不動産などの相続で遺産を分割するには、「時価の把握」が欠かせません。
たまに、固定資産税評価額を見て、不動産価格を決めてしまう人がいます。
ただし、固定資産税表額は時価から離れているため、色々と面倒なことになります。
こんな悩みをスッキリ解消!
- どのように不動産価格を出したらいいんだろうか?
- 不動産鑑定士などにお願いした方がいいんだろうか?
- 無料の不動産査定でも問題ないんだろうか?
結論から言うと「無料の不動産査定」で何ら問題はありません。
ただし、いくつか知っておくべきことがあります。
そこで今回の記事では、相続の遺産分割などで時価を把握するときの「不動産査定の方法や注意点」をお伝えします。
この記事を読むことで、あなたは納得する不動産の査定方法が見つかり、具体的に査定の行動が移せるようになることを約束します。
相続不動産を査定する3つの方法と特徴
相続の遺産分割で揉める原因の一つに、不動産の評価額があります。
現金や有価証券は時価ですが、不動産は相続税評価額であるため、時価ではありません。
そのため現金と不動産を相続人同士で分けようとする場合、納税の根拠額を用いると、時価と相続税評価額が混在した状態で分割することになります。
時価に直すと、実は「兄よりも少なかった」とか「妹の方が得している」などの問題が生じてしまうのです。
そこで不動産の時価把握にはどのような方法があるか不動産の査定方法を見てみることにします。
少し専門的な話になるので、早いところオススメの査定方法が知りたいという方は「遺産分割に使うオススメの査定方法は不動産会社への無料査定」まで進んでください。
①相続税評価額から推定する方法
初めに相続税評価額から時価を推定する方法です。
相続税評価額は、土地については相続税路線価をベースとし、建物については固定資産税評価額をベースとしています。
土地の相続税路線価は時価の80%程度と言われています。
一方で建物の固定資産税評価額は、新築当初は請負金額の50~60%程度ですが、その後、築年数が経過してもあまり下落しません。
そのため建物の固定資産税評価額は時価とかなり乖離しており、建物の固定資産税評価額から時価を把握することは、ほぼ不可能と言えるのです。
また相続税評価額は、借家と自己使用でも評価額が異なります。
借家の場合、土地については貸家建付地評価減の適用があり、建物については借家権割合の分だけ評価が減額されています。
例えば、都心部の収益物件の場合、土地建物価格の時価はかなり高くなるため、時価と評価額が相当乖離してしまいます。
そのような不動産を相続税評価額で遺産分割してしまうと、かなり不公平感があるのです。
相続税評価額については下記記事さらに詳しく解説しています。
②不動産鑑定士による不動産の鑑定評価
次に紹介するのが不動産鑑定士による不動産の鑑定評価です。
これは有料での鑑定評価となり、時価の評価額が取得できます。
しかしながら、通常、相続人間の遺産分割協議でわざわざ不動産鑑定評価書を取得する方はほとんど居ません。
不動産鑑定士による鑑定評価書を取得するケースは、相続人同士で本格的に揉めてしまい、最終的に裁判を起こすようなケースの時です。
お互いの言い分を主張しあうため、原告または被告でそれぞれ不動産鑑定士を雇い、鑑定評価書をぶつけ合うような形になります。
不動産鑑定については下記記事さらに詳しく解説しています。
③不動産会社による無料査定
3つ目の査定方法としては、不動産会社による無料査定です。
無料査定では、今売れる売却予想価格を査定するため、その査定額はまさに時価となります。
不動産によっては相続税評価額と大きくかい離するような結果になります。
例えば底地などは相続税評価額よりも安くなります。また実際はほとんど宅地なのに、山林などで評価されている土地などは、時価は相続税評価額よりもかなり高くなります。
以上、不動産査定を行う3つの方法と特徴について見てきました。
では、この3つのうち、どの査定方法は遺産分割にオススメなのでしょうか?
遺産分割に使うオススメの査定方法は不動産会社への無料査定
遺産分割の協議の際、オススメの査定方法は、やはり不動産会社による無料査定です。
しかし、あくまで査定額は不動産会社がいくらで売れそうなのか判断した価格です。
不動産会社ごとに、実績や算出方法が異なるので、不動産会社によって査定額がバラバラになってしまうことが一般的です。
その為、不動産査定は複数の不動産会社に依頼して、比較検討することがとても大切です。
ただ、複数の不動産会社を自分で調べて、1社ずつ何度も査定依頼を進めるのは大変です。
そんな時に不動産一括査定サイトの活用をオススメします。
一括査定サイトの利用方法と流れ
一括査定サイトではまず「所在」と「物件種別」を入力します。
その後は面積や築年数、構造、間取りといった細かい情報を入力するだけです。
入力査定だけでは2~3分で査定を行うことが可能です。ただし、一括査定サイトでは、売却を前提に査定することが通常です。
一括査定サイトを利用した後は、不動産会社の各社から営業電話がかかってきます。
その際は、売却については、まだ意思が固まっていないことをきちんと伝えましょう。
不動産一括査定のオススメは「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」
不動産一括査定サイトは似たようなサイトが多くかなり乱立しています。
その中でも信頼性や実績から下記4つをオススメしています。
上記を見ると超大手だけに依頼ができる「すまいValue」だけで良いように思えます。
ただし、不動産売却を成功させるなら大手だけではダメ。不動産会社には得意・不得意があるためです。
だから下記のように複数の不動産一括査定サイトを併用して大手・中堅・中小にも依頼できるようにするのが成功の秘訣です。
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額を送付してください」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。
どの不動産一括査定が「机上査定」「メール要望」が可能かの早見表は下記の通りです。
不動産一括査定サイト名 | 机上査定が対応 | メール要望 |
---|---|---|
すまいValue | ○ | ○ |
SUUMO | ○ | ○ |
HOME4U | ○ | ○ |
イエウール | × | × |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | × | ○ |
不動産一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
まずはどこか1-2社の査定依頼でOKという方は、下記の大手2社がオススメです。
評判がいい不動産仲介会社のおすすめランキングについては下記記事をご確認ください。
ここまでオススメ査定サイトの利用方法と流れについて見てきました。
最後に不動産査定に成功するコツと注意点について触れておきます。
不動産査定に成功するコツと注意点
遺産分割協議では、「収益物件」や「底地」、「広大地」、「小規模宅地の特例と採用した土地」など大きな評価減を得ている不動産を優先的に査定することがコツです。
税理士の先生も不動産のプロではないため、相続税評価額通りに分割案を出してくる先生もたくさんいますので注意してください。
まずは相続人で合意して、不動産を再査定しなおすことから始めた方が良いでしょう。
最後に相続税評価額から推定する方法の具定例を説明しておきます。
相続税評価額から推定する方法の具体的な計算例
相続不動産の典型であるアパートや区分のワンルームマンションなどの収益物件を考えます。
収益物件の土地建物評価額は以下のようになります。
- 土地価格:路線価×(1-借地権割合×借家権割合)
- 建物価格:固定資産税評価額×(1-借家権割合)
ここで、以下の条件で収益物件の相続税評価額を計算します。
- 土地時価:100百万円
- 建物時価:100百万円
- 借地権割合:70%
- 借家権割合:30%
- 土地相続税評価額:時価の80%
- 建物固定資産税評価額:時価の55%
以上の条件からすると、土地建物の相続税評価額は以下のようになります。
- 土地価格 = 路線価 ×(1-借地権割合×借家権割合) = 100百万円×80% × (1-70%×30%) = 63.2百万円
- 建物価格 = 固定資産税評価額 × (1-借家権割合) = 100百万円×55% × (1-30%) = 38.5百万円
- 土地建物価格 = 63.2百万円 + 38.5百万円 =107.7百万円
つまり、時価200百万円の収益物件は、相続税評価額では107.7百万円となっているのです。
例えば、現金107.7百万円と収益不動産107.7百万円で、相続財産が合計で215.4百万円の資産を、遺産分割協議により仲良く2人で現金と収益不動産で分けたとします。
実はその分け方は、現金107.7百万円と収益不動産200百万円で分割しているのと同じになり、不公平な分け方になっているのです。
時価評価の仕方
のちほど紹介するオススメの一括査定サイトでは、それぞれの不動産は時価で評価されます。
例えば収益物件であれば、収益還元法と言われる方法で時価が把握されます。
収益還元法では、年間の賃料総収入から年間費用を引いた純収益をNOI利回り(ネットオペレーティングインカム)で割ることで計算します。
収益還元法による時価把握は以下のように計算します。
土地建物価格 = (総収入 - 総費用) ÷ NOI利回り
ここで、以下の条件で収益物件の時価を計算します。
- 総収入:14百万円
- 総費用:4百万円 (固定資産税、修繕費、維持管理費用、建物保険料等)
- NOI利回り:5%
土地建物価格 = (総収入 - 総費用) ÷ NOI利回り = (14百万円 - 4百万円) ÷ 5% = 200百万円
まとめ
不動産業界のプロが不動産査定の方法とオススメを徹底解説しました。
亡くなられた被相続人は、相続人同士で揉めることを望んではいません。
一括査定サイトを上手く利用して、残された家族は仲良く、スムーズな遺産分割協議を進めましょう。