不動産を売却する際、「精算」という聞き慣れない行為が行われます。精算の代表例が固定資産税です。
これから不動産を売却する人の中には
- 不動産売却をした際の固定資産税の考え方を知りたい
- どこまでを負担すればいいのか
と思っている方も多いことでしょう。
そこで、今回の記事では不動産売却の固定資産税の支払い方法や精算の仕方について、まとめました。
不動産売却の固定資産税の精算方法、諸費用、また不動産売却を成功させるコツと注意点などをご紹介いたします。
ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。徹底解説していきます。
不動産を売却した際、固定資産税は売却主が負担する?
固定資産税の納税義務者は「1月1日現在の所有者」
不動産を保有すると固定資産税と都市計画税(以下、固定資産税等と略)が発生します。
固定資産税等は、保有期間中は毎年発生するものです。納税義務者は毎年1月1日現在の所有者となります。
この1月1日を専門用語で賦課期日といいます。
固定資産税等は市町村税ですが、毎年1月1日に各市町村が航空写真を撮ることで建物の存在の有無を把握しています。
そのため、仮に未登記建物であっても、航空写真に映し出され、それが課税対象の建物と認識されれば、登記をしていなくても固定資産税等が発生します。
年の途中で売却した場合は「売主」が支払う
各市町村では、固定資産税台帳に賦課期日時点の土地と建物の所有者を記録します。
この台帳の更新はあくまでも賦課期日時点の年に1回となるため、仮に1月1日から12月31日の間に所有者が変わったとしても、自動的に変わってくれません。
固定資産税の納付は、通常、4月、7月、12月、翌年の2月の4回に分けて行われます。
売買の後も当年の納税通知書は、賦課期日時点の所有者に送付されることになるのです。
このように、固定資産税等の納税義務者は賦課期日時点の所有者となるため、1月1日から12月31日の間に不動産の売却が行われても、その年の納税義務者が期中で変更されることはありません。
仮に3月に不動産を売却したとしても、4月、7月、12月、翌年の2月に来る納税通知書は元の売主のところに届き、元の売主が納税しなければならないのです。
ただし、固定資産税の精算が行われる
そのため、売主としては、所有者ではないのに固定資産税等と支払わなければならないため、納得感がありません。
そのため、通常、売主と買主との間で固定資産税等を引渡時点で日割りとし、売買金額の中で調整を行うことになります。
下記は、実際に家を売却したときの契約書です。
固定資産税が精算に含まれているのが分かると思います。
これがいわゆる固定資産税等の精算と言われるものです。
以上、ここまで不動産を売却した際の売主による固定資産税負担について見てきました。
それでは次に気になる不動産売却の固定資産税の精算方法について見ていきましょう。
不動産売却の固定資産税の精算方法
固定資産税の精算の例
例えば、ある不動産の固定資産税等の額が年額10万円だったとします。
この不動産が売却されて7月1日に引き渡されたとします。
そうすると、本来は買主が7月1日以降の半年分の固定資産税額等である5万円を負担すべきという話になります。
しかしながら、当年の納税義務者は引き続き売主のため、買主から5万円をもらうことで、引渡以降の固定資産税等を買主に負担させたという形を取るのです。
つまり、この不動産の売買金額が2,000万円の場合、買主は追加で半年分の固定資産税等である5万円を売主に支払い、支払総額を2,005万円とするというのが固定資産税の精算をしたということになります。
精算は固定資産税等だけではない
実は不動産売買において、このような精算は、固定資産税等に限った話ではありません。
例えば収益物件であるオフィスビルなどを購入するともっと複雑な精算があります。
オフィスビルのような収益物件では、固定資産税の他、賃料や水道光熱費等のお金も期中に動いています。
例えば、賃料などは翌月分賃料を当月20日までに振込んでいるようなケースも多いため、月末に取引をすると、本来、買主がテナントからもらえる翌月分賃料も売主が既に受領していることになります。
また売買の当月までに使用していた電気代などの水道光熱費は電力会社から2か月後に請求が来ます。
どこからどこまでを売主or買主にするか決めておく
このように期中にお金が動いている物件を売買すると、どこからどこまでを売主と買主のものとするか、決める必要が出てくるのです。
これらの期中に動いているお金を売主と買主に適正に振り分けることを精算と呼んでいます。
しかしながら、精算はあくまでも売主と買主との間で行われる合意事項であり、ただの商習慣と言えます。
例えば、上述のオフィスビルのような収益物件では、固定資産税等の他、賃料、共益費、看板使用料、駐車場代、付加使用料など精算を要すべき費用項目が多岐に渡ります。
現実問題、面倒なので固定資産税以外は精算しないことが多い
そのため、売主と買主との間で、細かいところまで精算するのが面倒臭いという話になれば、一部の項目については精算するのを止めてしまうということも良くあります。
ただし、精算が面倒という話になっても、固定資産税くらいは最低でも精算しましょうというケースが多いです。
固定資産税等の精算であっても、別に当局が売買当事者にお願いしていることではありません。
賦課期日の所有者がきちんと納税してくれれば良いのであって、特に精算までして欲しいとは思っていないのです。
精算することは特に義務なわけではない
精算は義務ではありませんが、固定資産税等の場合は、精算をしないと売主が不利に働きます。
通常、不動産会社が仲介に入っていれば、精算に関して、きちんと売主と買主をリードしてくれます。
仮に不動産会社を入れない場合は、精算に漏れが無いよう、売主として注意を働かせましょう。
その他、売却時に戻ってくるお金については下記記事で詳しく解説しています。
以上、ここまで不動産売却の固定資産税の精算方法について見てきました。
それでは次に不動産売却にかかる諸費用について確認しましょう。
不動産会社に精算をお願いしても費用が発生することはない
不動産の売却には、仲介手数料や印紙代、司法書士手数料、抵当権抹消費用等の諸費用が発生します。
気になるのが精算の金額計算や精算書の作成などの精算行為ですが、不動産会社が当然に行ってくれるものであり、全て仲介手数料の中で作業をしてくれます。
精算行為で別途、費用が発生するようなことはありません。
また、固定資産税等の精算額が、税金計算上の費用として認められるかというと、そのようなことはありません。
固定資産税等の精算行為は売買当事者の合意で行われるものであり、法的な義務ではありません。
税務局も一切関知しない行為のため、誰も精算してくれとは頼んでいない行為と言えます。
つまり、不動産取引における精算とは、単なる売買金額の調整であって、値引きや値上げと同一の行為に過ぎないのです。
ここまで不動産売却にかかる諸費用について見てきました。
最後に不動産売却を成功させるコツと注意点について見ていきましょう。
月までに更地にすれば「固定資産税」の負担はなくなる
固定資産税に関して損をしないためのコツが1つあります。
それは建物を取り壊して売却をする時の話です。
固定資産税は賦課期日に建物が存在して、その所有者に課されます。
建物を取り壊して更地にして売る場合、例えば取壊し時点が1月末くらいだとしても、その年の固定資産税は1年分負担することになります。
更地にして売る場合は、取り壊しは12月中旬ぐらいまでに完了させておく
そのため取壊して売却をする場合、取壊しは最低でも12月の中旬くらいまでに完了させておくことがコツとなります。
12月中旬まで取壊しを行い、市町村の固定資産税担当者に建物が確実に滅失していることを確認してもらえれば、翌年以降の建物の固定資産税は無くなります。
取り壊して売却する場合は、取壊し時期にも注意をしておきましょう。
更地にするしないの判断基準は下記で詳しく解説しています。
家の取り壊しについては下記記事で詳しく解説しています。
まとめ
不動産売却の固定資産税の支払いと精算の仕方について見てきました。
実際、精算は不動産会社が当然にリードしてくれるものですが、知識として知っておくことも損ではありません。
売却の際には、頭の片隅に入れておくことをオススメします。