「どこの誰」がこの不動産の所有者であるかを明示しています。
これは登記簿謄本の「甲区」と呼ばれる部分に記載がされています。
また住宅ローンを借りている場合は、抵当権の設定登記がなされています。
抵当権とは、債務者(お金を借りる人)が不動産などを自分の手元に留めたまま、債務の担保として提供し、債権者がその担保目的物から優先的に弁済を受けることができる権利
このような所有権以外の権利の登記は「乙区」と記載されています。
抵当権を外すことを抵当権抹消という
抵当権の設定登記がされたままだと、仮に所有権が新たな買主に移転したとしても、金融機関が抵当権を実行すれば、物件が競売されてしまいます。
競売とは、住宅ローンが払えなくなった場合に、抵当権のついている不動産を売却することによりローン残債を返済する「法的手段」
そのような物件は誰も買ってくれません。
通常、売買と同時に物件から抵当権を外します。
これを抵当権抹消登記といいます。
不動産の売却で、通常発生する登記とは、
- 所有権移転登記
- 抵当権抹消登記
の2点を指します。
以上、ここまで売却で発生する登記について見てきました。
それでは次に登記費用は誰が負担するかについて見ていきましょう。
登記費用はどちらが負担するか
登録免許税と司法書士手数料
まず、「登記費用」という言葉は少し誤解を生みますのでここから正確な表現に訂正します。
登記費用は、
- 登録免許税
- 司法書士手数料
の2つに分解されます。
登記簿謄本の記載内容は、法務局(国の役所)の役人たちが変更します。
この人たちへの手数料みたいなものが、「登録免許税」と言われる税金になります。
登記変更手数料≒登録免許税のような感じです。
一方で、法務局に登記の変更を依頼するには、専門的な手続きが必要となるため、通常その手続きをプロである司法書士に代行で頼みます。
登記手続き代行手数料≒司法書士手数料のような感じです。
所有権移転登記と抵当権抹消登記
登録免許税については、
- 所有権移転登記(所有権に関する内容を書き換える)
- 抵当権抹消登記(抵当権の記載を削除する)
の2種類があります。
所有権移転登記の登録免許税に関しては、商習慣として買主の方で負担します。
本来登記費用は、売主と買主で折半すべきものですが、実際は新たに所有権を取得する買主の方で100%負担しています。
次に抵当権抹消登記の登録免許税に関しては、売主の方で負担します。
銀行が負担すべきではないかと思われる方も多いのですが、こちらも商習慣として売主が負担して抵当権の抹消を行います。
また司法書士に支払う司法書士手数料に関しては、売主が負担するものに関しては、「抵当権抹消登記のための司法書士手数料」のみとなります。
売主と買主の負担をまとめると以下のような感じです。
売主が負担する登記費用
登記費用 | 売主 | 買主 |
---|---|---|
登録免許税 | 抵当権抹消登記 | 所有権移転登記 新たな抵当権設定登記 |
司法書士手数料 | 抵当権抹消費用 | 所有権移転費用 新たな抵当権設定費用 |
もし売却物件に抵当権の設定がなければ、売主は不動産売却について登録免許税も司法書士手数料も一切発生しないことになります。
司法書士の手数料については下記記事でさらに詳しく説明しています。
以上、ここまで登記費用はどちらが負担すべきかについて見てきました。
それでは次に登記費用はいくらかかるかについて見ていきましょう。
売主・買主が負担する抵当権抹消の登記費用一覧
売主に発生する費用
売主と買主それぞれについて、登録免許税と司法書士手数料は以下のようになります。
登記費用 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
登録免許税 | 抵当権抹消 | 不動産1個につき1,000円 |
司法書士手数料 | 抵当権抹消代理手続き | 15,000円程度 |
ここで登録免許税は不動産1個につき1,000円です。
例えば、土地が2筆、建物が1個の不動産であれば、3,000円となります。
買主に発生する費用
登記費用 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
登録免許税 | 所有権移転 | 不動産の価額の1,000分の20 |
抵当権設定 | 債権金額の1,000分の4 | |
司法書士手数料※ | 所有権移転代理手続き | 45,000円程度 |
抵当権設定代理手続き | 35,000円程度 |
※司法書士手数料は、登記識別情報等の紛失がないことを前提とした価格
支払うタイミングは売買と同時
なお、登録免許税は税金ですが、後から納税通知書が届いて支払うような税金ではありません。
登記変更手続きをする際に、その場で法務局に納めます。
そのため、司法書士を使う場合には、司法書士に「登録免許税+司法書士手数料」をセットで支払い、登録免許税は司法書士に代わりに納めてもらう形になります。
以上、ここまで登記費用はいくらかかるかについて見てきました。
それでは次に登記に必要な書類について見ていきます。
不動産売却の登記に必要な書類
不動産の売却では、登記には
- 所有権移転
- 抵当権抹消
の2種類があることが分かりました。
この中で、所有権移転に関しては、売主は費用負担こそ発生しないものの、新たな買主へ所有権の登記を移転するために協力する必要があります。
所有権登記に必要な書類
所有権移転登記に必要な書類は以下になります。
必要書類 | 発行方法・メモ |
---|---|
権利証または登記識別情報 | 金融機関または保証会社が保管 |
委任状 | 司法書士へ登記を委任していることを法務局へ証明する書類 司法書士が作成して用意 |
印鑑証明書 | 登記申請日前3か月以内に発行されたもの |
固定資産税評価証明書 | 所有権移転の登録免許税税額算出のために必要 |
住民票 | 登記上の住所と現住所が異なる場合に必要 |
本人確認書類 | 司法書士が本人を確認するために必要な書類 顔写真付きの運転免許証などを用意 |
許可書(農地の場合) | 農地の場合、農地法に基づく知事の許可がなければ権利変動の効力が生じない 農地の売買の場合は、知事の許可証も必要 |
抵当権抹消に必要な書類
また、上記に加えて抵当権抹消登記に関しては、金融機関が書類を用意します。
金融機関が用意する書類としては、「弁済証書」「解除証書」「抹消登記委任状」等になります。
抵当権抹消については下記記事にも詳しく解説しています。
まとめ
不動産売却で売主の費用負担もある抵当権抹消費用について解説をしてきました。
不動産売却においては、物件に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消費用の登記費用が発生します。
土地と建物が1つずつの物件であれば、17,000円程度が登録免許税と司法書士手数料を合わせた登記費用となります。
まずはどの物件に抵当権がついているか、確認することから始めましょう。