土地活用が上手くできていない、資金が必要になったなど、人はさまざまな理由で土地を売却します。
なかには、相続時に相続税の納税資金を確保するために、自宅の土地の一部を切って売却したい方もいます。
土地を半分に切って売却したい方は、「どのように切ったら良いのか」と悩んでいる方も多いことでしょう。
また土地を切る際も建築基準法の基本的なルールを知らずに切ると、後からとんでもないことになります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 「分筆」と「分割」の違いについて知りたい
- 土地を半分に切る際の注意点について知りたい
- 土地を半分に切るべきかの判断方法について知りたい
そこで今回の記事では「土地を半分に分筆・分割して売却する方法」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことで、あなたは分筆と分筆の違いや土地の切り方を理解し、最低限知っておくべきルールや効果的な切り方を知ることができます。
ぜひ最後までご覧ください。
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【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター
株式会社グロープロフィット 代表取締役
大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。
資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士
1.分筆と分割の意味とそれぞれの違い
まず最初に分筆と分割の意味とそれぞれの違いについて見ていきましょう。
分筆(ぶんぴつ)とは土地を2つ以上に切ること、分割(ぶんかつ)は資産の分け方のことを指します。
筆(ふで)は土地の単位のこと。1筆の土地を2筆以上に分けることを分筆と呼ぶ。
分割は、資産の分け方のことであり主に相続で遺産を分け合うときに登場する言葉です。
2人の相続人が1つの土地を2人で「分ける」ときに「分筆」することがあります。
筆にはそれぞれ地番が振られており、分筆をすることによって新たな筆が作られ、地番が振られ、その土地の新しい登記簿謄本ができます。
土地を分筆すれば、独立した新たな土地が生まれるため、分筆した土地だけを売却することも可能です。
土地の分筆について見てきましたが、次に分割の種類について解説します。
分割には4つの種類がある
分割は、主に相続後に行う資産の分け方のことを指すことが多いですが、離婚の財産分与や、敷地内に別の建物を建てるケースも広義の意味で分割と捉えられることもあります。
相続で行う資産の分割方法には以下の4種類があります。
分割の種類 | 詳細 |
---|---|
現物分割 | 被相続人(亡くなった人)の現金や車、マンションなどの財産を現物でそれぞれの相続人に分ける分割方法 |
換価分割 | 不動産などの遺産を売却し、現金に換金する分割方法 |
代償分割 | 多くの財産を相続した一部の相続人が、他の相続人に代償金を払うことで不公平感を是正する分割方法 |
共有分割 | 主に法定相続分で遺産を分ける方法 |
それぞれの分割方法をイメージ図にすると以下のようになります。

4つの分割方法のイメージ
相続した不動産は、何もしなくても法定相続分で共有していますので、特に何も分割しないことを共有分割と呼ぶこともあります。
法定相続分(ほうていそうぞくぶん)とは、被相続人(遺産を残して亡くなった人)の財産を相続する場合にあたり、各相続人の取り分として法律上定められた割合のこと
分割は資産の分け方であるため、「分割 = 分筆」ではありません。
例えば換価分割する場合は、分筆せずにそのまま売却し、売却で得た現金を皆で分けることになりますし、現物分割であっても、1つの土地をAさん、他の現金や車をBさんのような分け方をする場合には、分筆は不要です。
分筆を伴うケースとしては、1つの土地を相続人間で現物分割するようなケースです。
兄と弟でそれぞれ土地を単独所有したい場合には、土地を分筆して兄と弟でそれぞれ単独所有する形になります。
以上、分割の種類について見てきましたが、次に分筆と分割を実際に行う際の手順について解説します。
2.分筆と分割の手順
分筆の手順
分筆の手順は以下の通りです。
分筆の手順
- 事前調査を行う
- 境界確定測量を行う
- 分筆案を作成する
- 立会い
- 境界標を設置
- 土地分筆登記を行う
土地を分筆するには、土地の境界が全て確定していることが条件です。
確定測量図がある場合には、すぐに分筆を行うことができます。
確定測量図とは、全ての境界が確定している場合に発行される実測図のこと
境界には、隣地の私有地との境界を指す民々境界と、公道との境界を指す官民境界の2種類があります。
確定測量図を作成するには、民々境界と官民境界の全てが確定していることが必要です。
分筆作業も確定測量図の作成も、土地家屋調査士に依頼します。
土地家屋調査士とは、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量を行う専門家のこと
既に確定測量図がある場合は、分筆登記だけを依頼します。
確定測量図がない場合には、確定測量図の作成と分筆登記の2つを依頼します。
確定測量図がある・ないケース毎における費用相場は以下の通りです。
ケース | 費用相場 |
---|---|
確定測量図があるケース | 25万円前後 |
確定測量図がないケース | 50万円前後 |
尚、確定測量図に関しては、周辺の地権者の数が多いほど金額が高くなります。
地権者とは、土地を使用収益する権利を有する者のこと
実際に見積もってみると金額が高いことが結構あるので、土地家屋調査士に見積もりを取ってから判断することをオススメします。
測量の種類や境界明示については以下の記事で詳しく解説しています。
-
境界明示って必要なの?土地売却の手順と測量の種類や費用について解説
初めて土地などの不動産を売却する方は、売却手順について知らない人がほとんどだと思います。 売却に必要な書類の多くは、「元 ...
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次に分割の手順について見ていきましょう。
分割の手順
分割の手順は、大きく分けて「遺言による分割」と「遺産分割協議による分割」の2種類があります。
遺言とは、被相続人の意思で遺産の分け方を決めることができる分割方法のこと
遺産分割協議とは、相続後に相続人同士の話し合いによって遺産の分け方を決める分割方法のこと
相続では、遺言書が残っている場合は、遺言に従って分割することになります。
遺言書がない場合は、遺産分割協議によって分割方法を決めます。
したがって、相続が発生したらまずは遺言書の有無を確認することが鉄則です。
遺言書があれば、遺言書に記載された分割方法に従い、遺産を分けるのが基本的な手順となります。
また、遺言書があっても遺産分割協議によって遺言書とは異なる方法で分割することも可能です。
ただし、遺産分割協議が成立させるためには、相続人の全員の同意が必要となり、1人でも反対者がいれば、遺言書に従うことになります。
遺言書がある場合、または、ない場合であっても、遺産分割協議を成立させるためには、相続人の全員の同意が必要です。
遺産分割する前に知っておきたい重要事項については、以下の記事で詳しく解説しています。
-
【家の相続財産の価値】遺産分割する前に必ず知っておきたい全知識
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3.分筆する時の注意点と固定資産税評価額の関係
土地を分筆する場合、最も重要なことは接道義務を確保することです。
土地は、建築基準法によって道路幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していないと建物が建てられないことになっています。
間口とは、敷地や建物を、主要な方向から見たときの幅のこと
幅員が4m以上の建築基準法上の道路に2m以上の間口で接することを「接道義務」と呼んでいます。
道路の幅が4m以上あれば、仮に火災が発生したときに消防車が前面道路まで到着することができ、2m以上の間口があれば、消防ホースを引き込み消火活動ができます。
消防の観点から接道義務というのが定められているのです。
上記の図のようなの分筆の仕方だと、土地Bが接道義務を満たさなくなるため、建物を建てることができません。
土地Bは無道路地と呼ばれ、利用価値が著しく劣ることから固定資産税評価額が安くなります。
無道路地とは、一般に道路に接していない宅地のこと
無道路地は、固定資産税は安くなりますが、利用価値がないため、土地売却も困難になります。
よって、上記図のような接道義務を満たさなくなる土地にする分筆方法はNGとされています。
接道義務を満たすには、次の図のような分筆を行います。
上記図の土地Bは旗竿地(はたざおち)と呼ばれる土地ですが、敷地形状が悪くなるため土地Aよりも価値は劣ってしまいます。
旗竿地(はたざおち)とは、道路(公道)に接する出入口部分が細い通路上の敷地になっていて、その奥に家の敷地がある形状の土地のこと
上記図のような分筆をした場合、土地Aも土地Bも同じ道路に面しているため、固定資産税評価額に大きな差が生じることはありません。
また、土地は行動に対して間口が広いほど、使い勝手が良い土地になるため、元々間口が狭い土地を更に分筆するのはオススメしないです。
上記図のABのような分け方であれば、分筆後の間口も広く確保できるため問題ありませんが、CDのような分け方をしてしまうと、CもDも使いにくい土地となってしまいます。
よって、元々間口の狭い土地は、無理に分筆せず、そのまま利用する方法を考えることをオススメします。
次に土地売却に強い不動産会社を見つける方法についてお伝えします。
4.売却するなら土地売却に強い不動産会社に相談
まず、不動産の売却は、不動産会社に査定してもらうところからスタートします。
しかし、あくまで査定額は不動産会社がいくらで売れそうなのか判断した価格です。
不動産会社ごとに、実績や算出方法が異なるので、不動産会社によって査定額がバラバラになってしまうことが一般的です。
さらに、物件のエリアや物件種別などで各不動産会社、得意・不得意とする領域が存在しています。
その為、不動産査定は複数の不動産会社に依頼して、比較検討することがとても大切です。

自分の物件が得意な不動産会社に頼むことが重要なポイント
ただ、自分の物件が得意そうな不動産会社を探すのは、素人にはなかなか難しいのが現実です。
複数の不動産会社を自分で調べて、1社ずつ何度も査定依頼を進めるのはとても大変です。
そんな時に不動産一括査定サイトの活用を強くオススメします。
不動産一括査定とは、売却を検討している不動産の情報を入力するだけで、複数の不動産会社から不動産の売却価格の査定を出してもらうことができるサービスのこと
便利な不動産一括査定サイトですが、筆者が知っているだけでも30はあります。
多くのサイトが乱立し、どのサイトを使えば良いか素人には分かりづらくなってしまっています。
実績や信頼性、提携不動産会社の質など、総合的に判断すると筆者は下記の3つをオススメします。
一括査定サイトのオススメ3選
- 超大手の不動産会社6社に唯一依頼ができる「 すまいValue
」
- NTTグループで安心、一番歴史があり実績抜群の「 HOME4U
」
- 地域密着の不動産会社にも数多く依頼ができる「 イエウール
」
※番外:一括査定と合わせて使うことで効果を発揮する「 SRE不動産(※旧ソニー不動産) 」
実績や信頼性はもちろんですが、上記3サイトは、机上査定での査定依頼が出来る点も大きなポイントになります。
机上査定とは、依頼時に入力した物件の基本情報を基に算出する査定方法で、不動産会社の担当者に物件を見てもらう必要もなく、家に居ながら気軽に査定額を知ることが可能です。
依頼時にメールで査定額を提示して欲しい旨を備考欄で伝えておけば、査定結果や担当者とのやり取りはメールで進むので、営業電話にも悩まずにやり取りすることも可能です。
オススメサイトの併用が鉄則
一括査定サイトごとに提携会社の性質は異なります。
都心に強い大手不動産会社に絞って提携している一括査定サイトもあれば、マンション売却に特化した不動産会社に絞って提携している一括査定サイトもあります。
自分にピッタリの不動産会社を見つける為には、複数の一括査定サイトの併用がオススメです。
サイト選びのポイントとしては、下記のような使い分けがいいでしょう。
所在地別地域毎のおすすめ
対象の物件種別
おすすめポイント
物件所在地に応じたおすすめの使い方
提携会社数・特徴
サイト名 | 提携会社数 | 特徴 | 公式サイト |
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![]() | 大手不動産6社 ※小田急不動産、住友不動産販売、野村の仲介、三菱地所ハウスネット、東急リバブル、三井のリハウス | ・大手不動産6社にまとめて査定依頼できる ※この6社に依頼できるのはすまいValueのみ | 公式サイト |
![]() | 1,300社以上 | ・NTTグループで安心、実績も抜群 ・フリーダイヤルの相談窓口あり ・大手、中堅、地域密着の会社にバランスよく依頼できる | 公式サイト |
![]() | 1,600社以上 | ・地方や田舎に強い | 公式サイト |
![]() | 1,800社以上 | ・匿名査定対応 ・地方含めて対応エリアが広い | 公式サイト |
![]() | 2,000店舗以上 | ・不動産メディア認知度No.1 ・最大10社から一括査定可能 ・不動産会社の特徴で選べる | 公式サイト |
2,500店舗以上 | ・マンションに特化 ・賃貸も同時査定可能 | 公式サイト | |
![]() | 1,700社以上 | ・サポート体制が充実 ・様々な物件種別に対応 | 公式サイト |
![]() | 約700社以上 | ・収益物件に特化 ・最大10社から一括査定可能 | 公式サイト |
一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく説明しています。
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不動産一括査定サイトは怪しくない?評判とデメリットを紹介
不動産一括査定サイトのオススメを先に見たい人はコチラ マンションや一戸建て、土地などの「不動産を売りたい」と考え始めたと ...
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これまで分筆・分割の違いや、分筆する時の注意点について見てきましたが、次に親の土地を相続して「分筆なし・分筆あり」で家を建てる場合の対応についてお伝えします。
5.親の土地に「分筆なし・分筆あり」で家を建てるケース
親の土地に家を建てる際に「分筆なし」「分筆あり」の対応について解説します。
分筆せずに家を建てる場合
既に親の家が建っているような広い敷地に、分筆せずにもう一軒の家を建てることは可能です。
建物を建てるには、「一つの敷地に一つの建物」というのがルールですが、一つの建物を建てる一つの敷地は分筆を要件とされていません。
一つの建物のために存在する一つの敷地のことを「建築敷地」と呼んでいます。
建築敷地は、建築確認申請時に「ここです」と示せれば良いので、分筆をしていなくても建物建築は可能です。
例えば上図のような地番123-1の土地に対して、分筆せずに建築敷地Aや建築敷地Bとして確認申請を出すことができます。
つまり1筆である地番123-1上に2以上の建物を建てることは可能です。
ただし、申請する建築敷地は接道義務を満たしていることが条件となります。
分筆せずに家を建てる場合、分筆費用を節約することができます。
また、隣地と境界で争いがある場合など、境界確定ができないときでも建物を建築できることもできます。
しかし、分筆せずに家を建ててしまうと、将来的に売却や相続がしにくくなります。
新たに建てた家を単独で売却する場合には、土地を分筆することが必要となります。
また、分筆せずに親の土地に子供が家を建てた場合、概念上は借地の関係が生じます。
土地を借りること、または借りた土地のこと。
土地が親の所有のままだと、土地の固定資産税は親が払い続けることになります。
地代を払うか、または無償で借りる使用貸借にするかルールを決める必要があります。
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分筆して家を建てる場合
分筆して家を建てる場合は、建築敷地と分筆後の敷地を合わせて分筆するのが基本です。
分筆して家を建てれば、土地の所有権を分けることができ、かつ権利関係が明確になるため、将来的に売却や相続がしやすくなります。
一方で、デメリットとしては、分筆費用がかかるということくらいなので、分筆して家を建てることをオススメします。
境界確定が難しい土地の場合、分筆して家を建てることは困難な選択肢となるので、注意が必要です。
注文住宅を建てるならホームズのカタログ一括資料請求がオススメ
分筆して土地を分けた後に、家を建てる際の具体的なプランが決まっていない方は、注文住宅カタログを一括資料請求するのがオススメです。
「 LIFULL HOME’Sの住宅メーカーカタログ比較サービス 」では、様々な工法の住宅メーカーからカタログを取得することが可能です。
カタログと合わせて予算や土地の広さに合う設計図も送ってくれるハウスメーカーもあります。
分筆した後の土地に見合った注文住宅を設計できる住宅メーカーを探したい場合は、LIFULL HOME’Sのカタログ一括資料請求を利用してみましょう。
まとめ
土地を半分に切って売却する場合の注意点と手順について徹底解説について見てきました。
土地の境界が確定していないと、そもそも分筆ができません。
確定測量には費用と時間がかかりますので、まずは境界が確定しているかどうかについて、確認することから始めましょう。