「お金に困っている人は騙しやすい」、残念ながら詐欺師はそう思っています。
お金に困っている人でも、高額な不動産を売り飛ばして高収益を上げることのできる任意売却は、詐欺師にとっては美味しいマーケットです。
人は切羽詰まると、普段では考えられないような行動をとってしまいます。
お金に困っている人は、詐欺に騙されやすい状況です。
そのため、任意売却を検討しようとしている人は、しっかりとした知識を持つ必要があります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- 任意売却の詐欺には会いたくない
- 任意売却の詐欺の手口を知りたい
- 任意売却の詐欺から身を守る方法を知りたい
そこで今回の記事では任意売却の「詐欺」にフォーカスしてお伝えいたします。
この記事を読むことであなたはどういうタイミングで詐欺師が現れ、どういう詐欺に会ってしまうのかを知り、その対策方法も分かるようになります。
なお、任意売却を考えるのは最終手段。
まずは、「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」などの不動産一括査定を利用して、しっかりと高く売ってくれる不動産会社をまず見つけることが大事。
不動産一括査定サイトについては、下記記事で詳しく解説しています。
任意売却詐欺と実際にあった事例
一番気になるのがどんな詐欺被害に合うのかということだと思います。
まずは理解しやすくするために、以下に任意売却の詐欺の典型的な事例を紹介します。
詐欺事例1:手数料を騙し取られる
先に手数料をだまし取り、その後何もせず、不動産会社とは連絡が取れなくなってしまうケース
そもそも不動産売買の仲介手数料は成功報酬のため、売却が決まる前に先に手数料を要求してくること自体が詐欺です。
これは任意売却でも同様です。
不動産会社はそもそも仲介手数料以外の報酬を受け取れないのが基本です。
また任意売却の仲介手数料は債権者(お金を貸している人)が支払うのが基本です。
債務者(お金を借りている人)の仲介手数料の負担はありません。
手数料を求められてきたら怪しいと思ってください。
詐欺事例2:不動産会社から債権者へ返済したと偽る
不動産の売却代金を不動産会社が取得し、不動産会社から債権者へ返済したと偽り、実は債権者へ返済されていなかったケース
任意売却の売買契約と引渡、および抵当権の抹消は全て同日で行います。
債権者等の利害関係人や司法書士が立ち会った状態で行われます。
そのため、債務者の知らないところで売買が行われると言うことは基本的にあり得ません。
任意売却は基本的には普通の売却と同じですので、不動産会社に代理権を授与するようなことはしては絶対にいけません。
不動産会社の立ち位置は、代理人ではなく、仲介の立場です。
詐欺事例3:売買代金の差額を騙し取る
実際に売却した代金よりも低い代金で売れたことを売主に伝え、売買代金の差額を騙し取るケース
任意売却では、売買契約と引渡を利害関係者ががん首揃えた状態で行います。
そのため、不動産会社か勝手に「売れました」と言って代金を受領すると言うのは基本的にあり得ないことです。
任意売却では契約の前に、債権者に売却代金の了解を取る必要があります。
不動産会社にせかされても、債権者に合意を取らない以上、そもそも勝手に売却できないことになっています。
詐欺事例4:買手が仲介する不動産会社とグル
買手が仲介する不動産会社とグルの買取業者であり、ろくに売却活動もせず、その買取業者に安く売却してしまうケース
任売業者と買取業者は基本的にはつながっているため、このようなケースは良くあります。
安く売ると言うことについて、どこまでが詐欺で、どこからが詐欺ではないのか、判別がしにくいのも事実です。
任意売却をしても、結局のところ、買取業者に売却することが多いです。
それであれば自分で買取業者を見つけて債権者へ買受人として紹介する方が納得感はあります。
買取業者については、一括査定サイトを使えば、自分でも効率よく見つけることが可能です。
詳しくは下記に記載していますので、ぜひご参照ください。
以上、ここまで任意売却詐欺と実際にあった事例について見てきました。
では、そもそも受託ローンの返済に困っている人が、なぜ詐欺に見つかってしまうのでしょうか。
そこで次に詐欺が登場するタイミングについてご紹介いたします。
詐欺師が登場するタイミング
ここでは、詐欺師が登場するタイミングを見ていきます。
結論を言うと「配当要求終期の公告」タイミングです。
何のことだかさっぱり分からないと思いますので、順を追って詳しく見ていきましょう。
配当要求終期の公告のタイミング
住宅ローンが払えなくて困っているという情報は、債権者(お金を貸している人)と債務者(お金を借りている人)との間に発生している問題であるため、外からは分かりません。
そのため、悪い詐欺にひっかからないのではないかという気がします。
ところが、「私は住宅ローンが払えなくて困っています!」と堂々と世の中に発表されてしまう瞬間があります。
それは競売手続きの中の「配当要求終期の公告」というタイミングです。
まず前提知識として、競売の手続き中にも任意売却へ切り替えることは可能です。
詐欺はそこを巧みに利用してきます。
詐欺の登場するタイミングを知るために、以下に競売の流れについて見ていきます。
競売の大まかな流れ
まず、住宅ローンの支払いが苦しくなった人が、住宅ローンを滞納し始めます。
金融機関からは督促状が届きます。
住宅ローンの滞納が3ヶ月以上続くと、銀行から「一括返済」を迫られるようになります。
銀行から一括返済を迫られると、債権者が銀行から保証会社や債権回収会社(サービサー)に移管されます。
登記簿謄本の抵当権者が保証会社やサービサーに変わります。
この段階で、たまたま謄本を見た人は、「あ、この人、競売にかかりそうだ」ということを感づく人もいますが、詐欺はわざわざしらみつぶしに謄本を見るわけではないので、この段階では詐欺に知られません。
債権者がサービサー等に移管されてから、放っておくと1~2ヵ月後に債権者が裁判所に競売の申立てを行います。
債務者には「競売開始決定」の通知が届きます。この段階でも詐欺にはバレません。
その後、1ヵ月ほどすると、裁判所から執行官や鑑定人がやってきて、不動産の現状調査を行います。
近所の人がジロジロ見る場合もありますが、それが何の調査なのかは近所の人には分かりません。
そのため、まだこの段階でも詐欺にはバレません。
不動産の現状調査の1ヵ月後、裁判所は「配当要求終期の公告」を行います。
あなたの物件が「これから競売になりますよ」ということを裁判所が公開します。
配当要求終期の公告を行う理由
配当要求終期の公告とは、元々、競売を申立てた債権者以外の債権者のために行います。
例えば、AさんがB銀行とC消費者金融からローンを借入していたとします。
この場合、債権者はB銀行とC消費者金融の2社です。
B銀行から競売の申出があった場合、C消費者金融はそのことを知りません。
このままだとC消費者金融は競売の売却代金から配当を受け取ることができません。
そのため裁判所は「配当要求終期の公告」でAさんの物件が競売になることをオープンにし、C消費者金融が名乗り出るのを待ちます。
C消費者金融はここで自分が債権者であることを名乗り出ないと、配当を受けることができません。
「配当要求終期の公告」でC消費者金融が自分も債権者であることを名乗り出たら、配当を受け取ることができます。
このように「配当要求終期の公告」は、本来、競売申立て人以外の債権者に名乗り出てもらうために行います。
詐欺が気付くのは配当要求終期の公告
ところが、この公告は裁判所に行けば誰でも閲覧することができます。
任売専門業者は、通常、常に裁判所に出入りをしています。
そのためこの公告を毎日のようにチェックしています。それは詐欺をする悪徳業者も同じです。
そのため、「配当要求終期の公告」によって債務者であるあなたの存在が、悪徳業者にもインプットされてしまいます。
「配当要求終期の公告」後は、任売専門の不動産会社からの営業電話やDMが来ます。
また自宅にもわざわざ訪問してきて任意売却のセールスをします。
競売申立て後であっても、途中で任意売却に成功すれば、競売を取り下げることは可能です。
詐欺業者はそこを上手く利用してきて、なんとか騙そうとするのです。
詐欺業者も、「配当要求終期の公告」後のタイミングで登場してきます。
そのため「配当要求終期の公告」以降は、詐欺業者もしつこく来るということを覚えておきましょう。
以上、ここまで詐欺が登場するタイミングについて見てきました。
では、このタイミングで登場してきた詐欺はどのような手口で騙してくるのでしょうか。
次に詐欺の手口について見ていきます。
詐欺によくある巧妙な手口
詐欺は「いかにも詐欺」という感じでは近寄ってきません。
「困っているあなたの味方ですよ」という雰囲気で近寄ってきます。
実際にお金に困っているあなたは、藁にもすがる気持ちで詐欺に助けを求めてしまいます。
詐欺の典型的な切り口は、以下の4つのフレーズです。
- 「任意売却の方が高く売れますよ。」
- 「任意売却なら引越代が出ますよ。」
- 「任意売却なら売却後に残った残債を返さなくても良いですよ。」
- 「競売では予納金の負担がありますよ。」
これらの常套句は全て間違いというわけではありませんが、必ずしも正しくはありません。
そこで、騙されないためにも一つ一つ解説していきます。
「任意売却の方が高く売れますよ。」
良く言われるのが、競売の売却価格は相場の70%という点ですが、これは誤りです。
競売では買受可能価額と呼ばれる最低競売価格を決定するために評価される売却基準価額というのが示されます。
売却基準価額は確かに相場の50~70%なのですが、実際に落札される売却価額は、市場に普通に売れるようなまともな物件の場合、売却基準価額の2倍くらいになります。
そのため、競売による売却額は相場の100~140%くらいであり、実は結構高いというのが実態です。
一方で、任意売却では買取業者が買受人になることが多いです。
買取業者の購入価額目線は、相場の80%程度です。
そのため、相場の100~140%で売却できる競売よりも実際には安いことが往々にしてあります。
ただ、結果的に競売の方が安かった、任売の方が高かったという話はあり得ます。
そのため「任意売却の方が競売よりも高く売却できるとは限らない」というのが正しい情報であり、「任意売却の方が競売よりも必ず高い」という訳ではないことに注意する必要があります。
「任意売却なら引越代が出ますよ。」
任意売却は債権者との間で売却代金の配分を自由に決めることができるため、売却代金の中から引越代も捻出しようと思えば「できる」のも事実です。
ところが、これはあくまでも債権者との合意を得られた場合に限ります。
複数の債権者がいる場合には、話し合いが上手くまとまらず、引越代が結局もらえないということもあります。
また売却額がそもそも低ければ、引越代も捻出できません。
そのため、引越代は必ず出るというわけではないことに注意をしましょう。
「任意売却なら売却後に残った残債を返さなくても良いですよ。」
これは完全に間違いです。
任意売却でも売却後に残債があれば、引き続き払っていかなければなりません。
ただし、これも話し合いの結果ですので、残債が少額で、かつ本人に支払い能力が無ければ、債務が免除されるということはあり得ます。
必ず全員が債務を免除されるようになるわけではないので、騙されないようにしてください。
また「任意売却後の残債は無担保債権だから、払わなくても取られるものが無いから大丈夫ですよ。」と言ってくる詐欺業者もいます。
これも嘘です。払わないと、給料等の差押があります。
また連帯保証人がいる場合は、連帯保証人にも差押が及び、大迷惑をかけることになりますので、注意が必要です。
「競売では予納金の負担がありますよ。」
予納金とは裁判所に納める手数料のようなお金です。
予納金は、債権者(お金を貸している人)が負担します。
ただし、競売の売却代金から予納金が差し引かれる形になるため、実質的には債務者が負担していることになります。
競売では、債務者が実際に予納金を用意する必要はありません。
債権者も売却代金の中から負担するため、予納金を債務者に求めてくることもありません。
債権者は予納金のデメリットを知ったうえで競売をしていますので、くれぐれも予納金を気にして詐欺に会わないようにしてください。
以上、ここまで詐欺の手口について見てきました。
ではこのような詐欺に会わないようにするには、どのようにしたら良いのでしょうか。
そこで次に詐欺に会わない方法について見ていきます。
詐欺にあわない方法
詐欺に会わないためにするには、
- 自分で買受人(購入者)を探してくる
- 信頼できる業者を紹介してもらう
の2点です。
自分で買受人を探す
任意売却は、必ずしも不動産会社を間に入れる必要はありません。
自分で買受人を見つけることができれば、それでも構いません。
特に、今の家にそのまま住み続けたい人であれば、親や親族が買受人になりますので、その場合は自分で買受人を探すことになります。
また、買取業者への売却であれば、今の時代であれば買取の一括査定サイトを使うことで買取業者も見つけることが可能です。
任意売却では結果的に買取業者へ売却されることが多いため、騙されるくらいなら、「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」などの一括査定サイトを使って自分で買取業者を見つけてしまった方が良いでしょう。
任意売却の詐欺は、基本的に間に入ってくる不動産会社が詐欺を行います。
そのため、仲介を行う不動産会社は、最初から頼まず、自分で買受人を探してしまえば、詐欺に会う必要はありません。
実際、自分で買受人を探して、「この人がいくらで購入すると言っているので、任意売却させてください」と債権者に持って行った方が、債権者から早く合意を取ることができます。
最も簡単な方法は、買取の一括査定サイトを使って、一番高い価格を提示する買取業者を探すことです。
買取に関しては、下記に詳しく記載していますので、ぜひご参照ください。
信頼できる業者を紹介してもらう
任意売却をする場合は、早めに債権者に相談することがポイントです。
住宅ローンの滞納が始まったら、すぐに債権者に相談してください。
少なくとも、債権者が「競売の申立て」をする前には、任意売却をしたい旨を伝えるべきです。
通常、住宅ローンの滞納が始まってから、競売の申立てが行われるまで、半年程度の時間があります。
その間に、債権者に任意売却を希望していることを伝えます。
詐欺に会わないためには、債権者に任意売却業者を紹介してもらうことがポイントです。
通常、債権者のところにはちゃんとした任売専門業者が出入りしていますので、債権者はその業者を快く紹介してくれます。
そもそも任意売却は債権者のために行うための売却ですから、債権者も自分たちが信頼している任売専門業者を使ってくれた方が安心できます。
詐欺で近寄ってくる怪しい業者は、配当要求終期の公告以降に登場してくる業者です。
その前に、信頼できる業者に依頼し、粛々と任意売却を勧めるようにしましょう。
以上、ここまで詐欺にあわない方法について見てきました。
最後に、詐欺に会うリスクまで取って本当に任意売却をする必要があるのか再考してみます。
そこで、次に大したメリットのない任意売却についてみていきます。
【筆者見解】大したメリットのない任意売却
一番のメリットは買受人を選べること
住宅ローンの一括返済を迫られて場合、一括返済を行う選択肢としては任意売却か競売の2択です。
そのうち、詐欺の無いのは競売です。
詐欺の可能性のあるのは任意売却のため、よほどのメリットが無い限り、任意売却を選ぶ必要性がありません。
上述したように、任意売却は競売よりも常に高く売却できるわけではありません。
また引越代も、交渉しないと勝ち取れない可能性があります。
任意売却や競売後に残った残債を返済するのは任意売却も競売も同じです。
また任意売却や競売後も2つともブラックリストには載ります。
そのため、突き詰めて考えると、任意売却にできて競売にできないこととは、「買受人を選べる」という点だけです。
実はそれ以外は、任意売却は競売と比べて、大して優れてはいません。
任意売却は、買受人を選べると言うメリットがあるため、引き続き、今の家に住みたいという方にとってはオススメです。
特に今の家に住み続けることを希望していない人は、「絶対に任意売却を選んだ方が良い」という理由がありません。
今の家に住み続けたい人は、その希望も含め、債権者に「今の家に住み続けたいので任意売却をしたいです」と伝え、債権者から任売専門業者を紹介してもらうようにしましょう。
尚、今の家に住み続けたい人は、そのノウハウは下記に詳しく記載していますので、ご参照ください。
自己破産する人は競売が向いている
また、自己破産を予定している人は、任意売却のメリットはありません。
自己破産では借金は無くなるため、少しでも長く住めることのできる競売の方がメリットです。
早く売っても、高く売っても、あまり関係ないので、自己破産を選択される方は、任意売却は選択肢から除外しても良いでしょう。
尚、連帯保証人がいる場合は、自己破産をしてしまうと、連帯保証人に残債請求が移ってしまいます。
連帯保証人に大迷惑をかけるため、自己破産をするときは、必ず連帯保証人の了解を取るようにしてください。
このように考えると、任意売却には大してメリットがありません。
詐欺に引っかかるくらいなら、割り切って競売を選択した方が安全です。
まとめ
任意売却の詐欺に引っかからないための基礎知識と注意点について解説してきました。
お金に困っている人ほど、冷静な判断がしにくい状況にあります。
配当要求終期の公告の後に近寄ってくる不動産会社には注意をするようにしましょう。