中古住宅の売買では、思わぬ不具合に見舞われるリスクがつきものです。
とくに、普段は目に見えない住宅の基礎部分については、買主はもちろんのこと、見えないゆえに居住していた売主すら気が付いていなかった不具合が出てくるかもしれません。
そうしたリスクに対応するのが「既存住宅売買瑕疵(かし)担保保険」です。
「瑕疵(かし)」とは、「通常有すべき品質を欠くこと」
こんな悩みをスッキリ解消!
- 既存住宅売買瑕疵担保保険とは?加入するべき?
- 保険料は誰が負担するのだろう?
- 加入すると、売主・買主にどのようなメリットがあるの?
そこでこの記事では、「既存住宅売買瑕疵担保保険」についてフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたは、既存住宅売買瑕疵担保保険の内容について知ることができます。
本記事のポイントまとめ
- 瑕疵担保責任とは、売却後に売主が負う損害賠償や契約解除等の責任のこと
- 既存住宅売買瑕疵担保保険とは、瑕疵が発見されたとき、その修繕費用を保険金でカバーできる保険のこと
- 瑕疵担保保険の補償対象となる部分は、住宅の構造耐力上主要部分および雨水の侵入を防止する部分(建物の物理的瑕疵のみ)
既存住宅売買瑕疵担保保険とは
まずは、この保険について理解するために重要な「瑕疵担保責任」を確認していきます。
瑕疵担保責任とは
中古住宅の売却においては、買主が物理的瑕疵をとても気にする傾向にあります。
物理的瑕疵とは、建物の雨漏りや家の傾き、シロアリによる床の腐食などを指します。
特に木造の戸建住宅では、躯体が老朽化しやすく、何らかの問題を抱えていると思われがちです。
鉄筋コンクリート造のマンションでも、横浜の傾きマンションの事件があったときから建物の瑕疵に関心が高い人が増えています。
民法では、売却後に瑕疵が発見されたとき、買主は「発見後1年間」は売主に対し損害賠償を、契約目的の達成できない場合は契約解除を請求できると定めています。
売却後に売主が負う損害賠償や契約解除等の責任を瑕疵担保責任と呼んでいます。
※2020年4月に民法が改正された後は、瑕疵担保責任は契約不適合責任と呼ばれることが多くなりました。
ただし、この民法の規定は、任意規定とされています。
任意規定とは買主の了解を得れば変更することができる規定のこと
民法の原則だと売主の責任があまりにも重すぎるため、不動産の売買契約では、任意規定を利用し瑕疵担保責任の免責条項を定めることが一般的です。
瑕疵担保責任の免責条項では、売主の瑕疵担保責任期間を3ヶ月とすることが一般的。
また買主が了解すれば、瑕疵担保責任の責任期間を全部免責することも可能です。
不動産売買時の瑕疵担保責任については、下記記事でさらに詳しく解説しています。
売主が負うべきこれらの瑕疵担保責任を保険によってカバーする方法があります。
「既存住宅売買瑕疵担保保険」がそれに当たりますので、次でご紹介します。
既存住宅売買瑕疵担保保険とは
既存住宅売買瑕疵担保保険とは瑕疵が発見されたとき、その修繕費用を保険金でカバーできる保険
売主としては、瑕疵担保責任は無い方が良いですが、買主からすると、売主が瑕疵担保責任を負ってくれないほど不安になります。
例えば瑕疵担保責任の期間を3ヶ月としたとしても、もし4ヶ月目の初日に瑕疵を発見した場合、買主は誰にも瑕疵を訴えることができません。
売主としてはできるだけ瑕疵担責任を負いたくない、それに対して買主は売主に瑕疵担保責任を負って欲しいと相反する思いがあります。
よくあるパターンとしては、売主が瑕疵担保責任を全部免責すると、買主は値引きを要求してくるということ。
このように、売主が瑕疵担保責任は、値段にも影響してしまうため、責任の重さと価格のバランスを取るのは難しい課題でした。
そのような中、近年、既存住宅売買瑕疵保険(以下、「瑕疵担保保険」と略)が登場し、注目を集めています。
瑕疵担保保険は、買主が瑕疵を発見した場合、その修繕費用を500万円または1,000万円まで保証金でカバーできる保険。
瑕疵担保保険が付保されていれば、たとえ売主が瑕疵担保責任を全部免責していたとしても、保証付き物件として買主が安心して住宅を購入することができます。
では、瑕疵担保保険はどの部分までが対象となるのでしょうか。
瑕疵担保保険の補償対象となる部分と保証額
保険の対象となるのは以下の通り、住宅の構造耐力上主要部分および雨水の侵入を防止する部分です。
戸建住宅(木造・在来軸組工法)の場合
- 小屋組、屋根版、斜材、壁、横架材、柱、床版、土台、基礎(構造耐力上主要部分)
- 屋根、開口部、外壁(雨水の侵入を防止する部分)
共同住宅(鉄筋コンクリート造・壁式工法)の場合
- 屋根版、床版、外壁、壁、床版、基礎、基礎杭(構造耐力上主要部分)
- 屋根、排水管、開口部、外壁(雨水の侵入を防止する部分)
これらに瑕疵が発見された場合、保険が適用されます。
瑕疵担保保険の対象は建物の瑕疵のみ
瑕疵には下記5つがあります。
瑕疵の種類 | 具体例 | 瑕疵担保保険の対象 |
---|---|---|
物理的瑕疵(建物) | 建物:雨漏り、シロアリ、耐震強度不足 | 〇 |
物理的瑕疵(土地) | 土地:土壌汚染、地中埋蔵物 | × |
法律的瑕疵 | 法令等の制限により取引物件の自由な使用収益が阻害されているもの | × |
心理的瑕疵 | 取引物件で過去に自殺や殺人事件、火災、忌まわしい事件、事故など 心理的な面において住み心地の良さを欠く場合 |
× |
環境的瑕疵 | 近隣からの騒音、振動、異臭、日照障害、近くに反社会的組織事務所など 安全で快適な生活が害されるおそれが高いような場合 |
× |
瑕疵担保保険の対象となるのは、建物の物理的瑕疵のみ。
物理的瑕疵の中には、例えば土地に関しては土壌汚染や地下埋設物等も存在します。
これらの土地に関する物理的瑕疵は対象外です。
また、瑕疵には他に過去の自殺や忌まわしい事件等の心理的瑕疵も存在します。
心理的瑕疵についても、対象外となります。
瑕疵担保保険というのは、対象となるのが物理的瑕疵のみであるため、全ての瑕疵が対象となる訳ではありません。
保険対称は「建物の物理的瑕疵」のみであるため、やはり売主としては従来通り、瑕疵担保責任期間を3ヶ月などと限定する必要があります。
瑕疵担保保険の保証金額
瑕疵担保保険は、保証期間が1年間と5年間のタイプがあり、保証金額は1年間タイプで500万円と1,000万円、5年間タイプで1,000万円です。
表にまとめると以下の通り。
保証期間 | 1年 | 5年 | |
---|---|---|---|
保証金額 | 500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
以上、瑕疵担保保険の内容について見てきました。
では瑕疵担保保険に加入するにはいくら保険料がかかるのでしょうか?
瑕疵担保保険の加入料金と加入条件
保険料は保険会社や建物規模、保険内容によって異なります。
保険料は、おおよそ以下のような水準です。
【戸建住宅の場合】瑕疵担保保険料金
保証期間 | 1年 | 5年 | |
---|---|---|---|
保証金額 | 500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
100㎡~125㎡未満 | 4.0万円前後 | 4.2万円前後 | 6.5万円前後 |
125㎡~150㎡未満 | 4.5万円前後 | 4.7万円前後 | 7.7万円前後 |
【マンションの場合】瑕疵担保保険料金
保証期間 | 1年 | 5年 | |
---|---|---|---|
保証金額 | 500万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
55㎡~70㎡未満 | 3.3万円前後 | 3.4万円前後 | 4.3万円前後 |
70㎡~85㎡未満 | 3.4万円前後 | 3.5万円前後 | 4.7万円前後 |
保険料は、マンションよりも戸建の方が若干高めとなっている傾向があります。
瑕疵担保保険の加入条件
瑕疵担保保険に加入するには、まずインスペクションに合格しなければなりません。
インスペクションとは「視察・検査」の意味で、目視や計測等によって、住宅の基礎部分の劣化や性能低下の有無について調査すること
いわば、住宅版の健康診断といったところです。
インスペクションによって、瑕疵などがないか確認されたら合格となります。
私たちが医師のガンの診断を受け、ガンではないと判断されたらガン保険に加入できるのと同じです。
インスペクションは、売主・買主のどちらが行ってもかまいません。
売主にとっては、第三者機関の「お墨付き」を得た住宅で安心という付加価値で、希望する価格で早く成約に至る可能性があります。
買主にとっては、「お墨付き」により安心して購入することができます。
また、瑕疵担保保険に加入できることは大きなメリットになります。
もし、保険加入のためのインスペクションが実施されていない住宅であれば、買主は売主にインスペクションを求めることができます。
インスペクションを求められた売主は、進んで応じるようにしましょう。
拒否してしまうと、購入希望者に不安な点がある住宅なのではないかと疑念を抱かせてしまいかねません。
もしインスペクションの結果、不合格となった場合でも、売主は保険加入に必要な修繕のアドバイスを受けることができます。
また、買主がインスペクションを行った際、インスペクションに不合格となってしまう場合があります。
その場合、買主がインスペクションの結果を口外して風評被害が発生するリスクがあります。
買主がインスペクションを行う場合には、風評被害防止のため、売主・買主の双方で、調査結果に対する守秘義務を締結するなどの合意書を結んでおくことが重要です。
なお、インスペクションを行なう際は、5万円程度の検査費用が発生します。
ただし、この金額は住宅の広さによって変わってきますので参考程度にしてください。
以上、瑕疵担保保険の加入金と条件について見てきました。
では、保険料は一体だれが負担するのでしょうか。
瑕疵担保保険の費用負担は売主?買主?
保険の費用負担も、売主・買主のどちらがしてもかまいません。
売主が保険の費用を負担した場合は、売却後に万が一保険対象となる瑕疵が発見されても、経済的負担が確実に軽減されるというメリットがあります。
また、「お墨付き」があり、なおかつ保険に加入している住宅ということが付加価値になります。
買主が保険の費用を負担した場合は、購入後に瑕疵が発見されても、保険で保障されるので安心して購入できます。
瑕疵担保保険は買主に税金メリットあり
瑕疵担保保険に加入している住宅を購入することで、買主側には税金等のメリットがあります。
特に、築年数により税制優遇の適用外であった中古住宅も、瑕疵担保保険への加入によって優遇対象になるのです。
具体的には、次のような税金や給付金が対象となります。
瑕疵担保保険と税制優遇に関しては、下記に詳しく記載しています。
まとめ
既存住宅売買瑕疵担保保険について見てきました。
今後、中古不動産売買においては「既存住宅売買瑕疵担保保険」を目にする機会がますます増えていきます。
この記事で紹介したような情報を知っておくと、売主・買主双方ともにより良い条件で成約が可能となります。
中古住宅の売買は不安がつきものであるからこそ、保険を上手に利用して安心して取引しましょう。
瑕疵担保保険に加入するためのインスペクションの実施相談や売却計画の相談は、「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」などの不動産一括査定を利用して、複数の不動産会社に相談しましょう。