不動産で売却損があった場合に使える「損益通算及び繰越控除の特例」を解説

不動産で売却損があった場合に使える「損益通算及び繰越控除の特例」を解説

個人がマイホーム(居住用財産)を売却した場合、買った時よりも値段が上がっているケースはほとんどありません。

特に新築で購入した物件を売却する際は、大抵は売却損が発生します。

実はこの売却損、上手く利用すると税金が戻ってくる場合があるのです。

こんな悩みをスッキリ解消!

  • 不動産で売却損があった場合に確定申告は必要なのか知りたい
  • 繰越控除が行える条件とその計算を知りたい
譲渡益譲渡の種類特例
譲渡益が生じる場合 (所得税が発生)売却3,000万円の特別控除
No.3302 マイホームを売ったときの特例
売却所有期間10年超のマイホームを譲渡した場合の軽減税率の特例
No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
買換え特定のマイホームの買換え特例
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡損が生じる場合 (所得税が戻ってくる)売却マイホームに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合
買換えマイホームの買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
No.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき

今回の記事では「マイホームに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」についてお伝えします。

※当記事では、居住用財産とマイホームと同じ言葉として記載しています。

株式会社グロープロフィット 代表取締役 竹内英二

【執筆・監修】不動産鑑定士・宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター

株式会社グロープロフィット 代表取締役

竹内英二

大手ディベロッパーにて主に開発用地の仕入れ業務を長年経験してきたことから、土地活用や不動産投資、賃貸の分野に精通している。大阪大学卒業。不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である「株式会社グロープロフィット」を2015年に設立。

資格不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)・中小企業診断士

売却損が出た場合の税金特例と適用要件

初めに、この売却損が出た場合に税金が戻ってくる話ですが、今回は「個人が居住を売却したときことで譲渡損失が発生した人」に限定します。

不動産売却では、売却損益を計算するために課税譲渡所得を求める必要があります。

課税譲渡所得を「譲渡所得にかかる損失額」と言い換えることにします。

譲渡所得にかかる損失額は以下の計算式で求められるものになります。

譲渡所得にかかる損失額 = 譲渡収入 - 取得費 - 譲渡費用

※譲渡収入とは売却した不動産の売却額
※取得費とは売却した不動産の昔の購入費用(ただし、建物は減価償却後の価額)
※譲渡費用は売却に要した仲介手数料等

原則的には、個人が土地建物を譲渡して損失が発生したとしても、他の所得(給与所得・事業所得等)から控除したり、繰越したりなどの特例を受けることはできません。

あくまでも以下の説明する「特定のマイホーム(居住用財産)」を譲渡して損失が発生した場合のみ認められる「特例」となります。

特定と書かれているだけありますので、要件があります。

譲渡損失で税金特例が受けられる3つの要件

要件①:特定のマイホームであること

特定のマイホームとは以下の通りです。

  1. 自分が住んでいるマイホーム(譲渡資産)を譲渡すること。なお、以前に住んでいたマイホームの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。また、この譲渡には借地権の設定などの譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けが含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
  2. 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)で日本国内にあるものの譲渡であること。
  3. 災害によって滅失した家屋で当該家屋を引き続き所有していたとしたら、譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超える家屋の敷地の場合は、その敷地を災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(住まなくなった家屋が災害により滅失した場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に売ること
  4. 譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること。
  5. マイホームの譲渡価額が上記(4)の住宅ローンの残高を下回っていること。

※国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」より

特定のマイホームを定義で書くと難しいですが、要は今年の1月1日時点で購入してから6年目を迎えるマイホームは対象となります。

要件②:譲渡損失が出ていること

ここで譲渡損失ですが、譲渡損失の計算式は以下の通りとなります。

譲渡所得に係る損失額 = 譲渡収入 - 取得費(減価償却後) - 譲渡費用 < 0

例えば、新築でマンションを購入していれば、築6年以上経過している中古マンションを売却しようとすると、ほとんどの場合、購入金額よりも売却金額の方が大幅に金額は下がっています。

簡単に言うと、不動産の売却額が購入した時の金額を上回っていなければ、損失が出ていると考えれば大丈夫です。

「特定のマイホーム」を保有している人は、上述の式に当てはめると売却損が生じているため、まずは最初の要件をクリアしていると考えられます。

要件③:確定申告を行うこと

要件①と②を満たしていれば、自動的に特例が受けられるというわけではありません。

必ず確定申告をする必要があります。

確定申告方法は、後ほど紹介しますので、ここでの詳細は割愛します。

売却損により税金特例には2種類がある

この繰越控除の特例は、「買換え」と「売却のみ」の2種類で異なります。

  1. 買換えと前提した場合の特例:マイホームの買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
  2. 売却のみを前提とした場合の特例:特定マイホームの譲渡損失の繰越控除等

以下にそれぞれの要件を示します。

条件マイホームの買換えの場合の
譲渡損失の繰越控除
特定マイホームの
譲渡損失の繰越控除等
譲渡資産の所有期間等譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超のもの
譲渡資産の住宅借入金の有無特に制限なし譲渡契約締結日の前日において借入金残高があること
買換え要件床面積が50㎡以上等の一定の要件を満たす買換え資産を買換える。買換えは要件となっていない
買換え資産の
住宅借入金の有無
繰越控除を受けようとする年の12月31日において
買換え資産にかかる住宅借入金等
(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)
の金額を有していること
買換えは要件となっていない
所得要件合計所得金額が3,000万円以下であること
繰越控除等される金額損失の全額が、他の所得との通算及び3年間の繰越控除の対象となる。損失の金額のうち、「ローン残高―譲渡価額」の金額を限度として他の所得との通算及び3年間の繰越控除の対象となる。

居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の繰越控除については下記記事でさらに詳しく解説しています。

参考マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

それでは、要件を見たところでどれぐらい効果があるのか見ていきたいと思います。

譲渡損失の税金特例の計算例

サラリーマンであるAさんが平成7年にマンションを7,000万円で購入し、平成28年に4,000万円で売却した時の事例です。

Aさんの売却した住宅の減価償却は400万円、売却に要した仲介手数料等の譲渡費用は126万円でした。

またAさんの給与所得は

  • 平成28年が800万円(源泉徴収税額63万円)
  • 平成29年が850万円(源泉徴収税額72万円)
  • 平成30年が900万円※(源泉徴収税額79万円)

というモデルです。

※平成30年の所得控除額は250万円です。

Aさんの税金の戻り額は?

では、Aさんが不動産を売却した場合、どれくらい税金が戻ってくるが見てみましょう。

平成28年分の所得税額の計算

  1. 譲渡損失の計算
    4,000万円 ― (7,000万円 ― 400万円) ― 126万円 = ▲2,726万円
  2. 損益通算
    800万円 - 2,726万円 = ▲1,926万円
  3. 結果
    所得税額ゼロとなり、源泉徴収税額63万円が全額還付されます。

平成29年分の所得税額の計算

  1. 損益通算
    850万円 ― 1,296万円 = ▲446万円
  2. 結果
    所得税額ゼロとなり、源泉徴収税額72万円が全額還付されます。

平成30年の所得税額の計算

  1. 損益通算
    900万円 ― 446万円 = 454万円(課税譲渡所得)
  2. 所得税額の計算
    所得税額は下表に基づき以下のように計算されます。
    (454万円 ― 250万円) × 10% ― 9.75万円 = 10.65万円

    課税所得税率控除額
    195万円以下5%0円
    195万円超~330万円以下10%97,500円
    330万円超~695万円以下20%427,500円
    695万円超~900万円以下23%636,000円
    900万円超~1,800万円以下33%1,536,000円
    1,800万円超40%2,796,000円
  3. 復興特別所得税
    10.65万円 × 2.1% ≒ 約0.22万円
  4. 還付額の計算
    10.65万円 + 0.22万円 = 10.87万円
    79万円(平成30年の源泉徴収税額) - 10.87万円 = 68.13万円
  5. 結果
    68.13万円が還付されます。

特例を受けた人は3年間に繰り越して控除が受けられる

このように特定のマイホームを控除すると、譲渡損失は譲渡した年の翌年以後3年間(つまり最長4年間)に繰り越して控除ができるのです。

源泉徴収税額がちょうどボーナス1回分程度ですので、還付を受けると毎年ボーナスが1回増えるようなイメージとなります。

元々、この特例は中古不動産市場を活性化する目的で制度化。

つまり売却する人向けに「売る動機」を与えるために創設された特例です。

譲渡損失が出た場合、税金を払わなくて済むから確定申告をしなくて良いやと思っている人も居ますがむしろ逆。

この特例は、譲渡損失が出たからこそ確定申告を行い、税金が戻ってくるという制度なのです。

特例を受けるための確定申告時の必要書類

確定申告は譲渡年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います。

特例を受けるためには確定申告書に下記の書類を添付して税務署に提出する必要があります。

必要書類マイホームの買換えの場合の
譲渡損失の繰越控除
特定マイホームの
譲渡損失の繰越控除等
入手方法
除票住民票旧住所の市区町村役場より入手
譲渡資産の登記事項証明書法務局により入手
買換え資産の登記事項証明書-法務局により入手
新しい住民票-移転先の市区町村役場より入手
譲渡所得計算明細書国税庁のHPより入手
住宅借入金残高証明書
買換え資産のもの

譲渡資産のもの
借入先の銀行より入手

確定申告の詳細については下記記事をご確認ください。

参考不動産売却の確定申告の必要性と流れ4ステップ・必要書類一覧
参考不動産売却した時の確定申告/必要・不要・するべき人の判断基準

まとめ

不動産で売却損があった場合の繰越控除条件について見てきました。

この特例は場合によっては、2~3年間、ボーナス1回分が戻ってくるようなお得な特例となります。

要件に当てはまる人は多いと思われますので、検討してみましょう。

なお、売却益があった人も特例があります。

売却益があった時の特例については下記記事で詳しく解説しています。

参考3,000万円特別控除とは?相続空き家の売却は適用される?適用要件と必要書類

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石川 貴裕

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