高齢者の単身世帯が増加する中、生活保護を受給している世帯は増えつつあります。
厚生労働省の発表によると、生活保護の世帯数は1,636,723世帯に上りました。
また新型コロナウイルスの影響により、仕事と収入の減少または喪失に見舞われ、生活困窮に陥る人々が増え始めています。
今後予算が限られてくる中で、受給世帯が増えるとなると、受給要件が厳しくなっていくことが予想されます。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 自分は生活保護を受けることができるのだろうか
- 資産を持っていると生活保護を受けられないというのは本当だろうか
- 不動産を持っているあの人は、なぜ生活保護を受けられるのだろうか
そこで今回の記事では、「生活保護と土地・建物」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは、生活保護の要件を理解し、自分が生活保護を受けられるかどうか判断できるようになります。
本記事の要点まとめ
- 住宅ローンが残っている家がある場合は生活保護を受けられない
- 住宅ローンが残っていなくても、家の売却活動をしているのを証明する必要あり
- 複数の不動産会社から査定を取り売却活動をしているのを証拠とする
※詳細は「4.保有していても生活保護が受けられる不動産」をご確認ください。
生活保護を受けるための要件
生活保護とはどんな制度なのか
生活保護とは、経済的な理由から生活が困窮している人に対し、「生活保護費」を支給し最低限の生活を保障する制度
そのため受給するためには、経済的な困窮に陥る状況になっていることを客観的に示す必要があります。
要件としては、世帯員全員が、利用し得る
- 資産
- 扶養義務者の扶養
- 能力
- その他あらゆるもの
の4つを活用しても、なお厚生労働大臣基準の生活費に満たないという状況であれば生活保護を受けることができます。
生活保護の4つの要件
言い換えると以下のような要件になります。
- 資産を持っていないこと
- 預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等をしないと生活保護が受けられません。ただし後ほど説明しますが、例外があります。
- 扶養義務者の扶養がないこと
- 親族等が働ける状態で援助を受けることができる場合は、生活保護が受けられません。
- 働ける能力がないこと
- 資産と援助もない上で、病気やけがなどにより働けない状態でない限り、生活保護は受けられません。
- その他あらゆるものを活用しても基準に満たないこと
- 年金や高齢福祉手当、身体障碍者福祉手当など他の制度で給付を受けている場合は、その活用が前提であり、それでも世帯の収入が厚生労働大臣基準の最低生活費に満たない場合でないと、生活保護は受けられません。
次に生活保護の扶助項目について見ていきましょう。
生活保護の8種類の扶助項目
生活保護は、以下の8種類の項目に分かれており、必要に応じて単給または併給されます。
扶助される額は、住んでいる地域や世帯の人数、家族構成などで扶助される額が変わりますので、お住まいの地域の役所や福祉事務所などに確認してください。
扶助名 | 内容 |
---|---|
生活扶助 | 食費、被服費、光熱費等の日常生活に必要な費用 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費 |
住宅扶助 | アパートの家賃や地代 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 |
介護扶助 | 介護サービスの費用 |
出産扶助 | 出産費用 |
生業扶助 | 技能習得費、就職支度費等の就労に必要な費用 |
葬祭扶助 | 葬祭費用 |
経済的自立のための資産の活用とは
生活保護の受給するためには、既に経済的自立のためにあらゆる努力をしつくした状態であることが求められます。
その努力の中に「資産を活用すること」があります。
生活保護の受給申請に行くと、まず福祉事務所から資産を「活用」するよう指導を受けます。
具体的な指導内容
「活用」なので、必ずしも不動産を「売却」ではありません。
例えば所有している不動産を安い賃料で貸している人に対しては、家賃を上げるように指導されます。
また自分が賃貸に住んでおり、所有している家に誰も住んでいないような場合には、所有している家に住むように指導を受けます。
さらに持ち家に住んでいて部屋が余っているようであれば、それを人に貸して家賃収入を得るように指導されることもあります。
売却という指導もある
これらは全て資産の活用の指導となります。
まずは売却の前に、持っている不動産を色々活用してお金を作ることが前提。
ただ、活用が実現できない場合には「売却」という指導になるのです。
そのため持ち家を持っているからといって、生活保護が受けられないという訳ではありません。
住宅ローンが残っている不動産を持っている場合は生活保護を受けることができない
持ち家の中で住宅ローンがまだ残っている家に住んでいる方は、生活保護を受けることができません。
このような人に生活保護を認めてしまうと、生活保護費によって住宅ローン返済をすることで資産を増やすことを援助してしまう形になるから。
生活保護は、あくまでも必要最低限の生活を維持してもらうためのお金であり、その個人の資産を増やすことではありません。
このような考えから、住宅ローンが残っている持ち家に住んでいる人は、生活保護を受けられないのです。
住宅ローン付の持ち家に住んでいる人は、まずその家を売却してからでないと生活保護を受けることができません。
恐らく、住宅ローン付の家に住んでいて生活保護を受けたい人が多いため、不動産を持っているイコール生活保護を受けられないという噂が浸透しているのだと思われます。
すぐに生活保護を受けたい場合は売却をする
住宅ローン付の土地や建物を持っているが、すぐにでも生活保護を受けたい場合は、売却する明確な意思を伝えて交渉する必要があります。
売却と言っても意思表示しただけではなかなか前に進みません。
福祉事務所も本当に売却活動をしているのか具体的な確認を求めてきます。
そのためには、実際に不動産査定を取り、不動産会社と契約をした上で、売却活動報告を受けておくことが必要です。
専属専任媒介契約や専任媒介契約であれば、不動産会社から定期的な報告を受けることができます。
不動産会社の協力も得ながら、スムーズな売却を行いましょう。
ここで、1点注意点があります。
もし売却前に生活保護が認められた場合、保護を受けた後に売却をすることになります。
そうすると、大きな売却代金が後から入ってくるので、保護開始から売却までに支給された生活保護費については返還の対象となります。
保有していても生活保護が受けられる不動産
住宅ローンのない家は保有できる
住宅ローンが付いていない家に関しては、保有することが認められています。
また家以外でも農地など、農業で使っている土地についても保有することが認められます。
さらに近い将来、駐車場にして活用する見込みがある土地であれば保有が認められます。
生活保護受給による固定資産税の減免も条件次第で可能
自治体によって適用要件や申請方法は異なりますが、生活保護受給による固定資産税の減免も行うことができます。
減免とは、条例の定めるところにより税額の一部又は全部を徴収しないこととする処分のこと
減免の対象となる固定資産は、以下の通りです。
- 生活保護法の規定による生活扶助、医療扶助、教育扶助、住宅扶助、介護扶助などの公的扶助を受ける方が所有する固定資産
- 生活困窮のため私的な扶助を受ける方で、所得金額の見込額が皆無又は生活保護基準相当額以下である方が所有する固定資産
上記に該当する人が所有する固定資産で、共有状態となっているものについては、その方の持分に係る固定資産税が減免対象となります。
共有とは、複数の者が同一の不動産を同時に所有している形のこと
減免の決定は、納税義務者からの申請を受け、役所の担当者が収入や資産等を調査し総合的に判断して行います。
自治体によって申請方法や適用要件が異なることがありますので、居住している自治体のホームページ確認や、役所の担当者に直接質問してみてください。
値段の高い不動産は売却指導がある
ただし、このような家であっても売却すると高い金額で売れるような不動産であれば、売却を指導されます。
高い金額というのは、福祉事務所それぞれによって基準が異なります。
2,000万円~3,000万円以上で売却できるようであれば、売却を指導されます。
一括査定サイトを使う
売却を指導される金額については、ハードルが少し低いです。
都心部の物件であれば、すぐにそのハードルを越えてしまいます。
自分の持ち家の価格をよく調べてから福祉事務所に行かないと、売却を指導される可能性があります。
不動産の売却価格を調べるには、無料の一括査定サイトが便利です。
不動産一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。
一括査定サイトでは6社程度の不動産会社から一度に査定額を取ることが可能。
1社だけの意見ではないため、福祉事務所に対して説得力を持って説明することが可能です。
基準以下の売却価格であれば、住み慣れた家を売却して引っ越す必要もありません。
まずは持ち家の値段をしっかりと把握することから始めましょう。
不動産一括査定のオススメは「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」
不動産一括査定サイトは似たようなサイトが多くかなり乱立しています。
その中でも信頼性や実績から下記4つをオススメしています。
上記を見ると超大手だけに依頼ができる「すまいValue」だけで良いように思えます。
ただし、不動産売却を成功させるなら大手だけではダメ。不動産会社には得意・不得意があるためです。
だから下記のように複数の不動産一括査定サイトを併用して大手・中堅・中小にも依頼できるようにするのが成功の秘訣です。
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額を送付してください」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。
どの不動産一括査定が「机上査定」「メール要望」が可能かの早見表は下記の通りです。
不動産一括査定サイト名 | 机上査定が対応 | メール要望 |
---|---|---|
すまいValue | ○ | ○ |
SUUMO | ○ | ○ |
HOME4U | ○ | ○ |
イエウール | × | × |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | × | ○ |
不動産一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
まずはどこか1-2社の査定依頼でOKという方は、下記の大手2社がオススメです。
評判がいい不動産仲介会社のおすすめランキングについては下記記事をご確認ください。
まとめ
生活保護を受けるために土地や持ち家は売却しなければならないか解説しました。
ローン付の土地建物を持っている方は、まず売却となります。
またローンが付いてなくても、値段次第では売却が指導されます。
土地建物を所有していて生活保護を受けたい人は、まずは「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」などの一括査定サイトで価格を調べることから始めてみるのが良いでしょう。