負動産とは不動産をマイナスの財産として捉えた当て字表現です。
負動産は相続とともに所有してしまうことが多いので、相続の仕組みや相続放棄について知っておくことが重要です。
今回の記事では「負動産」を所有した際の対処法について解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。
こんな悩みをスッキリ解消!
- どんな不動産が「負動産」になってしまうのか?
- 負動産を所有しているが、処分した方がいいのか知りたい
- 負動産を処分するときの注意点などがあれば知りたい
負動産とは
負動産とは、資産性のない不動産のことです。
自分で利用できず、なかなか売れず、人に貸すこともできず、固定資産税などの維持費だけが発生する土地や建物を総称して負動産と呼びます。
国土交通省による「平成30年度「土地問題に関する国民の意識調査」の概要について」によると、土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産とは思わない人の割合は以下のようになっています。
※出典:平成30年度「土地問題に関する国民の意識調査」の概要について
直近の2018年の調査では4割近くの人が、土地は株や現金よりも有利な資産とは思わないと回答しています。
近年は、東京一極集中が加速化しており、地方ほど負動産と感じている人が多いです。
同調査を都市ごとに振り分けると、以下のような結果となっています。
※出典:平成30年度「土地問題に関する国民の意識調査」の概要について
都市部の人は土地に利用価値があるため、負動産と思っている人は少ないです。
一方で、町村のような地方自治体の人は、負動産と認識している人が多くなっています。
負動産は、所有し続けることで維持費も発生するので、一刻も早く手放すことをオススメします。
次に負動産を相続したときの選択肢について紹介します。
負動産を相続したときの2つの選択肢
負動産を相続したときは、主に「売却」と「相続放棄」の2つの選択肢がありますが、筆者の意見では「売却」がオススメの方法です。
なぜ相続放棄より売却がオススメなのかは、手続きにかかる手間が大きく異なるからです。
この章では売却と相続放棄の詳細について解説します。
選択肢①売却
相続が発生すると、現金や不動産は全て共有状態となります。
不要な不動産を相続した場合には、共有状態のまま売却し、現金を分け合う形にするのが理想的な方法です。
相続した不動産を共有状態で売却する際の手順を図にすると以下の通りです。
共有名義の不動産売却の流れ
- 名義変更
- 代表者を決める
- 売却の同意を得る
- 価格査定
- 最低売却価格を決める
- 費用負担ルールを決める
- 媒介契約の締結
- 販売開始
- 委任状を用意
- 売買契約
- 引渡・残金決済
- それぞれが確定申告
選択肢②相続放棄
相続放棄とは、放棄をした人が最初から相続人でなかったものとみなす精度のこと
相続放棄をすると、相続人でなかったものとされるため、現金などの財産も相続できなくなります。
不要な不動産だけを相続放棄できませんので、ご注意ください。
相続放棄は、被相続人が莫大な借金を抱えているようなケースで利用されることを想定した制度です。
莫大な借金ではないですが、負動産をマイナスの資産とみなした場合、相続放棄は有効な手段の一つとなります。
相続放棄には、「相続の開始を知ったときから3カ月以内」という期限があります。
相続放棄の手続きは、他の相続人の同意を得ることもなく単独で行うことが可能で、全員の同意を得る必要もありません。
相続放棄は、家庭裁判所に申述書を提出します。
申述書は裁判所のホームページからダウンロードができます。
申述書の記載例は以下の通りです。
相続放棄には以下の書類が必要です。
相続放棄に必要な書類
書類 | 金額 |
---|---|
相続放棄の申述書に貼る収入印紙代 | 800円 |
被相続人の住民票除票 | 300円 |
被相続人の戸籍謄本 | 450円 |
申述人の戸籍謄本 | 450円 |
被相続人の除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 750円 |
住民票除票などの取得費用は市町村によって異なる場合がありますので、ホームページでご確認するようにしてください。
仮に「相続の開始を知ったときから3カ月以内」の相続放棄の期限を過ぎてしまい、それでも負動産を相続したくない場合には、遺産分割協議によって遺産分割の分け方を決めることになります。
遺産分割協議とは、相続人の意思で遺産の分割方法を決める話合いのこと
遺産分割を行う場合は、相続人の誰かが負動産を引き継ぐことになります。
不要な資産を押し付けあうような形となってしまうため、全員が不要と感じている資産であれば、共有のまま売却する方法がオススメです。
負動産を相続放棄する際の注意点
相続放棄の注意点は、遠い親戚が突如として負動産を相続してしまうことです。
全員が相続放棄をする場合には、相続放棄をした際に被害が及びそうな親族に事前に連絡し、同時に相続放棄をしてもらうことが必要です。
民法では、配偶者以外の親族に対して相続人となる順位を以下のように定めています。
順位 | 親族 |
---|---|
第1順位 | 子またはその代襲相続人(孫) |
第2順位 | 直系尊属(父母) |
第3順位 | 兄弟姉妹またはその代襲相続人(甥・姪) |
相続放棄は、配偶者や子供など、被相続人と身近な親族は自分が相続人であると認識しているため、すぐに対応できます。
しかし、遠い親戚は自分が相続人となる可能性を意識していないため、身近な親族の全員に相続放棄されてしまうと、突然相続人となってしまうことがあります。
相続放棄で注意しなければならないのが、第3順位である「兄弟姉妹またはその代襲相続人(甥・姪)」の人たちです。
相続放棄によって相続人が飛び火してしまう状況を図にすると、以下のようになります。
相続が発生すると、最初に第1順位である配偶者と子が相続人となります。
配偶者と子が相続放棄をすると、相続人は第2順位の直系尊属に移転します。
直系尊属(ちょっけいそんぞく)とは、父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など、直接の祖先の系列に当たる人のこと
親や祖父母は、被相続人よりも先に死亡していることが多いため、第2順位の相続人に飛び火するケースは珍しいです。
第2順位の相続人がいないと、第3順位である「兄弟姉妹またはその代襲相続人(甥・姪)」に飛び火します。
被相続人の兄弟が相続放棄をした場合、その兄弟は最初から相続人でなかったことになるため、代襲相続されることはありません。
代襲相続とは、相続人がすでに死亡している場合、その子どもが相続人となること
一方で、被相続人の兄弟が死亡している場合には、代襲相続が生じてしまいます。
上図の例だと、姉の子、つまり被相続人の甥が相続人となってしまうのです。
甥は突然、負動産を背負わされることになるため、大変迷惑を被ることになります。
そのため、相続放棄をするのであれば、相続権が飛び火しそうな人を全て洗い出し、全員で相続放棄をすることが必要です。
なお、相続が発生してから3カ月以内に遺品整理などで遺品を処分してしまうと、処分をした人は単純承認したことになります。
単純承認とは、遺産に関するすべての権利と義務を無条件で受け継ぐこと
何も知らずに遺産整理をやってしまうと、単純承認という形で所有権が自分に移ってしまい、後から相続放棄できないので、ご注意ください。
相続放棄よりも売却がオススメ
前章で解説しましたが、相続放棄は複雑でなかなか大変です。
相続人が飛び火したり、単純承認できないことがあるのでオススメの方法ではありません。
筆者としては、負動産を処分するには、売却を中心に考えることをオススメします。
この章では負動産を売却するため3つのステップについて解説します。
- 分割方針を決める
- 名義変更を行う
- 売却方法を選択する
STEP1.分割方針を決める
売却にあたっては、最初に分割方針を決めます。
全員が負動産と認識している場合には、分割をせずに共有のまま全員で売却します。
共有の売却はしたくないということであれば、遺産分割協議によって誰かにいったん相続させます。
STEP2.名義変更を行う
分割方針によって所有者が決まれば、名義変更を行います。
相続した共有物件を売却するには、被相続人名義から相続人への名義変更が必要です。
相続による名義変更は、法律上の義務はありませんが、売却したい方は必要です。
また、共有物件を売却するには共有者全員の同意が必要です。
買主からすると、名義変更されていない不動産は、共有者が一体誰か分からない状況です。
売買契約をしても、後から反対する他の共有者が現れると不動産を購入することができなくなります。
そのため、買主にとっては所有者が明らかでない共有物件は購入のリスクが高くなります。
そのような物件を積極的に買いたい人は少ないので、売却するためには必ず名義変更は必要となるのです。
名義変更手続きには、以下の書類が必要です。
名義変更に必要な書類
- 登記申請書(法務局のホームページからダウンロード)
- 相続登記の対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 物件を取得する相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
- 相続関係説明図(任意)
(遺産分割協議または遺言によって移転登記を行う場合)
・遺産分割協議書もしくは遺言証書
遺産分割協議書もしくは遺言証書の原本は手続き後に返却されます。
相続関係説明図は任意ですが、相続関係説明図を用意すると戸籍謄本を返してもらえます。
STEP3.売却方法を選択する
名義変更完了したら次に売却方法を選択します。
不動産の売却方法には、仲介と買取の2種類があります。
仲介
仲介とは、不動産会社に買主を探してもらう売却方法のこと
「仲介」は最終消費者に売る方法なので、売却価格は高くなりやすいですが、仲介会社によって査定額が大きく異なることがあります。
共有者全員の売却の同意を得るためにも、まず、いくらで売れるのかを知ることが必要です。
「仲介」と「買取」の2種類のうち、最終消費者に売る「仲介」の方が、売却価格は高くなります。
しかし、仲介会社によって査定額が大きく異なることがあるので注意が必要です。その為、負動産をより高い価格で売却する為には「複数社の査定依頼」をすることが重要です
そこで不動産一括査定サイトの活用を強くオススメします。
不動産一括査定とはインターネット上であなたが売りたいと思っている不動産情報・個人情報を入力すると、複数の不動産会社が自動的に見つかり一度に査定依頼できるサービス
複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことができ、だいたいの相場観を掴むことができます。一括査定の流れとしては下記の通り。
不動産一括査定のオススメは「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」
不動産一括査定サイトは似たようなサイトが多くかなり乱立しています。
その中でも信頼性や実績から下記4つをオススメしています。
上記を見ると超大手だけに依頼ができる「すまいValue」だけで良いように思えます。
ただし、不動産売却を成功させるなら大手だけではダメ。不動産会社には得意・不得意があるためです。
だから下記のように複数の不動産一括査定サイトを併用して大手・中堅・中小にも依頼できるようにするのが成功の秘訣です。
売らなくてもOK!簡易的な机上査定&メール連絡も可能
紹介したサイトは、簡易的な机上査定も可能です。
また、イエウール以外は備考欄を設けており「メールでの査定額を送付してください」の旨を記載することで、不動産会社に伝わります。
どの不動産一括査定が「机上査定」「メール要望」が可能かの早見表は下記の通りです。
不動産一括査定サイト名 | 机上査定が対応 | メール要望 |
---|---|---|
すまいValue | ○ | ○ |
SUUMO | ○ | ○ |
HOME4U | ○ | ○ |
イエウール | × | × |
SRE不動産(※旧ソニー不動産) | × | ○ |
不動産一括査定サイトについては下記記事でさらに詳しく解説しています。
まずはどこか1-2社の査定依頼でOKという方は、下記の大手2社がオススメです。
評判がいい不動産仲介会社のおすすめランキングについては下記記事をご確認ください。
次に買取について紹介します。
買取
買取とは、転売を目的とした不動産会社に売る売却方法のこと
「買取」は転売前提の価格となるため、「仲介」に比べて売却価格は安くなりやすいです。
通常、売却価格の高さを考えれば仲介となりますが、負動産のような物件や土地は売れにくいこともあるので、買取も検討する必要があります。
不動産買取金額は仲介の時と比べて70~80%が相場になりますが、すぐに手放せるというメリットがあるため、負動産の売却に適しています。
買取も先ほど紹介した「すまいValue」「SUUMO」「HOME4U」を使えば、買取に強い業者が一括で見つかります。
これらのサイトを使えば買取業者同士に買取価格を競争させることができるため、少しでもいい条件で負動産を売却できます。
売却の場合の注意点・コツ
代表者を決めると売却がスムーズになる
共有物件の売却では不動産会社や買主と直接やり取りする代表者を決めるとスムーズに進みます。
さらに共有物件の売却は、全員の同意が必要ですので、査定前に全員の同意を得ておきます。
全員の同意を得たら、「いくら以上なら売る」と最低売却価格を決めておきます。
共有物件の売却の場合、欲をかかずに最低売却価格を低めに設定することが大事です。
なぜなら低い価格でしか売れない場合や、大幅な値引き交渉が行われた場合に備える必要があるからです。
また不動産売却には仲介手数料や一時的な立て替え払いも発生しますので、費用負担ルールを事前に決めておきましょう。
売買契約と確定申告について
共有物件の売却の場合、売買契約には共有者全員が出席することが必要です。
共有者の誰かが出席できない場合には、委任状を用意して共有者の誰かに代理を委任してください。
売却後、税金が生じる場合には売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をすることが必要です。
不動産売却後に確定申告すべき人の判断基準や確定申告の流れは下記記事で詳しく紹介しています。
まとめ
不動産を負動産だと思っている人の割合は、年々増加傾向にあり、その割合は地方に行くほど高くなっています。
負動産を処分する方法として、手間の多い相続放棄より、売却(仲介・買取)がオススメです。
「不動産一括査定サイト」を上手く活用して、大きなトラブルになる前に負動産を売却しましょう。